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ひょっこり猫が我が道を行く!

カオスなオリジナル小説が増殖中。
雪ウサギが活躍しつつある、ファンタジー色は濃い目。亀スピードで更新中です。

002 リオの初陣

2012年07月22日 14時48分12秒 | 小説作業編集用カテゴリ

 シノンの森をもう少しで抜けそうな所で、巨大な鳥、ガルウイングが襲いかかって来た。紫色の毛羽による突風と、空中に浮かび移動する事により、中々攻撃を当てる事が出来ない。
 先頭に立つハリードのお陰で、嘴(くちばし)と引っ掻き爪による直接攻撃を防いで貰ってはいるが、中々反撃に転じる事が出来ないまま時間だけが過ぎる。

「・・・っサラ、お前の影ぬいで奴の動きを封じる事は出来ないのか?!」
 
 ハリードが攻撃を防ぎつつ、後方支援している仲間に問い掛ける。

「無理よ、もう力が残って無い・・・!」  
 
 長弓を持ち、牽制する為に打ち込む事しか出来ない彼女の息使いが荒い。
 確かロマサガはWP(技ポイント)、JP(術ポイント)というパラメータが存在していたはず。使えないと言う事はWPが尽きたと言う事だ。

「エレン、お前は斧でトマホークが出せるか?」
「やってみるよ!」 

 エレン姉さまの渾身の力を込めた手斧が、ガルウイング目掛けて投げつけられる。斧によるブーメラン効果で、自らの手に返って来て反応を待つ。羽根に当たったは良いが致命傷にはならず、逆に怒らせたようだ。

「ギャアギャアッ!」 
「ぐっ! エレン、避けろ!!」
「なっ・・・? きゃあっ!」
「エレン!」 
「お姉ちゃん!」

 ハリードの斬撃を強健な翼で受け流し、狙いをエレン姉さまに定めたガルウイングが攻撃して来た。空高く舞い上がった高度からの体当たりは、人間にはひとたまりも無い―――って!?

「エレン姉さま!」

 本当の“死”では無いにしろ、気絶して倒れる姿を見て私の頭は沸騰する。

 美人な彼女を
 麗しい姉さまを
 一番好きなキャラをよくも!

「リオちゃん、駄目よ!」

 モニカ姫から離れ、彼らの持ち寄った道具袋の中を素早く漁る。途中ゴブリンから引ったくった棍棒をしっかりと持ち、私は二本足で地に奮い立つ。

 肉球が何だ。猫、舐めんじゃねーぞっ!

 決して速いとは言えない速度で、近付く私を目に留めた奴は自慢の翼で振り払う。
 豪速を纏った疾風と振り払いのせいで、体重の軽すぎる私は近くまで行けそうも無い。だったら――!!

「ハリード、私を背負って近くまで寄れる?」
 
 前衛で攻撃を防いでいた彼にお願いする。近くまで寄って、尚且つ無事に済めるのはこの中では彼しかいない!

「出来なくは無いが、お前がその棍棒で打ち込むのか?」
 
 うん!と返事する。女に、猫に二言は無いっ!
 ハリードの顔が一瞬呆気に取られて、暫く逡巡した後表情を引き締め直す。私の真剣な顔を見て、どうやら検討してくれると見た。

「何か策でもあるのか。・・・よし、分かった。サラとトーマスはエレンを守りつつ防御、これ以上攻撃を受けさせるな。ユリアンは一人で辛いかもしれんが奴の攻撃を俺達から逸らしてくれ」
「分かった!」
「俺も、出来るだけ援護するよ」
 
 ユリアンとトーマスの心強い返答を貰い、作戦は動く。
 
 ユリアンの巧みな陽動により、今度は奴の懐にまで近付くのが可能となった。今の私は、ハリードの広い背中におぶさっている。
 棍棒を手に持つ私は一見間抜けな光景とも取れるが、危険を冒してまで皆が協力してくれるんだ。失敗なんか出来ないし、したくも無い。

「行くぞ、リオ!」
「いつでもオッケ!!」 

 ハリードと猫による二人の連携攻撃を見よ!

 かぎ爪による攻撃をハリードの曲刀で弾き、怪鳥(ガルウイング)に少しづつ近付いて行く。ユリアンの誘導により、奴の意識が後衛の彼に半分は行っている。

 奴の攻撃範囲内に入った私達に気付いた怪鳥は、近付けさせない様にと私達に慌てて攻撃を開始した。奴の会心の一撃による嘴(くちばし)攻撃をハリードに防いで貰い、私はチャンスを伺う。

「・・・剣だけが取り柄だと思うな・・・よっ!!」

 曲刀で防ぎつつ睨みあいが続く中、彼が右足で怪鳥の腹を蹴り上げる。突然の痛みと驚きで、鳴き声を上げる怪鳥に隙が出来た。

「ギャアアアッ!!?」 
「今だ、行け! リオ―――!!!」

 敵は怪鳥、ガルウイング!

 両手から外れない様に、しっかりと両の手で握りしめた棍棒を奴の頭にお見舞いする為に。
 ハリードの頭に、泥が付いた毛むくじゃらの白い足で踏ん付けて、思い切り跳び上がった。
 喰らえ、リオ流 “脳天割り”!

 ポコォォォン!!

 小気味いい音が辺りに響き渡る。
 ・・・なんて間抜けな音なんだろう。猫の腕力ではこれが精一杯なのか。

「ギャ、ギャアアア???」

 振り下ろした“脳天割り”を喰らったガルウイングは、目を回して地に倒れ込む。
 確かこの殴打は、眠りを誘発したはず。案の定、一時的に奴は眠りについた。

「皆、今の内に宜しく!」
「良くやった、リオ!!」

 ハリードとユリアンによる連続攻撃を叩き込み、怪鳥は遂に地に伏せる。
 戦いにより騒がしかった深い木々に覆われた森は、いつもの静寂さが戻った様だ。 

「はぁ、助かったぁ。この森から出れないかと思ったよ」 
「やれやれだな。しかしシノンの森にあんな鳥は今まで見なかったんだが」

 博識のトーマスが頭を捻っている。
 眼鏡をクイッと押し上げて今までの記憶を掘り起こしているが、答えがどうしても出そうにないみたいだ。この時点で少しばかり知識を持っている人は、ここで答えを出すつもりは無いらしい。
 勿論私も答えを知っているが、ここで言って疑われても困る。
 エレン姉さまの回復をしてから私達七人は、ミカエルさんの居るロアーヌ平原へと歩き出した。


――――――――――

 リオの習得技 脳天割り 
 眠りの耐性の無い敵に当てると高確率で眠らせる事が出来る。力の強い敵、又はジェル系モンスターには棍棒による攻撃が効かない為、使い所を選ぶ。



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