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ひょっこり猫が我が道を行く!

カオスなオリジナル小説が増殖中。
雪ウサギが活躍しつつある、ファンタジー色は濃い目。亀スピードで更新中です。

003 ミカエル陣営

2012年07月22日 14時51分03秒 | 小説作業編集用カテゴリ

 怪鳥(ガルウイング)を撃退した後、気絶して回復したエレン姉さまと私達七人は、鬱蒼と茂るシノンの森をやっとの事で抜ける事が出来た。歩き続けると川に出くわし、皆で軽く手に付いた泥を落としていたら、夕刻が迫って来たようだ。

 広大な平原を歩く地平線に、オレンジ色の夕陽が沈み込む――― 
 
 山や緑の草原を、温かい色合いに染め上げる夕焼けが恋しくて、目いっぱい瞳に写そうとして身動きする事を止めた。当たり前の自然の摂理に今更ながら感動したのは、元居た世界と、ガウラの居るファインシャートの世界を思い出したからだろうか?

「夕焼け・・・綺麗だね」

“ホームシック”という言葉を思い出して、一匹で勝手に自己完結させる。この言葉を使うには、まだ早すぎるから。 

「? ああ、綺麗だが・・・どうした、夕焼けは何処でもあるだろ?」
「うん・・・まあ、そうなんだけど」
 
 寂しさが心を占める反面、これって一種の役得じゃ無いだろうかとも思う。まさかロマサガ3で夕陽が拝めるとは思わなかった・・・ゲーム画面上では、特定のイベント以外は闇夜やオーロラは見れない、奇想天外なRPGだったからだ。

 先程の戦闘で、最初よりかは幾分話しやすくなったハリードが私の隣に立つ。二人の連携攻撃で、彼の頭を踏ん付けたから泥が付いたままだ。私の体も手足以外は泥だらけだし、まあ箔が付くと言う事で良しとする。

「トォッ!」
「こらっ、お前・・・! 肩と背中に爪が食い込んでるぞ。ユリアン、どうにかしろっ」
「良いんじゃないか? ブフッ・・・サマ・・・ブググッ・・・にはなってる、よ?」
「ハリード、あんた面白いよっ! 良いねぇ、保父さんみたい・・・アハハハッ!!」
「可愛いねぇ。お姉ちゃん、私もリオちゃん欲しいよぉ・・・」
「私も、欲しくなって来ました・・・リオちゃん、私の所にも来て欲しいです」
「サラ、モニカ姫。リオは物じゃ無いんだからよしなさい」
「・・・お前ら、俺はどうでも良いのか」

 手軽な風呂敷で私の背中に棍棒を固定して貰い、力無く抵抗を諦めたハリードの背中によじ登ると、「チャンッ」と一声出す。乳母車があれば、気分は子連れ狼の大五郎。発した言葉の意味を伝え、皆が大爆笑。腹を抱えて皆が笑い出した。

 素晴らしく勇ましい私の勇士を、彼ら六人の目に焼き付ける事にも成功し、寂しさを紛らわせた。

****

 完全に陽が沈む前に私を含めた七人は、やっとの事でミカエルさんの居る野営まで辿り着く。
 竹に似た素材の木を使った、即席の囲い壁で天幕の周りを守る様にと打ち据えられてる。
 暗くなる前に薪を火にくべて準備に急く者、飯盒(はんごう)で白飯を炊く者など、複数の天幕が張られた外側で兵士達が忙しそうに動き回っていた。

 入口の見張りをしている者がこちらに気づき、警戒心を強くさせる。目付きを鋭くさせた兵士が、腰に差した剣の柄を握り問い質して来た。

「何だ、お前達は。ここが何処だか分かっているのか!」 
「ええ、分かっています。魔物の討伐と称して、ミカエルお兄様が此処に居ると言う事も・・・」

 毅然とした態度で、頭に被せた部分のローブを捲るモニカ姫。
 見事なブロンドの髪を靡かせ、凛とした眼差しと、薔薇色の頬に桃色の唇は、一度見れば脳裏から薄れる事は無い程の美貌の持ち主へと変貌する。

「モニカ姫!」
「これはとんだ御無礼を、お許しください!!」

 その容姿に見覚えがある二人の兵士が、慌てふためき頭を低くして道を開ける。
 ミカエルさんの居場所を聞いて、私達は奥へと進みだす。
 複数似たような天幕を通り過ぎると、一際豪華な刺繍が施された紫色の天幕へと辿り着いた。

「お兄様!!」
「モニカ、お前が如何してここに?」
 
 ロアーヌ侯国を統治する若き侯爵、ミカエル。
 肩に掛かる長さの金髪を自然に下ろし、光沢の良い、それでいて頑強な鎧を纏う容姿からは力強さを感じる。
 洗練された立ち振る舞いは育ちの良さを思い起こさせ、
 滲み出る美しさは、決してモニカ姫に引けを取らない。
 意志の強そうな眼差しは、多くの民衆を統治するに相応しい王者そのものだ。 

 自らの兄の姿を確認したモニカ姫は、走り寄り言い出す。

「お兄様、ゴドウィン男爵が反乱を企てた様です。――お兄様の遠征時を狙い、宮殿内に攻め入って来ました!」
「何だと? そうか、お前はそれを知らせに来てくれたのだな・・・ところで後ろの者達は?」

 後ろに佇む七人の姿を留めると、今まで護衛をして此処まで連れて来てくれた事を告げるモニカ姫。するとミカエルさんは暫く考えた後、私達に提案してきた。

「お前達には悪いが、もう一仕事して貰おう。北方に位置する、レオニード伯爵の居城までモニカを護衛して貰いたい」
「レオニード・・・! あの吸血鬼の住む城にですか!?」 
ユリアンがいち早く反応する。
「下手な人間よりは信頼できる。しかし、吸血鬼にされるのも困るのでな。どうだ、やってくれるか?」
「報酬が貰えれば、俺は良いぜ」

 皆の色良い返事が聴こえる中、ハリードのがめつい声が響く。
 この件が終われば貰えるというミカエルさんからの確証を得て、ここで一夜を明かす事に。

 ****

「ウマ――ッ!」
「お前、猫なのに人間と同じ物食べて平気なのか?」
「私を舐めんなよっ! 猫だけど何でも食べれるよっ」

 星が綺麗な夜空の下、私達七人は兵士さん達が作った白飯を頂いた。おかずとして食肉用の肉や魚も出されたけど、苦労して倒した怪鳥(ガルウイング)の腿と背中部分をハリードが出して来たので皆で焼いて食べる事に。
 
 羽を毟り取り、焼きやすいように木で串刺しにして火で炙(あぶ)る。
 ホントは丸焼きも考えていたらしいが、巨大すぎて持ち運ぶのが無理らしいとのこと。さすが主銭奴(しゅせんど)!タダで使えるモノは何でも使うってか。

「私が食べてたご飯って刺身か、ミルクか汁物かけたネコまんまばっかりなんだよ! たまには違うのだって食べたい」 

 二足歩行が可能となったのだ。体力も増えていつもの倍は使ったんだろう。だったら食欲も半端無い。ミルクや魚だけじゃ物足りないのも頷ける。その変わり、体格が小さいので食べる量は皆よりも少ないけどね! 
 
「猫が喋るのも初めて見たが、私達と同じ物を違和感無く食べる猫を見たのも初めてだ」

 天幕の外でシートを敷いて食事をしていたら、モニカ姫のお兄さん、ミカエルさんがやって来た。私の横に腰を下ろして胡坐(あぐら)を掻いている。
 怪鳥(ガルウイング)の肉を手に持ち、美味しく食べてる私を見て頭を撫でてくれた。

「リオと言ったな。何処から来たのか聞いても良いか」
「それは、その・・・」

 ゴニョゴニョと言葉を濁す。多分言っても理解出来ないんじゃないかな・・・
 こことは違う世界から、女神(エリーちゃん)に強制的に連れて来られたなんて。しかもファインシャートやデルモントまではしごしてるし。

「リオはシノンの森よりも遠く離れた所から来たと言ってました。
 故郷から離れて寂しい気持ちもあると思うんです。ミカエル様、話せる時が来るまで許してやって貰えませんか」

 紳士トーマスがフォローしてくれる。もっと言ってやってちょうだいッ!

「そうです、お兄様。リオちゃんに疑惑の目を向けないで下さい。彼女に良い印象持ってもらって、王宮に連れて帰ろうと画策してますのに!」
「え、そうだったの、モニカ姫?」
「えええぇ!! リオちゃんは私が連れてくんだもん! モニカ姫、ずるいよっ」

 ・・・え、私の知らない所で何かを企んでる人達がいるよ。紳士トーマスと、お人よしユリアンが普通の発言で済んでるのに、モニカ姫とサラちゃんが睨み合い、プチバトルに突入しそうだ。

「そうだねぇ。リオが居れば毎日が楽しそうだし・・・」
「!!」 

 麗しのエレン姉さまの発言を聴き、彼女の元へと擦り寄ろうとした。
 エレン姉様の隣に居た妹サラが、両手を広げて待ってましたと言わんばかりに待機している。すると突然首根っこを掴まれて、誰かの腕の中へ落ち着いた。
 
「こいつは俺のパートナーだ。勝手に連れてくな」
「ハッ、ハリード!」 
 なぁ、リオー?と体中を撫でくり回される。その行動に皆が驚いていると、何故か酒臭い。
 酔っ払うほど酒飲んでる!!

「ハリード、お酒くさい・・・」
「白い大福・・・ムニャ、お宝お宝・・・」
 
 抱き込んだまま寝込みやがった!!
 残された皆は助けてくれそうも無い。頭やら耳やらに、たまに噛んで来て痛たたた・・・・っ!

 その夜、私はハリードに一晩中抱き枕として扱われたのだった。



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