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ふたり:結婚に思い託す、出会いたい男女/栃木

2009年01月12日 | スクラップ

■止まらぬ晩婚化や若者流出

 晩婚化や若者の都会流出の流れが止まらない。県内でもそのあおりを受けて、結婚したいのに出会いがない、との嘆きが聞かれる。子育ての手間や経済的な負担、さまざまなしがらみを考えて、結婚をためらい、一人の方が気楽と感じる人が増えていることも、出会いを少なくさせているかもしれない。しかしそれらの壁を乗り越えて、現実にたくさんの夫婦が誕生している。男と女はなぜ互いに出会いを求め、二人でいたいと考えるのか。夫婦の形は多様だ。少子化で社会が袋小路に落ち込むことも懸念される中で、カップルが「結婚」に託す思いを、改めて探った。【松谷譲二、戸上文恵、中村藍】

 


■凝った演出、客楽しませる ゲストハウスでカップル挙式

 昨年12月7日、小山市のゲストハウス「クイーンズヒル迎賓館ストロベリーキャッスル」。青い屋根の塔(高さ35メートル)がそびえるチャペルで、針谷昌和さん(35)と富美恵さん(32)の挙式が行われた。

 巨大なステンドグラスに光が注ぎ、室内は幻想的な雰囲気。挙式後、チャペルから出てきた二人をフラワーシャワーが祝福。雲ひとつない青空の下、白や赤のバラの花びらが鮮やかに舞った。

 披露宴は、趣向を凝らした演出のオンパレード。式の中盤、二人が別々のテラスから登場すると、最大3メートルにもなる火柱「イフリート」がボッ、ボッと小刻みに燃え上がった。昌和さんは炎の前を通って富美恵さんに歩み寄り、二人向き合ったところで火柱が勢いよく噴出。驚いてのけぞる客もいた。

 そして、最大のイベント「キャンドルリレー」が始まった。二人はテーブルを回り、一人一人メッセージを記したロウソクに点灯。火は出席者の手でロウソクからロウソクに移され、小さな明かりが約90人の手のひらで揺らめき、荘厳な雰囲気に包まれた。

 クリスタルのロウソク立てに最後の火がともされると音楽が高まり、拍手と歓声で宴は最高潮に。二人の幸せを祈り、火が一斉に吹き消された。

 一転し、今度はトトロの曲に合わせ、二人は会場に設置された階段から再登場。手にはプラスチックの空気銃(長さ約40センチ)。子どもたちが階下に集まってくる。ポンッ。軽快な音とともに落下傘のついたクマのぬいぐるみが飛び出し、子供たちは「わぁー」と歓声を上げた。

 余韻に浸る富美恵さん。「式のテーマは『炎』。いろいろな演出のもてなしで楽しんでもらえました」



 ◆  ◆  ◆

 同13日、宇都宮市のゲストハウス「宇都宮モノリス」では、塩澤誠浩(のぶひろ)さん(26)と佳栄(かえ)さん(26)の挙式が行われた。

 披露宴では食事前にサプライズ。一見、曇りガラスがはめられているように思える会場入り口の壁。掛け声とともにガラスは一瞬で透け、厨房(ちゅうぼう)が出現。腕組みしてずらりと並んだ料理人が現れた。

 お色直しの間は、二人の生い立ち映像が流れる。それぞれの学生時代や社員旅行など、思い出写真の一枚一枚にメッセージが添えられ、温かさが伝わってくる。

 二人は赤い和傘をさし、そろいの緑の和服姿で再登場。招待客の視線が集まった。佳栄さんは感激の面持ち。「お客さんに楽しんでもらいたかった。一生忘れない思い出になりました」

 


■ブライダル業界、競争過熱 ゲストハウス台頭、ホテルや式場巻き返し

 県内のブライダル業界はここ5、6年、競争が激化している。従来の結婚式場やホテルに加え、「ゲストハウス」と呼ばれる施設が相次いで参入。一方、式場やホテルも、格式やサービス、価格などで対抗し、巻き返しを図る。利用客獲得を巡るせめぎ合いは、さらに熱を帯びそうだ。

 ◆ゲストハウス

 西洋の城や貴族の邸宅、庭園などを再現しあたかも豪邸を借り切ったような雰囲気が特徴。県内には20を超す施設が進出している。

 昨年11月オープンの小山市の「クイーンズヒル迎賓館」もその一つ。県道沿いに突如、青い屋根の古城が出現する。披露宴会場には大きなシャンデリアや西洋の調度品が並べられ、貴族の舞踏会に招かれたような気分を味わえる。外にはプール付きプライベートガーデン。プールサイドでは立食のデザートビュッフェでもてなす。

 ◆ホテル

 業界の主役だった式場やホテルは苦戦を強いられている。

 ホテル東日本宇都宮(宇都宮市上大曽町)では、ブライダル事業の売上高がピーク時の9年前に比べほぼ半減。沼尻則男マネジャーは「ハード面ではゲストハウスにかなわない」と話す。

 5年前、披露宴料理を改良し、和・洋・中を取り入れた創作料理をメーンにした。「本格的でおしゃれ感もあり、見ただけでは味が想像できない」と沼尻マネジャー。

 ゲストハウスと違い「食事や宿泊で親族や子どもの代まで長く付き合える。ソフト面では負けない」。

 ◆結婚式場

 一方、結婚式場「アピア」(宇都宮市戸祭元町)では、「花嫁サポートプログラム」を始め、若い世代の取り込みに力を入れる。16歳以上を対象に、歩き方や肌の手入れ方法など、女性らしさを磨く講座を設けている。

 挙式費用もゲストハウスに比べ、100万~150万円安い(招待客100人の場合)のも売りだ。同式場は創業36年目。「長い歴史で築いた信頼と、接客力で勝負したい」と鈴木朝哉マネジャー。



 ×  ×  ×

 県内で挙式・披露宴ビジネスを手掛けるホテルや式場は、合わせてもゲストハウスの半数ほど。ゲストハウスは急速に全県に進出し、県外客の取り込みも加速させている。

 ただ結婚情報誌「ゼクシィ茨城・栃木・群馬版」の高野慎一編集長は、「宇都宮市はすでに飽和状態。今後は競争による淘汰(とうた)が進む」と予測している。

 


■招待客重視で多額 県内結婚費用、全国より80万円も

 結納から婚約、新婚旅行などにかける結婚費用について、栃木県には他県にない特徴が鮮明に浮かび上がる。

 リクルートの調べでは、結婚費用は県内は平均500万円。全国平均の421万円より大幅に多いが、内訳をみると、指輪や新婚旅行など、自分たちのための費用は全国平均並みかそれ以下。多さが目立つのは、挙式・披露宴などパーティー費用や招待客数、引き出物代など、ゲストのためにかける費用だ。

 「ゼクシィ茨城・栃木・群馬版」の高野編集長は、「県内では子と親、親戚(しんせき)や会社関係など縦と横のつながりが、色濃く残っている」と指摘。招待客重視の傾向について、「気配りやもてなしの心を大事にする県民性の表れ」と分析する。

 7、8年前は挙式や披露宴を行わない「ジミ婚」が目立った。結婚情報誌「ブリエ」の野末泰博さんは、最近は「大人婚」の流れがあるとみる。「式で自作映像を流し、手作りクッキーを配るなど、アットホーム感を演出。より招待客に満足してもらおうとする傾向がある」という。

 堅苦しいイメージだった結婚式も、もてなし方で二人らしさを表現できる場に変わってきたようだ。

            栃木      全国

婚約指輪      33.0万円  35.5万円

結婚指輪(2人分) 19.8万円  19.9万円

パーティー    397.7万円 317.4万円

新婚旅行      51.2万円  53.6万円

招待客          87人     74人

引き出物      45.5万円  33.1万円

ご祝儀      244.3万円 223.6万円





■壁乗り越え多くの夫婦誕生--壬生のお見合いパーティー・5人に密着

 ◆2回目の参加シンジさん「前回楽しかったからまた」

 昨年11月、壬生町の「おもちゃ博物館」で開かれたお見合いパーティー。25~40歳の男女約90人が集まった。

 午前11時。友達同士でやって来たのは栃木市の医療関係、アキコさん(35)と家事手伝いのミカさん(35)。ピンクのニットに黒のブーツ姿のアキコさん。ミカさんもボンボリの下がったニット帽が似合っている。

 眼鏡をかけ、がっしりしたパーカ姿のシンジさん(40)は、小山市のトラック運転手。2回目の参加。「前回楽しかったからまた来ちゃった」

 黒のジャケットをさわやかに着こなしたタカシさん(37)は、宇都宮市の公務員。笑顔が印象的な後輩のケンイチさん(33)と2人連れ。みなさん、がんばってください。

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 ◆フリータイムにアキコさん「女友達と話す方が楽しい」

 7、8人に分かれてテーブルごとに着席。男女総当たりで、一人1分ほど自己PRし、一巡すると、男性が隣のテーブルに移る。

 「緊張して相手の顔も話も覚えられない」。ミカさん、リラックスして。30代後半の男性に趣味を聞かれ、「ジャニーズの音楽を聴くことです」。話が続かず相手は困り顔。一方、ケンイチさんは「いやぁ、いい感じのコばかり」。それじゃ、ただの優柔不断ですよ。

 続いてテーブルごとにフリータイム。広場からトイレに出てきたタカシさん。「笑いがとれない。僕けっこう若く見られるから、趣味を“若づくり”にしようと思うんだけど、どお?」。なんですか、それ?

 アキコさんは、ミカさんとしゃべってばかり。ひたすらテーブルのサンドイッチに手を伸ばしている。同席の男性陣が退屈そう。「だって2人で話してた方が楽しいもん」

 一方、シンジさん。隣のシックな女性と楽しそうに話し込んでいる。狙ってるんじゃないですか?「いや、始めに座ったテーブルってさ、くつろいじゃって恋愛対象にならないよ」。そういうものですかね。ところで彼女いない歴は?「てゆーかおれバツ1。ぜってぇ誰にも言えねーよ。あはは」。……。

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 ◆プリン四つ手にタカシさん「全部自分のなんだけど」

 午後2時からは席の移動も自由に。3時過ぎの告白タイムが迫っている。お目当ての人を見つけ、広場を出て行く人も。隅では卓球を始めるカップルも出てきた。

 ふと気づくとミカさんがいない。館内を走り回って探す。ベンチで年上の男性と語り合っている。いい雰囲気でしたね。「映画話で盛り上がったんだけど、魔物系のホラーが好きって言ったらひかれた。ジブリアニメも好きなのに」。そっちをアピールした方が良かったんじゃない!?「付き合ったらどうせバレるから、初めに言っとく方がいいの」

 さて、広場のアキコさん。「女子の人気は、ピンクのマフラーした27歳のイケ面みたいよ」。他人のことはいいから、タイプの人いた?「背が高くて良さそうな人いたのに見当たんなぁい」。やる気あるのかなあ。

 シンジさんがしきりに手を振っている。「なあ、あのピンクのセーター着たコ気になってんだよ」。僕が取材しているアキコさんじゃないですか。「悪いけど話せるようにセッティングしてくんない?」。嫌ですよ、自分から話しかけてください。「みんなで盛り上がられてると輪に入って行きづらいんだよ」

 そこにバイキングのプリンを四つ手にしたタカシさんが近づいてきた。「話しかけるタイミングが難しい」。そのプリン持って、さりげなくあいさつに行けばいいじゃないですか。「これ全部自分のなんだけど」。一人で食べすぎでしょ、女性には気配りして。ケンイチさんは、同席の女性と話が弾んでいる。みなさん、もうすぐ時間切れですよ。

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 ◆「名前は覚えてませんが…」ケンイチさん告白し轟沈

 いよいよ告白タイム。男女2列ずつ椅子を向かい合わせる。男性が手を挙げて気に入った女性を指名。ライバルがいると「待った」の声がかかる。

 シンジさん、こっちを振り返り、親指を立てるポーズ。お、アキコさんに告白するの? その前に別の男性が指名。「ちょっと待った」とシンジさん。「話せなかったけど第一印象から決めてました」。えー!?手を差し伸べる男性3人を前に「ごめんなさい」とアキコさん。「やっぱりだめだったかぁ」。当然でしょ。タカシさんも同じパターンであえなく轟沈(ごうちん)。

 さて、ケンイチさん。盛り上がってた女性がいたし、脈ありかも。開口一番「名前は覚えてないんですけど」。……ちょっとちょっと。紫の服の小柄な女性に「またお会いしたいです」。「……ごめんなさい」。あーあ。

 ◆5人は完敗 ミカさん感想「来週別のに今日は前座」

 結局、誕生したカップルは11組。5人は完敗。アキコさん、感想は?「そばにいた37歳の女性はすごかった。狙っている人の連絡先は積極的に聞くのに、興味ない人から自分の聞かれたら露骨に嫌な顔するの。でもカップルになってた。アタシはあそこまで非情にはなれない」。ミカさんは?「趣味の合う人がいなかった。実は来週も別のパーティーに行くの。だから今日は前座ね」。みなさん、次こそいい人見つけてください。【松谷譲二】(登場人物は、すべて仮名です)

 


◇支援の手さまざま
◇結婚相談所…初年度の費用は約30万円
◇お見合いパーティー…大きな合コンのノリ
◇中高年向け…第二の人生で再婚後押し

 連れ合いを求めながら、「出会いが少ない」と嘆く人は多い。県内では、民間業者や行政がさまざまな出会いを提供している。

 ◆結婚相談所

 結婚情報センター「ノッツェ」(本社・東京都中央区)には県内の男女約350人が登録している。費用は登録料の他、月会費や情報料などを含めると、初年度で男性30万円、女性27万円。

 利用者は、住所▽氏名▽年齢▽学歴▽職業▽年収▽婚歴--などを登録。年収は自己申告だが、戸籍謄本などで身元確認は徹底している。同社マーケティング本部長の三谷健さん(35)は、「出会い系サイトと違って身分をごまかせず、安心できる」と話す。

 登録後、本人の携帯やパソコンに、条件の合う相手の情報が送られる。面会を了承すれば、相手の携帯番号やメールアドレスが届く仕組みだ。

 ◆お見合いパーティー

 壬生町のボランティアらでつくる「ファーストクラブ」は、02年から独身男女のお見合いパーティーを行っている。これまでに11回開催され、毎回100人近くが集い、結婚したカップルも7組いる。「大きな合コンみたいなノリで、楽しくやっています」と会長の清水和之さん(39)。

 県も07年、「とちぎ未来クラブ」を設立。毎月1、2回、男女20人ずつを募集し、果物狩りや焼き物体験などのイベントで出会いを支援する。対象は、学生を除く20歳以上。最近は男性の応募が10倍を超える人気という。

 ◆中高年のための場

 一方、配偶者を病気や事故で亡くしたり、早期離婚した中高年に出会いの場を有償で提供するのは「未来21宇都宮」(宇都宮市江曽島1)。

 探偵業の古谷正吉さん(64)が07年1月に発足させた。「欧州では中高年の出会いの場はたくさんあるが、日本はその点が遅れている」と話す。

 これまでに交際中を含め、20組以上の中高年カップルが誕生しているという。ゴールインすると15万円の報酬を受け取る仕組みだ。登録者は60代前後が多く、古谷さんは「再婚をあきらめる人もいるが、第二の人生をすてきな人と歩んでほしい」とエールを送る。

 ×  ×  × 

 県によると、県内の平均初婚年齢は07年時点で男性30・0歳、女性28・0歳。80年当時に比べ、男性2・5歳、女性3・0歳それぞれ高くなっており、全国同様、晩婚化が進んでいる。

 また、国が5年に一度調べる県内の未婚者(15歳以上)は、05年で男性約26万5000人、女性18万3000人。未婚女性に比べ、未婚男性が大幅に上回っている。県は「晩婚化や未婚者の多さは、出会いの機会が少なくなっていることの表れ」としている。

 ◇未婚女性より4割も多い未婚男性 アンバランス状態、弱みにつけこまれる結婚詐欺の温床に
 県内では未婚女性に比べ、未婚男性が4割も多い。アンバランスな状態は、なかなか相手が見付けられない独身男性の弱みにつけこんだ、悪質な結婚詐欺を生む温床にもなっている。

 真岡署管内では昨年6月、既婚の68歳(当時)の女が、独身と偽った上、年齢を実際より26歳も若い42歳とごまかし、48歳(当時)の男性から現金計500万円をだまし取っていたことが分かった。

 女は男性と同居し、結納まで交わしていた。結婚の準備を進めているふりを装い、男性に「義理の兄が金が必要になった」などと持ちかけていた。

 栃木署管内でも同5月、無職の女(23)から結婚話を持ちかけられた47歳(当時)の男性が、女とその母、姉の親子3人から計約760万円をだまし取られていた。3人は共謀し、婚姻届に署名するなどして男性を信じ込ませていた。




毎日新聞 2009年1月1日 地方版
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