『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

ブロックルハースト・グローブの謎の屋敷

2016-02-12 21:41:52 | ファンタジー:イギリス
『ブロックルハースト・グローブの謎の屋敷』
シルヴィア・ウォー 作 ・こだまともこ 訳 ・佐竹美保 絵
ガーディアン賞受賞作

児童文学に詳しい方から「隠れた名作!」と教えてもらったのが、人形のメニム一家のシリーズ。
こちらは第一弾。
小さい頃から他の女子たちのように人形に思い入れがないどころかむしろ苦手だったワタクシ。
けれど、人間と人形の心の交流みたいなおセンチなものではなく、等身大の布の人形が人間から隠れながら人間の生活を真似しながら暮らしているというところに興味を覚えて読んでみました。
古典的な内容ながら書かれたのは1993年。幼いころに出会っていたかった本がここにもありました!

佐竹さんの挿絵も内容とあっていて、よかった(←上から目線)。だって、だって、どちらの国のものか知りませんが、こちらが表紙だったらなんだか生々しくて手に取る気がおきなかったと思うから
目、目がこわいっす。夢に出てきそう・・・↓



ね!?

【あらすじ】
ブロックルハースト・グローブという住宅街に住むあるお屋敷には秘密が。そこに住んでいるメニム一家は実は等身大の布の人形!しかも、生命が宿っていて、話もすれば考えもできる人たち。40年間人間の真似“ごっこ”で平和に過ごしていたメニム一家に突如降ってわいた重大な危機。アルバート・ポンドというこの屋敷を相続したという青年から届いた手紙からてんやわんやが始まる。その青年には肉親がおらず、メニム一家をなんと訪ねてくるというではないか。破たんしかける家族関係とその再生の物語。


正直、前半はなかなか読み進みませんでした。子ども向けの物語という感じだし、一家の焦燥はわかるけれど、しょせん人形たちの焦り。ところが、アルバート・ポンドの正体が暴かれるあたりから急展開!ここからはぐいぐいと引き込まれました。アルバート・ポンドの手紙が妙にウキウキしていて違和感覚えていたので、この違和感はコレだったのか、とナルホド納得。途中からは彼らが人形だなんて思えなくて感情移入。反抗期の設定をされてしまって、本当は自分でもいつも不機嫌でいたいわけではないのにそこから抜けられず、40年間も14歳か15歳のままのアップルビー。

でもね、これって人もある意味同じかも、と。自分自身と周りから作られたキャラに自分で縛られてしまって、本当はそう言いたくないのに口を出てくる言葉は思いとは違う言葉・・・。みな生まれる前から決められた「役割」を演じているのは、人間も同じではないかな、と。人形なのだけれど、人の悲しい性を感じさせて、ついつい感情移入してしまう。

その他にも、ほんの好奇心から始まったごまかしがどんどん膨らんでしまって後戻りできなくなること、母親の絶対的な深い愛情、なんだかんだ言い争っても兄弟愛などなど。きれいごとじゃない家族関係が人形なのにリアル。
そして、結局は人の気持ちに寄り添うことだけが解決の糸口になり、責めることや正しさで裁くことは何も良きをもたらさないことも痛感させられます。それ以外にも、いかにして人形たちに生命が吹き込まれ、記憶ができていくかなど非常に興味深く、いまではこれが本当にあることなんじゃないかくらいに思ってしまう。『床下の小人』シリーズを読んだとき、もう彼らが存在するとしか思えなくなったのと同様、イギリスのお屋敷にはメニム一家が住んでるとしか思えなくなってしまいました!

個人的には嫌われ者のミス・クィグリーがツボです。哀愁漂い、最後はよかったなあと。

こんないい本なのに、なんと私が利用している図書館では閉架で地下書庫に眠ってたんですよ~。
開架せいっ
続編があと4冊あるので楽しみです♪






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2 コメント

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Unknown (foggykaoru)
2016-02-18 20:52:30
この物語を知ったきっかけは、知り合いとメルアドを交換したとき。
謎な言葉が使われていたので、意味をきいたら、「私の心の宝物にしている本の登場人物なんです」
それが、このメニム一家シリーズでした。
一気読みしたきりなので、何も覚えていないのですが、読み進むとどんどんハマっていきます。
人間(人形なんだけど(笑))が描けているということなのではないでしょうか。
ありがとうございます! (Shino(管理人))
2016-02-20 03:04:23
foggykaoruさん、コメントありがとうございます!
その方のメルアドにあった登場人物は誰だったんでしょう?
人形だからこそ、かえって余計なことを考えずに感情移入できるのかもしれませんね。登場人物たちが優しくていい子ちゃんじゃなくて、反抗的だったりちょっと傲慢だったりするところが気に入りました♪教えてくださって、ありがとうございます!

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