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6月B定期(メルクル指揮)

2009年06月17日 | N響公演の感想(~2016)
6月17日(水)準・メルクル指揮 NHK交響楽団
《2009年6月Bプロ》 サントリーホール

【曲目】
1.ファリャ/バレエ組曲「三角帽子」から第2部
2.ラロ/スペイン交響曲ニ短調Op.21
Vn:ワディム・レーピン
【アンコール】
スペイン交響曲~第2楽章

3.ドビュッシー/映像第3集~「イベリア」
4.ラヴェル/ボレロ

メルクルがN響とスペインにちなんだプログラムをやるというのは珍しいかも。最初のファリャでメルクルはN響から明快な響きを引き出した。民族色的な血や息吹は感じなかったが音が隅々まで行き渡り充実した肉付きの良い響きとリズムで心を揺すってきた。

当初予定されていたソリストのユリア・フィッシャーに代わって、なんとレーピンが代役を務めたスペイン交響曲は悪かろうはずはない。冒頭からレーピンのヴァイオリンは聴くものの心を鷲づかみにした。濃厚な音の塊が会場をたちどころにレーピン色に染める。スペイン交響曲が持つ民族色を、レーピンは体の底から湧いてきたように淀みなく放出させ、歌っていく。その熱く強い意志に貫かれた歌には気高さがあり、ベルガンサの歌を思い起こした。自分の体が楽器の歌手よりも更に自由自在に、ヴァイオリンが体の一部であるかのように弾きこなしているように見える。本来中へ向かっていくものさえ外へと表出される能動性と存在感で、レーピンは一身にスポットライトを浴びるが、メルクル/N響の熱くてしなやかな演奏でのサポートの役割も大きい。

アンコールに今聴いた曲の魅力たっぷりの2楽章を再びオケ伴で聴くことができたのも嬉しい。

後半の1曲目のドビュッシーでは、そんな強烈なレーピンの印象を更に凌ぐほどの演奏を聴かせてくれた。音たちが精巧に結び合わされ、美しい結晶となって輝いていた。繊細で艶やかで、柔らかなその音の結晶は重力から解放され、ふわふわと浮遊しているよう。そして最後にはその結晶は光を集め、眩い光をあたりに放って消えた。そんな音の世界にどんどんと引き込まれて行ってしまった。

こういった類の演奏はN響の真骨頂だと思うが、ここまで冴えた完成度の高い、そして心を奪う演奏はN響でも滅多に出会うことはできない、近年まれに見る名演!ああしかし、何と寂しいお客の反応… 2階のほうからブラボーは聴こえたが、大半のお客の耳にはカビが生えているんじゃないだろうか・・・ 2日目を聴く方は是非とも耳の穴をかっぽじいて心を研ぎ澄ましてこの演奏の真の価値を聞き取ってください。

ボレロも素晴らしかった。N響のボレロというと、デュトワとの颯爽としたスマートでかっこいい演奏を思い出すが、メルクルのボレロからはもっとなまめかしい「踊り」と熱くて息の長い「歌」を感じた。しなやかで美しい体のダンサーが、妖艶な静けさを漂わせる踊りから、血湧き肉踊るような激しい踊りへと姿を変えていく様子がリアルに感じられ、ベジャールの振り付けのような乱舞が目に浮かんできた。これはメルクルの統制力とN響の一人一人の技量と合奏力があって実現する演奏だ。メルクルが久々にN響とすごい演奏をやってくれた!

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2 コメント

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レーピン (一静庵)
2009-06-18 09:06:32
ただ「すごい」とだけしか言えなかったのを、pocknさんんのご感想を読ませていただいて、「そうそうそうでした」と勝手に同意見と納得している次第でございます

ボレロも素晴らしかったですね
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Re:レーピン (pockn)
2009-06-18 17:24:13
ユリア・フィッシャーさんには申し訳ないですが、レーピンが聴けてすごく得した気分ですね。そもそもスペイン交響曲をレーピンで聴けるなんて、こんな機会でないとない気がします。
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