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2014年6月B定期(アシュケナージ指揮)

2014年06月19日 | N響公演の感想(~2016)
6月19日(木)ウラディーミル・アシュケナージ指揮 NHK交響楽団
《2014年6月Bプロ》 サントリーホール


【曲目】
1. シベリウス/組曲「恋人」Op.14
2.グリーグ/ピアノ協奏曲イ短調Op.16
Pf:中野翔太
3.エルガー/交響曲第1番変イ長調Op.55

N響の前音楽監督、アシュケナージが久々に登場した6月B定期は、北欧と英国の作品がプログラミングされた。シベリウスの「恋人」はオリジナルの合唱曲の方は聴き覚えがある。痛みと憧れが入り交じった切ない調べは、弦楽合奏バージョンからもにじみ出ていた。繊細で陰影に富んだ演奏が、この曲の内向的な表情を淡く映し出した。

2曲目のグリーグでソロを務めたのは新進の日本人ピアニスト中野翔太。ダイナミックさと繊細さを兼ね備えたしなやかな演奏でオーケストラと渡り合う姿は実に堂々としている。輝きのある美音が耳を心地よく刺激し、歯切れよく躍動するリズム感が心を踊らせる。オーケストラは濃淡を効かせたロマンチックかつアクティブな演奏で盛り立てた。曲が、例えばバルトークとかプロコフィエフとかショスタコとかなら、この演奏で「言うことなし!」となるのかも知れないが、名曲コンサートの定番ともいえるグリーグとなると、これにもう一つ更なるインパクトが欲しくなる。とても良い演奏ではあるが、ライブに出かける身としては、この瞬間にしか味わえないものを体験したい。

後半に演奏されたエルガーのシンフォニーは恐らく初めて聴く作品。初演当初はイギリスのみならず世界中で大絶賛されたとのことだが、個人的には少々消化不良を起こした。複雑に入り組んだテクスチュアで、様々な要素が投入されたこの大規模なシンフォニーを聴いていたら、エルガーさんはちょっと頑張りすぎ、欲張りすぎではないだろうか、という気分になった。颯爽とした行進曲風の音楽も、「第9の緩徐楽章に匹敵する」と言われたというロマンチックな音楽も、どれもが本領を聴かせる前に別の音楽に変わってしまうという感じ。何度も聴き込めばいろいろ発見はありそうだが、これを予習なしで聴くのは少々きつかった。

演奏の方は、アシュケナージによって隅々の細かいパーツまで丁寧に気配りされ、それが有機的につながって大きな流れを生み、懐の深い大らかな包容力でまとめられていた。アシュケナージの指揮姿は相変わらず見ているとぎこちなさを感じるが、出てくる音楽からは大きな呼吸が伝わってくるのは、やはりアシュケナージの天賦の才と言うべきか。芯のある艶やかなオーケストラの響きはN響ならではのものだった。

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