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パーヴォ・ヤルヴィ指揮 N響/マーラー「悲劇的」

2017年02月24日 | pocknのコンサート感想録2017
2月22日(水)パーヴォ・ヤルヴィ指揮 NHK交響楽団
~N響横浜スペシャル~
横浜みなといらいホール

【曲目】
1. 武満 徹/弦楽のためのレクイエム(1957)
2.マーラー/交響曲 第6番 イ短調「悲劇的」


パーヴォ・ヤルヴィがN響の首席指揮者に就任して以来、数々の話題になる演奏会があった。僕自身、これまでいい演奏にはいくつも立ち会ってきたが、後々まで語り継がれるような演奏にはまだ出会っておらず、そんな名演の場に居合わせたいと思っていた身としては、このマラ6の演奏会は大いに期待が持て、仕事を早退して横浜まで出掛けた。

N響の弦はコンマスや首席がダブルで乗るという万全の布陣。この後控えているヨーロッパ公演に照準を合わせた態勢とのことで、期待は益々高まった。最初は武満。冒頭の音が、聴こえるか聴こえないかという最微弱音で始まり、エモーショナルな熱を秘め、緊張感に支配された音の世界が紡がれていった。武満作品の中では直接的に感情の糸に触れてくる部分が多いこの音楽を、パーヴォ指揮N響の弦楽セクションは繊細で精巧な佇まいを保ちつつ、赤裸々な感情表現をウェットに覗かせ、次のマーラーに繋げるにも理想的な開始となった。

マーラーが休憩を挟まずに続けて演奏されたのも、そんな繋がりを意識していたのかも知れない。さてそのマーラー。最初から音の軌跡がくっきりと残るような クリアでかつ濃密な音が2階席の奥の方まで届いてきた。暗闇の中で自ら発光しているような存在感を示しつつ、長い指で相手を的確に掴んで離さない執着を感じた。N響の上手さにも舌を巻く。香り高い艶と柔軟性を持つ弦、細やかな表情まで美しい音色で淀みなく表現する木管。輝きと包容力を持ち、安定感抜群の金管。オーケストラとしての響きの美しさも特筆に値し、これならヨーロッパの聴衆も唸らせるに違いない。

演奏が始まってしばらくは、そんなN響の妙技にやたらと感じ入っていたが、第2、3楽章と聴き進んで行くうちに、演奏への集中力が何だか緩んできた。いい響きや妙技が、音楽の表現に活かされていないような気がしてきたのだ。それをある意味はっきり感じたのが、終楽章に出てくる有名なハンマーの一撃。2度に渡り現れるこの一撃は確かに強烈ではあったが、だからどうしたの?という感じ。ここへ至るまでに様々な深刻で悲劇的なものの蓄積があってこそ、この一撃が大きなショックをもたらすのだが、パーヴォ/N響のそれまでの演奏はむしろ晴れやかで陽気にさえ聴こえてはいなかったか。「悲劇的」とは後から付けられた標題で、この曲をそんなにシビアに聴かせる必要はないのかも知れないが、やっぱりこの曲からは悲劇的な「ショック」を受けたい。最後の最後のトゥッティによる一撃だけが、この演奏で心を動かされた瞬間だった。

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