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東京芸術大学 バッハカンタータクラブ 定期演奏会

2007年02月17日 | pocknのコンサート感想録2007
2月17日(土)東京芸術大学 バッハカンタータクラブ
東京芸術大学 新奏楽堂

【曲目】
1.バッハ/カンタータ第147番「心と口と行いと生き方が」BWV147
2. バッハ/ブランデンブルク協奏曲第5番二長調BWV1050
3. バッハ/昇天祭オラトリオ「神を讃えよ、その諸々の国において」BWV11
【アンコール】
バッハ/昇天祭オラトリオ~第1曲
【演 奏】
S:クリステン・ウィットマー(1,3)/A:朴瑛実(1,3)、石川朋美(3)/T:鏡貴之(1,3)/B:新見準平(1)、井口達(3)/Fl:諸田大輔(2)/Vn:根来由実(2)/Cem:小林道夫(2)
渡辺祐介指揮(1,3) 東京藝術大学バッハカンタータクラブ

芸術祭ではほぼ毎年聴いているカンタータクラブだが、定期演奏会に出かけるのは「ヨハネ」以来3年振り、そして改めて感動!カンタータクラブをもう学生時代から25年以上聴き続けているが、メンバーや演奏スタイルは替わっても、与えてくれる感動の種類は変わらない。バッハへのひたむきで誠実な姿、愛情、バッハを演奏する喜び… こうしたものが演奏からストレートに伝わってくる。

古楽器演奏が隆盛を極めている今、メンバーには古楽器科の学生も多く、弦楽器のボウイングやヴィヴラートのかけ方などに器楽科のメンバーとかなりの違いが認められるが、こうした違いを全てひっくるめてバッハへの純粋な思いでメンバーがつながり、間違いなく一つの音楽を鳴らしている。こうした多様性を許してしまうところがバッハの音楽の懐の深さなのかも知れない。

今回は、このカンタータクラブの演奏水準の高さに改めて感嘆した。各ソロ楽器も「いっちゃってる…」ぐらいにバッハの世界に入り込み、魂の歌を奏でてくるし、柔らかく艶やかで嬉々とし、活き活きとした弦楽合奏をはじめとしたアンサンブルも素晴らしい。澄んだ歌声で喜びに満ちて活き活きとした合唱は、歌詞の意味や心情をきちんと伝えてくる。そして、素晴らしいソリスト達!

一昨年の芸術祭で初めて聴いた時からほれぼれする美しい歌声を聴かせてくれているソプラノのクリステン・ウィットマーさんは今回ソプラノの全てのソロパートを受け持ったが、清らかで美しい歌声に更に深い色合いを加えて益々魅力が増した。安定した歌唱で敬虔な気持ちを盛り上げる。今回初めて聴いたアルトの朴瑛実さんのソロがまた見事!芯の通った艶のある美しい声と、美しいドイツ語の発音で非常に歌い込まれた雄弁な歌唱で聴くものを引きつける。昇天祭のオラトリオの他の曲から転用されたアリアが、まさにこの曲のこの歌詞のためにあるように聞こえてくるのはバッハの意図したところだろうが、朴さんはそれを見事に裏付けるような歌で魅了した。テノールの鏡君も以前芸術祭で印象に残ったが、今回はオラトリオのエヴァンゲリストでも滑らかな語り口と柔らかい美声で見事にその役をこなした。その他のソリストも含め、歌手達の充実ぶりも素晴らしい。

ソリスト、合唱、オーケストラ、オケのオブリガートソロ、これら全てが心を一つにして真剣にバッハに取り組み、指揮の渡辺氏と共に実現される真摯な演奏は、芸大生が本気で取り組めばどんなものが実現できるかを見せつけている、という次元を超え、カンタータクラブの演奏からしか味わえないような特別な幸福感をもたらしてくれるような気がする。

今回の定期演奏会でのもう一つの聴きものは、小林道夫氏をチェンバロソロに迎えたブランデンブルク協奏曲。薫り立つような優雅で滑らかな小林氏のチェンバロと学生達のアンサンブルは、このカンタータクラブを35年に渡って見守ってきた小林氏の愛情に支えられ、幸福感溢れるものだった。

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