詩の自画像

昨日を書き、今日を書く。明日も書くことだろう。

長い手紙(推敲中)

2017-06-24 09:11:53 | 

長い手紙

 

一日で書き終えることのない長い手紙を書いている

手紙の宛先は後で考えることにした

 

東京電力福島第一原子力発電所のメルトダウンから

六年が過ぎ七年目に入った

 

あの日から書き始めた手紙は

落ち着いた場所で書くことはできなかったから

凸凹になった文章の上に視線を置くと躓いたりする

 

だから手紙の中の文章は心を痛めた時間が多くて

ところどころ空白になっている

もうそこを埋めようとしても記憶が戻ることを拒否している

少ない字数であっても戻ってはならないのだ

 

七年目に入っても風評被害はたくさん残っている

目に見えないから現実感に乏しいが紛れもない事実だ

 

帰還を進める為に帰還可能な放射線量も大きく緩めた

古里に戻れると緊張していたものがほぐれ出した

それでも若い人たちは戻らないと言う

古里に戻って若い力で復興をと町村の声は大きいが

 

これから先の健康不安が消えることは無い

確かにあのフレコンバッグの山を見れば心が竦む

中間貯蔵施設の場所が二つの町村にまたがって

放射能を含んだ汚染土などが二十年も眠る場所が

生活する環境のすぐ目の前にある

 

二十年三十年と時間が過ぎて行ったとき

行き先のない中間貯蔵施設はどこに持って行くのだろうか

 

帰還困難区域に除染の手が入り始めた

住民が戻れる場所になるようにとの思いには矛盾がある

 

除染は放射線量を下げる一方法であって万能ではない

下がる放射線量の幅はそう大きくはないから不安だけが残る

 

古里を宛先にした長い手紙はまだ書き終わることは無い


コメントを投稿