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アンサンブル・オレイユ 第19回定期演奏会

2013年07月27日 | pocknのコンサート感想録2013
7月27日(土)北爪道夫指揮 アンサンブル・オレイユ
  ~第19回定期演奏会~
東京オペラシティリサイタルホール

【曲目】
1.シューマン/交響曲第4番ニ短調(マーラー版)
2.マーラー/歌曲集「子供の不思議な角笛」~誰がこの歌を考えたの、トランペットが美しく鳴り響くところ、ラインの伝説、原光
S:長島剛子
3. マーラー/交響曲第10番~アダージョ(C.コルノー編曲の室内管弦楽版)

メンバー一人一人の技量もアンサンブルとしての合奏力も、アマチュアの域を超えているほど上手いアンサンブル・オレイユは、ただ上手いだけではなくて、いつも明確なコンセプトを据えて新しい挑戦を仕掛けてくる前向きの姿勢がリピーターを作り出しているに違いない。今夜の東京オペラシティリサイタルホールも超満員の盛況。

今回のプログラミングはオレイユにしては一見大人しめのようにも見えるが、マーラー編曲版のシューマンのシンフォニーを冒頭に据え、マーラーのオリジナルを間に挟み、未完のマーラーの第10シンフォニーの、しかもコルノーによる編曲版で締めるという、マーラーをテーマとしたシンメトリーな構造はいかにもオレイユらしい。

シューマンのシンフォニーの第1声を聴いただけで、オレイユは聴衆の気持ちを自分達に引き寄せた。ゆったりとした序奏は、オケ全体が大きく呼吸しているよう。そこから主要部へ突入する緊迫感も十分だ。オケが小編成なうえに、響きをすっきりと整えたマーラー版ということで、終始風通しのいい響きのなかで、きちっとしたフォルムを保ち、メリハリの効いた叙事的な演奏が繰り広げられた。

次の「角笛」の歌曲集では、オレイユの各プレイヤーの室内楽的な精緻なアンサンブルが素晴らしかった。合わせるのもフレーズを繋げるのも見事。ソロの長島さんは、言葉をとても大切にして語りかけるように歌っていた(プログラムに歌詞を載せてほしかった)。声は磨かれて趣きがあり、それがオケのパートのひとつのようにオケとの自然なやり取りが感じられたが、最後の「原光」などはもっと歌の存在感を前面に出した方が印象が強まる。北爪さんの指揮は常に知的で整然としているが、マーラーのこのウィットに富んだ歌では、もっと遊んだりソリストを自由に羽ばたかせて欲しいと思う場面もあった。

演奏会の締めの曲目としてマーラーの10番、しかも補筆完成版ではなくアダージョ楽章だけを持ってくることは珍しい。普通のアマオケのプログラミングは、メインのステージはできるだけ降り番を少なくするために大編成で盛り上がる曲が選ばれるのが常だが、こんなところにもオレイユらしさが出ている。ただ、最初のマーラーが編曲「した」曲と、この別の作曲家に編曲「された」曲の対比という以上の、このあまり盛り上がらない曲を最後に据えた意図はよくわからない。この曲でも、最初のシューマンで感じたような大きな呼吸が効果をもたらすように思うが、この演奏ではそうした大きな呼吸よりも、小さなパーツの役割を聴かせようとしているように感じた。研ぎ澄まされた音が冷静に語りかけてきて、それぞれの音が混じり合うことなく自己を主張してくる。不協和音の叫びも決して激することなく、透明感を保っていたのが印象的だった。

アンサンブル・オレイユ 第18回定期演奏会~2012.7.28~

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