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作曲をするpocknが週1以上ペースで通っているコンサートの感想録を中心に、クラシック音楽を追求します。

東京藝術大学バッハカンタータクラブ 2017年定期演奏会

2017年02月22日 | pocknのコンサート感想録2017
2月19日(日)東京藝術大学バッハカンタータクラブ
藝大内 奏楽堂

【曲目】
1.バッハ/カンタータ 第136番「神よ、われを調べ、わが心を知りたまえ」BWV136
A:松原千紘/T:星野文緑、吉田 宏/B:牧山 亮、小池優介
2. バッハ/ブランデンブルク協奏曲第2番ヘ長調 BWV1047
Tp:鶴田麻紀/Fl:丁 仁愛/Ob:藤本芙菜美/Vn:石井智大
3.バッハ/カンタータ 第198 番「候妃よ、なお一筋の光を」BWV198
S:金成佳枝/A:髙橋和真/T: 市川泰明、鏡貴之/B:小池優介

【管弦楽&合唱】
沼田臣矢指揮 東京藝術大学バッハカンタータクラブ


長年、夫婦で楽しみにしているカンタータクラブの定期演奏会がまた巡ってきた。最初のカンタータ136番は、聖書に基づき、にせの預言者の偽りの言葉に騙されず、神の真の声を聞くことを説いている。カンタータクラブの演奏は、冒頭の合唱から終結コラールまで、誠に清廉潔白な潔さ、純白な心と決意を伝え、全曲を通してピーンと張りつめた空気に支配されていた。神様に対して丸裸の自分をさらけ出し、全てを委ねる姿を歌う透明感のある合唱が、それを勇気づけるようなアクティブなオーケストラに乗って歌われる第1曲なんてトリハダもの。終始活躍するホルンは、私たちを正しい道へ導く光のように響いた。

次はガラリと趣を変え、華やいだ雰囲気のブランデンブルク協奏曲。指揮者はなし。ソロもトゥッティも歯切れのいいアーティキュレーションとストレス配分で思い切りよく曲に挑み、能動的に生き生きと語りかけてきた。とりわけ耳を引いたのはピッコロトランペットの妙技。鶴田さんのソロは艶やかな音色で滑らか、軽やかに、最高音も軽々と出し、この音楽の魅力を十二分に伝えた。ピリオド楽器の演奏をヒヤヒヤしながら聴くよりも、妙技に安心して浸れるほうが有り難い。

後半は2部構成の大規模なカンタータ198番。プログラムノートによれば、政治的な理由で家族が皆カトリックに改宗するなか、独りルター派を貫き、民衆から慕われていた選帝侯妃を追悼するための世俗カンタータ。民衆に深い悲しみと喪失感をもたらしたという侯妃の死に、バッハ自身も共感を持って作曲したはずで、一個人を悼む機会音楽でありながら、普遍性を持つ宗教色の強い作品に仕上がっている。カンタータクラブの演奏は、侯妃の死への民衆の気持ちに成り代わり、溢れる悲しみを切々と歌いながら、最期まで信仰を貫いた侯妃の尊い生き様を称えるような、凛とした気高さを保ち、更に最後の合唱は、まるで受難曲の終曲のように尊き存在への溢れる愛が感じられた。

ソロも皆素晴らしかった。とりわけ聴き惚れたのは金成さんのソプラノと小池さんのバス。カンタータクラブでお馴染みの金成さんは、レチタティーヴォとアリアで、深い悲しみを湛え、熱い血を内に秘めた彫りの深い表情豊かな美しい歌唱を聴かせ、バスの小池さんは、確信に満ち、「マタイ」のイエスを想わせる揺るぎなさと包容力あるアリオーソを伴う長いレチタティーヴォを聴かせ、更に侯妃ゆかりの地の描写を目に浮かぶように語りかけてきた。また、リュートと2台のヴィオラ・ダ・ガンバが静かに切々と奏でる伴奏に乗って歌われた髙橋さんの男声アルトによるアリアでは、長く伸ばした”starb(死)”の表現がまさに動かしがたい「死」を静かに伝え、息を呑んだ。全曲を聴き終わったとき、愛と哀しみ、静寂で心が満たされるのを感じた。

カンタータクラブは、期待に違わず今回もバッハを聴く喜びで心を満たしてくれた。パンフレットの「カンタータクラブへ寄せる思い」に、「いまカンタータクラブは大きな転機の時期を迎えつつあるように感じます」という団員のコメントがあった。昨年、ロ短調ミサという大曲を成し遂げたことで一つの転機を迎え、更に新たな目標を模索しているということだろうか。自分が学生時代に所属していた合唱団が、卒業後の一時期に大きな変化が起きたことをきっかけに衰退してしまった経験があるだけに心配になったが、団員の表情を見て、演奏を聴いた限り、このクラブのバッハに対する思いと、それに賭ける真摯な取り組みに変わりはないと感じた。これからも変わらずバッハの素晴らしさを、愛と真心を込めて伝えてくれるクラブであることを願うばかりだ。

2016年 東京芸術大学バッハカンタータクラブ藝祭演奏会
2016年 東京芸術大学バッハカンタータクラブ定期演奏会「ロ短調ミサ」
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

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