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2015年5月B定期(エド・デ・ワールト 指揮)

2015年05月21日 | N響公演の感想(~2016)
5月21日(木)エド・デ・ワールト指揮 NHK交響楽団
《2015年5月Bプロ》 サントリーホール


【曲目】
1. シューマン/「マンフレッド」序曲 Op.115
2. メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64
 【アンコール】
 バッハ/無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番~ガヴォット
Vn:ギル・シャハム
3.ブラームス/交響曲第2番 ニ長調 Op.73

急病のために来日できなくなったディヴィット・ジンマンに代わって5月のN響B定期に登場したのは名匠エド・デ・ワールト。ジンマンは聴いてみたかったが、デ・ワールトはこれまで2度のN響定期への客演でホンモノの名演を聴かせてくれた素晴らしい指揮者だ。

予定されていたプログラムに変更はない。最初のシューマン、3つの和音が濃厚に熱く語りかけてきた冒頭で既に心を捉えられた。デ・ワールト/N響は、この最初に聴かせた密度と熱さを全曲に渡って持続させ、芯のある音で、音楽をキチッと構築していき、頼もしさを感じる演奏を繰り広げ、ドイツ音楽の名曲が並ぶこの後のプログラムが益々楽しみになった。

2曲目のメンコンでは俊英シャハムが登場。シャハムのヴァイオリンを聴いた第1印象は、贅肉のない研ぎ澄まされた音で音楽の核心を掴むタイプと感じたが、聴き進むうちにもっとオープンマインドな演奏に感じてきた。「音楽ってこんなに楽しくて、スリリングで、エキサイティングなんだよ!」とでも言いたげに、音楽のシーンに合わせて様々な表情と息遣いを駆使し、聴き手の心をくすぐり、愛撫し、焚き付ける。しかしそのやり方はオーバーアクションではなく、ちょっとした歌い回しや息遣いの、瞬間的な変化によって大きな効果をもたらす。たっぷり朗々と歌うより、聞き耳を立てないと聞こえないような弱音を多用してくるのだが、その音色は実にピュアだ。こうしたアプローチはデ・ワールトのやり方と必ずしも一致しないが、オーケストラもこのシャハムの乗りに合わせて、機敏で軽やかな演奏を聴かせた。

ただ、このヴァイオリンを聴いているとどこか気持ちが落ち着かない。好みの問題かも知れないが、もっと息の長い、ふくよかでたっぷりと響くヴァイオリンの音と、そこから立ち上る官能的な香りの歌のなかに身を委ねたかった。もしジンマンの指揮だったらヴァイオリンとオケのもっと刺激的なバトルが聴けてまた違った印象になっていたかも知れないが。

その点後半のブラームスでは、デ・ワールトが本当にやりたい演奏を実現できるはず、と期待したのだが、過去の客演での名演に比べるとインパクトがもう一つ足りなかった。この曲の「歌」の魅力を伝えようとする姿勢は感じられたが、それがストレートに心に響くところまで達しない。それにデ・ワールトの真骨頂であるはずの緻密な職人技の冴えももう一歩。フィナーレの高密度な輝きなどはデ・ワールトならではの技を感じたし、他にもいいところはいくつかあったが、演奏全体から聴き手に向かってくる熱さや集中力という点で物足りなかった。

エド・デ・ワールト指揮 NHK交響楽団(2012年11月N響B定期)
エド・デ・ワールト指揮 NHK交響楽団(2009年4月N響B定期)


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