Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

都知事選から学ぶ

2007-04-10 22:52:24 | Weblog
都内に住んでいない「都民」としては,東京で何が起きているか,肌感覚としてはわからない(・・・でも東京にいても同じかも,おそらく)。今回の都知事選は現職・石原氏の大勝で,特にサプライズはない。だが,それをめぐるコメントで唸ったのが「かんべえの不規則発言」4/7~8だ。いわく

「有権者というものは、自分の選挙区の候補者が信念の持ち主であることを知っていれば、信念の中身についてはさほど関心を持たないものだ」

小泉前首相の人気もまさにそうかも・・・。それはともかく,かんべえ氏とは政治的立場が異なると思われる『酔醒漫録』もまた,本質的に同じことをいっているように思われる。そのなかで紹介されている都はるみさんのブログでは,意外にも「政治的」コメントがちらほらあってサプライズだった。

第二の吉田秀雄は誰か

2007-04-10 19:45:44 | Weblog
藤原治『広告会社は変われるか』。電通総研の社長と電通本社の常務執行役員まで勤めた著者が,日本の大手広告会社の今後を分析している。書評などで議論を呼んでいるのが第6章。ここで著者は,現在の日本の広告会社は欧米のような広告主側の代理人ではないが,媒体の代理人でもないという。

なぜなら,広告主が倒産した場合,広告主または媒体の代理人ならそのリスクを負担する必要はないが,日本の広告会社は負担する。つまり,それが代理業ではなく自己商だからそうするのであり,日本の広告会社は代理店というより一種の商社なのだ,というのが藤原氏の主張だ。だから,外資系広告主が原価を公開させよなどというのはおかしいと。

この部分が居直りのように受け取られて,いくつかの書評で非難されているわけだが,最後の章で,著者は日本の大手広告会社がグローバル化を目指す限り,こうしたビジネスモデルは維持できないと指摘している。つまり,少なくともグローバル化する広告主を相手にする限り,欧米流の広告主の代理人たる方向に舵を切らざるを得ないことが示唆されている。

著者の立場を考えると,かなり大胆な主張である。彼はこの本を出版するために,電通を役員定年以前に辞職したという。では,具体的にどのようなビジネスモデルに向かうのか。そのとき,特に電通が得意としてきた媒体やイベントの「自己商」はどうなるのか。それはそれで「商社部門」として独立に持つということか。しかし,そういう形で従来どおりの強みを生かせるのか・・・いろいろな疑問が頭をよぎる。

本書は「出でよ,第二の吉田秀雄!」という叫びで結ばれている。事前に先が読めない大きな飛躍は,英雄を必要とする,ということだろう。その英雄は誰だろう・・・。