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2006年 夏のヨーロッパ旅行 ~ウィーン~

2006年12月31日 | 2006 夏のヨーロッパ旅行

ウィーン 
WIEN

ウィーンを訪れるのは何回目かな、とちゃんと数えてみたら今回で11回目。普段の生活圏以外で10回以上訪ねている町というのは日本国内でもそう多くはない。仕事で来たことも数回あるが、旅行で訪ねた回数の方がずっと多い。それだけウィーンという町はpocknを引きつける。

ウィーンはザルツブルクとは違って大きな町だ。いわゆる旧市街と呼びうる地区はリンク通りの中なのだろうが、かつては城壁だったというこのリンク通りを徒歩で一周するのはかなりの運動になる。何しろ、このリンク通りに沿ってぐるりとトラムが走っているほどだから。リンクを一周するトラム(1番と0番)に乗るとちょっとした観光ができる。ヴォティーフ教会、ウィーン大学、ブルク劇場、市庁舎、王宮、オペラ座、市立公園、議事堂… 見所が次々と現れて目が離せない。

ウィーンの中心の町並みは、ハプスブルク帝国時代に建てられた豪奢なファサードを持つ格式のある大きな建物が中心に形成されているが、それだけではなく様々な時代の建物を見ることができる。

ウィーンの町のシンボル、ゴシック様式のシュテファン寺院の真向かいには、オーストリアの現代建築家ハンス・ホライン (Hans Hollein)の設計した全面ガラス張りの斬新なハース・ハウス(Haashaus)が立ち、シュテファンとのコントラストが面白い。また、ウィーンの異色芸術家&建築家フンデルトヴァッサー(Hundertwasser)が設計した、フンデルトヴァッサーハウスを代表とする奇抜ともいえる建築物も、不思議とウィーンの街並みに素敵なアクセントを与えている。

そして、19世紀末を風靡した世紀末芸術「ユーゲント・シュティール」(Jugendstil)の芸術家達の建物と作品を見学して巡るだけで、優にたっぷり一日が必要だ。
そんなユーゲント・シュティルの建築家の一人、アドルフ・ロース設計の「ロース館」が、ウィーンの中心、ホーフブルク(王宮)の入口前のミヒャエル広場に面して建っている。そこをスケッチした。
レリーフを施した「芸術的な」ファサードを持つ他の建物の中にあって、唯一一切の装飾を排除し、クリームとグリーンのツートーンカラーの配色はいかにも新鮮で、反って格調の高ささえ感じる(スケッチ左の建物)。
ウィーンのリンク内とその周辺は、このように建物を外から見るだけでも屋外美術館を巡っているようで楽しい。


【ウィーンの建物とエレベーター】
リンク内と周辺の建物は実際殆どが歴史的建造物ではないだろうか。しかもそれぞれの建物が他の町のものより1サイズでかく、6~7階建ての立派な石造りの建築が並ぶ。建物の内部は1階と2階(ヨーロッパでは1階を0階、2階を1階と呼ぶのだが…)の間に「中2階」にあたるメツァーニと呼ばれるフロアがあってここも居住空間になっている。「リンク内のアパートの3階に行く」ということは、つまり0階から1階、中2階、2階、3階と日本だと5階まで上ることになる。しかも各階の天井がとても高いので「3階ぐらいなら階段で…」なんて思って上り出すとえらく後悔する。

エレベーターがまたすごい。まずはどの建物のエレベーターも思い切りオールドファッションだ。外のドアは手で開閉し、エレベーター室の扉は鉄格子で、それが開閉するときのガチャガチャっという音は今にも壊れそう。誰かが使用中の時はボタンを押しても何にも反応しない。エレベーターの動き始めと停まるときの衝撃が結構くるし、動いているときの揺れも不安をそそる。日本じゃあこんなエレベータ、即安全規格外品として撤去されてしまうかも知れないが、これが日本の味気ないエレベータに替わってしまってはいけない。

今回初めて泊まった宿"Pension Residenz"も、そんな典型的なウィーンの建物の2フロアを利用したもの。市庁舎(Radhaus)のすぐ近くの便利な場所にあり、居心地もなかなかよかった。

【ウィーンの車内放送】
ウィーンでは便利な地下鉄やトラムをよく利用する。車内放送はどの路線に乗ってももう20年も前から同じおじさんの声。きっともっと昔から同じ声なのだろう。"Stephansplatz, Umsteigen zu den Linien U1, U4..." その少し鼻にかかった、悠長なウィーン訛りの車内放送を聞くと「またウィーンに来たんだな…」と思う。

今回ウィーンにいるときに地下鉄1号線(U1)の路線が延長になり、その開通式があったらしいが、そうするとそこの駅のアナウンスでまた例のおじさんが新たに案内放送の録音を入れたのかと思うと、「このおじさん、まだ元気なんだな」なんて思う。この車内放送はウィーンの町の風物詩にさえなっているようだ。きっと、これを若い女の子の声かなんかに替えたら猛反発が来るんだろうな。こんなところにも古き良き伝統を守るウィーンを感じる。

【ウィーンでの買い物】
観光でウィーンを訪れれば誰でも必ず歩行者専用のショッピング街、ケルントナー通りを歩くだろう。ブランド店やおみやげ屋、デーメルやオーバーラーなどの有名カフェの並ぶケルントナー通りは華やかで、ウィンドーショッピングもできて楽しい。
ウィーンのもう一つの大きなショッピング街は、美術館が一同に集まるムゼウムスクヴァルティーア(Museumsquartier)のリンク脇から外へ伸びるマリアヒルファー通り(Mariahilfer Straße)だ。ここは地元の人お奨めのウィーンで最も大きなショッピングエリアだ。

ケルントナー通りのような華やかさはないが、ウィーン西駅(Wien Westbahnhof)まで約2キロ続くショッピング通りはお土産屋や専門店もいっぱいあるし、本屋も多い。メイン通りだけでなく、わき道にもお店はたくさんある。それとこの通りには、ウィーンの歴史地区にはないデパートやストアーがいくつもあり、地元の人達のちょっとしたお洒落のための買い物には欠かせない。

pocknはウィーンに来るとおみやげなどを買うためにマリアヒルファー通りをひととおり歩く。距離が長いし、車道を挟んで並ぶ両側の店をチェックしようとするとこれを往復しなければならないので結構疲れるが。

そしてウィーンで必ず行くお店はミュージックショップのドプリンガー(Musikhaus Doblinger)。ここはCD等の音楽ソフトと楽譜の店舗が隣合っていて、僕が行くのは楽譜のほう。とにかく欲しいと思う楽譜が何でも手に入る。自分で色々と物色するのも楽しいが、探している楽譜を店員さんに言えばすぐに持ってきてくれる。日本人のお客もたくさんいた。

今回はモーツァルトイヤーを記念して、ピアノ四重奏曲とピアノのヴァリエーション(Henle版)を購入。それに、モーツァルト自筆の「すみれ(Das Veilchen)」のファクシミリも買ってしまった。これは今、家で額に入れて毎日眺めて幸せな気分に浸っている。
シュテファン寺院から程近いペスト記念塔のあるGrabenから、Dorotheergasseを入って右側にある。

2つのモーツァルト展(ウィーン編)

ザルツブルクで見た2つのモーツァルト展に続き、ウィーンでも特別展と常設展を1つずつ見学した。特別展はアルベルティーナ(Albertina)博物館で行われていたモーツァルト展。常設展はこれまで「フィガロハウス」(Figarohaus)と呼ばれていたモーツァルトの住居跡を生誕250年を機に改装、規模も拡大して「モーツァルトハウス・ウィーン」(Mozarthaus Wien)としてリニューアルグランドオープンしたばかりのモーツァルト博物館だ。

アルベルティーナ博物館でのモーツァルト展は、重要な展示品の多さという点でも、展示内容や扱われているテーマの幅広さという点でも大変大規模で溜息が出るほどだった。ザルツブルクで自筆譜を見て感動していたが、ここにはモーツァルトの最重要作品の自筆譜がこれでもかというぐらいに並んでいる。

旅に明け、旅に暮れたモーツァルトが過ごしたヨーロッパ各地の当時の都市、ウィーンはもちろん、ミラノ、ローマ、パリ、ロンドン、プラハ… の様子、歴史的な位置づけ、当時の貴族から庶民に至る人々の生活等まで丁寧に紹介され、モーツァルトの各時期の作品とその成立を多方面からスポットを当て、浮かび上がらせていた。音声ガイドは解説も音楽も充実、全部聞いていたら何時間もかかってしまうほど。

映像ホールではオペラ「魔笛」の成り立ち、扱われているテーマの意味、フリーメーソンとのかかわりなどが、大画面の映像とサウンドでわかりやすく、おもしろく解説されていたのも興味深かった。

これだけの大規模なモーツァルト展というのはこんな記念の年だからこそ実現したのだろう。これを観るだけでも今年ウィーンに来た甲斐があったと思えるほどのものだった。

それから訪れた"Mozarthaus Wien"は、シュテファン寺院の裏手の路地を入ったところにある。嬉しいことにここには日本語の音声ガイドがあった。モーツァルトを年代ごとに追ったここの展示もたいへん充実していた。自筆譜や父親との往復書簡など手紙の数々、ハイドンやクリスチャン・バッハ等との関わりを明かす資料、「遊び」をテーマにした展示等々いくら見ていても見飽きることはない。音声ガイドもとても詳しく、また音楽もたくさん聴ける。

そしてこの博物館が何よりもモーツァルトの住居だったということが感銘深い。壁の漆喰や天井画や家具、調度品… 窓から見たBlutgasseの路地裏の風景。モーツァルトが妻コンスタンツェや幼い子供達と、こんな風景の中でここで過ごしていたのかと思うとモーツァルトの息吹を間近で感じるようで去りがたい気分になる。

Figarohausだった頃に来たのはもう20年も前のことだから記憶は確かではないが、当時はもっとずっと小規模な博物館だったように思う。今回の拡張リニューアルの規模は相当大掛かりなものだったのだろう。ここはモーツァルト好きなら絶対見逃してはいけないウィーンの新名所だ。

発見!少年モーツァルト

リンク通りに面して並ぶ2つの博物館(自然史博物館とブリューゲルの「バベルの塔」などで有名な美術史博物館:Natur- und Kunsthistorisches Museum)の真ん中にある巨大なマリア・テレジアの像。この台座に少年モーツァルトがいるのをご存知だろうか。僕も実は知らなかった。日本に滞在中のあるウィーン出身の女性から聞いていてそれを確かめに来た。台座にはマリア・テレジアにゆかりの人物達が居並んでいるが、その中の一人ヴァン・スヴィーテン男爵(Van Swieten)のコーナーの後ろに、まだ背丈も小さなWolferl(ヴォルフェル)少年が確かにいた!

背後の建物は美術史博物館。このマリア・テレジア像はリンク通りを挟んで面するハプスブルク家の王宮(Hofburg)を見つめている。

スヴィーテン男爵のもとで、モーツァルトはバッハを中心にバロック時代の数々の作品に触れ、そこで対位法を会得するのだが、そんな縁でここに、かつてマリア・テレジアの御前で演奏を披露した少年モーツァルトの像があるのだろう。こんなところでもモーツァルトに出会えるのはウィーンならではのことだ。


ウィーンのコンサート

ウィーンでは毎晩あちこちのホールやお城でコンサートをやっている。ただこれらはツーリスト向けのものが多く、宮廷のコスチュームを身に着けた楽士達がウィンナワルツやモーツァルトのおいしい部分なんかをハイライトで演奏し、最後はお客さんもいっしょにワルツを踊ったりなんていう楽しいものが多い。ツーリスト向けではあるが演奏のレベルはなかなか高い。何より、あのウィンナワルツの独特のリズムの刻みがやっぱり堂に入っているのがいい。ただ、やっぱりこういうコンサートへ一人で行くのはちと寂しい。それに今回はモーツァルトをちゃんと聴きたい…
ということでみつけたのが、このウィーン・モーツァルト・アンサンブルのコンサート。
演奏もなかなか良かったが、やっぱりこのSALA TERRENAという素敵な会場が印象深かった。こんな町中の小さな雰囲気のある場所で音楽を聴けるのはやっぱりウィーンならではだと思う。

ウィーンでは本当はシュターツオーパーやフォルクスオーパーへ行きたいところなのだが、悔しいことに僕がウィーンを発つ日にオペラのシーズンが始まる。

無念!逃したウィーン・フィルのコンサート
そして、それよりも何よりも悔しいのは、ウィーンを発つ日にウィーン・フィルのマチネがあることを飛行機のチケットを発券してしまってから見つけたこと!! ゲルギエフの指揮でメインはブラームスの4番、会場はテアター・アン・デア・ウィーン!

「モーツァルトをやらないから行かなくてもいいさ…」とか「ウィーン・フィルはやっぱりムジークフェラインで聴かなくちゃね、、、ミュージカルばかりやってるテアター・アン・デア・ウィーンで聴いても仕方ないさ…」とか一生懸命理由をこじつけて諦めようとしてみたものの、やっぱり悔しい!家族を先に帰してあんまり一人で長居するのも気が引けて、始め3泊の予定のウィーンを2泊に変更した後にウィーンフィルのコンサート情報を見つけてしまうとは。。。 事前にコンサート情報はいろいろと調べたはずだったのに… ツーリスト用のコンサート検索サイトは当てにならないことを思い知った。

帰りの日、空港へ向かう電車に置いてあった新聞を見ていたら「今日の文化イベント」の欄にそのコンサートのお知らせが解説付きで載っていて、「残券あり」というところまで見えてしまったときはまた悔しさが。。。。
《旅の教訓10》
コンサート情報はチケットを発券する前に十分調べること!

ウィンナー・シュニッツェル

ウィーンに来るといつものことながら食べたくなるのがウィンナー・シュニッツェル。行くお店はいつもフィグルミュラー(Figlmüller)。ここはシュテファン寺院の裏路地を入ったところにある庶民的なレストランで、最初はウィーンに住んでいた後輩に連れて来てもらった。穴場を知った気でいたが、この店は結構有名らしくガイド本などにも大抵載っている。現に店のテーブルのペーパーナプキンに各国語でこの店のコピーが書いてあり、日本語で「ウィーンで一番有名なシュニッツェルの店」なんて書いてあるのを今回見つけてしまった。

ということで穴場とは言えないかも知れないが、ここのウィンナー・シュニッツェルはいつ食べてもカラリとして柔らかくて上品な味がする。レモンをジューッと絞り熱いうちに食べたいが、何しろビッグサイズなので、食べ終わるころには冷めてしまう。

おまけに、同じテーブルで相席だったイタリア人3人組と話が弾んで、益々食べるのが遅くなった。このイタリア人のおにいちゃん、おねえちゃん達は友人の結婚式に出席するためにローマから来ているとのこと。

ドイツでもオーストリアでもイタリア人に出くわすことはとても多い。イタリア人とわかると何だか嬉しくなってつたないイタリア語で話しかけたくなってしまうpockn、
「こっちにはイタリア人がたくさん来るんですね。ドイツ人やオーストリア人は逆にイタリアに行く人が多いですよね!」と言うと、
「冬や春先はドイツ人が寒さ逃れに大勢イタリアにやって来て、夏はイタリア人が涼みにこっちにやってくるのさ」ということ。
なるほど、お互いに時季を選んで過ごしやすい所で過ごすのがヨーロッパ流なんだな。
なんと、彼らは今年の春日本に遊びに来たとのこと。渋谷や浅草はエキサイティングだって言っていた。
嬉しかったのは「イタリア語上手だね!どこで勉強したの?」と言われたこと。もしかしたら「イタリア語上手」って言われたの初めてかも
ローマか、いいなぁ、、、 連絡先聞いておけばよかった。

シュニッツェルは後半冷めてしまったが冷めてもうまいのがフィグルミュラーのシュニッツェル。それに相席相手と地元のワインを飲みながらおしゃべりするのは楽しい。これも一人旅の楽しみだな。

フィグルミュラーのお店はDom裏手Stephansplatzの"Dommuseum"という看板のある狭い通路を入って行き、通り(Wollzeile)を越えた右側にある。Bäckerstraßeにもう1店舗あって、こちらの方が遅くまで開いているが、雰囲気は今風な感じ。古きウィーンを感じるにはやっぱりWollzeile店がいい。


【ウィーンのカフェ】
ウィーンにはカフェハウス文化の伝統があり有名なカフェがたくさんある。今回はその中でも老舗中の老舗、古き良きウィーンのカフェを代表するようなお店ハヴェルカ(Hawelka)を訪れた。午前2時までやっていると聞いたので、夜のウィーンをのんびり散歩してから11時頃入った。

日本で言えば昭和初期にタイムスリップしたような昔のままの雰囲気が漂うそんなお店でゆっくりとコーヒー(もちろんウィーンで飲むコーヒーはクリーミーなメランジェ(Melange)!)をいただきながら、新聞なんか読んでいたら、なんだかアルファー波に満たされたように心も体もすっかりリラックスした。

【左】すっかりリラックスムードのpockn /【右】ウィーンのカフェでコーヒーを頼むと水がつく。レトロな雰囲気のチョコレートシフォンケーキが何やら更に郷愁を誘う。
カフェ・ハヴェルカは、上に紹介した楽譜店ドプリンガーがあるDorotheergasseを入ってすぐの右側にある。看板が目立たないので最初通り過ぎてしまった。

ハヴェルカを出てもウィーンの中心街はまだ賑わっている。建物のライトアップもきれいだ。ヨーロッパでこんな遅くまで活動している町は珍しい。やはり歴史と伝統の町、ウィーンはおもしろい。



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