QAZのつれづれ日記

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電力の自由化って言うけれど

2016年02月26日 | 時事

2016年は電力自由化元年と言われます。
本年4月より一般家庭向けの電力供給が自由化され電力会社を自由に選ぶことができるようになります。

とまあここまでは良いのですがこの話しを耳にして真っ先に不思議に思ったことがあります。
テレビで電力の自由化のことが話題になっても誰も説明してくれません。
どうしてみんな不思議に思わないのかそれが不思議なのですが。

それは・・・
電話の場合電話局から自宅までの電話線(加入者線)は一対一でつながっています。
だからこそ自分がしゃべった分の電話料金が他人と区別して計算できます。
電気の場合は電力線(引込み線)は一対一ではなく各家共通につながっていますが電気メーター(電力量計)が各家ごと個別に設置してありますから使った電気の量も各家ごと計量できます。

そこへもってきて電気を従来の電力会社以外からも買えるというわけです。
例えば我が家が契約しているケーブルTV会社のJ:COMも電力サービスの提供を始めるようです。
もし我が家が電気を東電ではなくJ:COMから買うことにした場合新たにJ:COMから我が家に電線を引くわけではなく従来の電線をそのまま使います。
電気に色がついているわけでなし、我が家は東電ではなくJ:COMからの電気をどうやって取り込むのか、J:COMは我が家が東電ではなくJ:COMの電気を使ったことをどうやって知るのか当初とても不思議に思ったものです。

手品みたいな話しですがこれはあとですぐ解明しました。
我が家が電気をX[kWh]使ったならJ:COMはその分X[kWh]の電気を電圧、周波数、位相を合わせて東電の送電線に重畳供給(託送)すれば良いだけのことです。
直接J:COMの電気が我が家に届く、届かないに関係なく全体としてJ:COMの電気がX[kWh]だけ消費されれば良いわけです。
この仕組みは銀行の振込送金のシステムに似ているようにも思えます。
銀行の端末から振込んだ紙幣そのものが直接振込先相手に届くわけではありませんが、相手はちゃんとその額を受け取ることができます。

電気メーターもPLC(電力線搬送通信)、有線、特定小電力無線等の通信機能を備えたスマートメーターに置き換えられ検針員が要らなくなるようです。

余談ですがずい分昔仕事で出張中にたまたま水力発電所が電力会社に電気を供給(売電)する瞬間に立ち会ったことがあります。
壁に掲げた壁掛け時計のような位相計の針が丁度12時の位置、すなわち位相が0になって同期が取れた瞬間「ドン」という地響きを感じました。

さて本題です。
今でも日本の電気料金は世界一高いと言われます。
電力が自由化されると本当に電気代が安くなるでしょうか。

東電の電気販売量のうち家庭向けは4割ですがその利益は家庭向けから9割を上げています。
企業には安く売っておいて、文句を言わずおとなしい家庭向け顧客の電気代で儲けている構図です。
今後原発事故の処理、賠償などに莫大なお金がかかりますし原発の縮小で火力発電が増えて燃料費は増大し、総合的に見て電気料金は上がる要因しかありません。

新電力会社は既存電力会社の送配電線を借用する対価として電力会社に支払う託送料金が高く、初めから競争の土俵に差をつけられています。
新電力会社が発電部門、送配電部門、小売部門の全てを押さえている既存電力会社と対等に競争するのは容易ではありません。
発電部門に大規模な新規参入がなかったら既存電力会社による実態的な地域独占は続いてゆくことでしょう。

電力自由化導入当初は新電力会社は新規の顧客を獲得しようと抱き合わせ商法などを駆使して競争が激化し料金が少しばかり下がることはあっても長期にわたって電気料金が下がる保証はどこにもありません。
国の規制がはずれて、自由化は「値上げするのも自由」ということですから値下げする義務などありません。

考えてみれば電気は不思議な商売です。
企業自ら節電を訴えます。
たくさん買ってくれるなというわけです。
また電気はたくさん使うほどkWh当たりの単価は上がります。
普通の商売でこんなことは絶対あり得ません。
電気は必需品で黙っていても皆が使うからこそできる殿さま商売です。

アメリカは2000年代に今の日本のように「自由化すれば安くなる」といって自由化しましたがその結果電気料金は2倍になりました。
イギリスやドイツでも2倍以上に上がりました。
日本が同じ轍を踏まないとどうして言えるでしょうか。



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