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輪違屋糸里

2007年03月22日 21時30分20秒 | 面白い歴史・時代小説を探せ


文藝春秋

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これまでいろんな小説・映画・TVで取り上げられた新選組の、文久3年(1863年)9月 18日の、芹沢鴨暗殺事件を題材にしています。
史料によって判明している歴史的事実を踏まえて、記録のない部分について自由で大胆なイマジネーションをはたらかせて面白いストーリーを考えるのが時代小説家の腕の見せどころですが、面白さばかりを追うあまり、時に歴史の流れに矛盾してしまって読者を白けさせてしまう場合があります。
その点この作品は事実とフィクションとがうまくバランスをとっていると思います。ここでいう「記録のない部分」とはこれまでほとんど注目されなかった文久3年前後の新選組を取り巻く女たちに関する部分です。暗殺現場となった八木邸の女房おま さ、同じく最初の屯所となった前川邸の女房お勝、芹沢とともに斬殺された愛人のお梅、そして暗殺現場に居合わせながらその後消息不明となった島原の芸妓糸里と吉栄、いずれも実在の人物です。
これらの女たちの心理と行動が一人称の記述によって交互に語られます。それぞれの抱える事情や出自や立場によって「壬生浪」に対する様々な評価・解釈がおこなわれますが、それが実に巧みに描きわけられています。ひじょうに多角的で、侍と百姓、男と女、京都と江戸、過去と未来など、さまざまな身分的・経済的・習俗的対立構造が浮き彫りにされており、時間的・空間的に狭い情況での話にもかかわらずスケールの大きい仕上がりとなっています。
もちろん独白は女たちだけではありません。暗殺者側の土方歳三・沖田総司、中間派で悩む永倉新八、芹沢と共に命を落とす平山五郎、芹沢派でただ一人生き残った平間重助らにも節目節目で一人称でナマナマしく語らせています。ある意味主人公不在ですね。
ところが肝心の陰の主人公芹沢鴨と近藤勇には一人称の記述がありません。なぜなら芹沢と近藤の心理と行動は、実はサプライズの一つになっているのです。そこであえて直接描写を避け、女たちに考えさせることでほのめかすというミステリ的手法をとったのでしょう。
芹沢は粗暴なだけの人物ではなかった・・・・たくさんの悪行にはそれなりの理由があった・・・芹沢と近藤の意外な人間関係・・・・平間重助と二人の芸妓はなぜ斬られなかったのか・・・土方が糸里に依頼したこととは・・・・。これだけサプライズがあるにもかかわらず、世間にすっかり定着した新選組の主要キャラクターのイメージを決して踏み外すことはありません。また、陰惨な話なのにラストは決して暗くはありません。二つの意味で安心して楽しく読めます。
2007年秋にTBSドラマ化予定だそうです。ネット情報によれば、糸里=上戸彩、土方=伊藤英明、芹沢=中村獅童・・・だって。個人的な注目は新選組モノで初めてスポットがあたる平間重助=温水洋一と「壬生義士伝」「るろうに剣心」以来ファン急増中(?)の斎藤一=山口馬木也ですね。


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1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (投資で生活する男)
2007-03-22 23:30:49
こんにちは♪


私のブログで
こちらの記事を紹介させて頂きましたので

いきなりですみませんが、
ご連絡させて頂きました。

紹介記事は
http://tousinews.blog85.fc2.com/blog-entry-249.html
です。

これからもよろしくお願いいたします^^
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