『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

『海の島』

2016-05-18 21:18:22 | 北欧文学
日曜日は里子ちゃんと約束していた湘南T-siteへ。
・・・とその前に彼女の強い希望でカラオケへ。彼女と行くと、お互い曲のバランスなんて考えません。うまく歌える歌じゃなくて、サビ以外よく分かんないけど歌ってみたい歌とかバンバン入れまくります。同じ歌手の曲ばかり入れたり、もう己の欲求にえらい忠実(笑)。なので、私も彼女に倣い、欲求のまま輝かしい90年代を歌ってまいりましただ・・・オザケンとかオザケンとか(←しつこい)

JKになった里子ちゃんと、おしゃれにカフェ飯 → 一緒に本選びながらブラブラ → スタバでフラペチーノ注文してどかっとソファーに座り込んで読書。あ~、楽しい。入学祝いにあげた『岸辺のヤービ』は気に入ってくれたようですが、彼女が自分で選んで食い入るように読んでいたのは『不思議の国の男子』(羽田圭介著)。私が絶対読まない下ネタオンパレードですがな

そんな里子ちゃんに今回も私はめげずにお堅い児童文学を渡しましたよ(笑)。迷ったあげく、今回プレゼントしたのはこちら↓



『海の島』アニカ・トール著 菱木晃子訳 新宿書房

大感動!!したステフィとネッリの物語四部作の第一巻。
このシリーズは水彩画の表紙絵が好きなのですが、どれも後ろ姿だったり横顔だったり、主人公の顔がはっきりと描かれてないんですね、想像の余地が残されていて、多分そこがいいんだと思います。
私の中でのスウェーデンは『ピッピ』や『やかまし村』の楽しいイメージしかなかったので、この物語はある意味衝撃的でした。そして、びっくりすることに、読んでる最中これが外国の話だということを忘れてしまうくらい感情移入していました。時代も全然違うのに。数々の賞を受賞し、全業績に対して、アストリッド・リンドグレーン賞も受賞しています。


≪『海の島』あらすじ≫
第2次世界大戦初期。ナチスの弾圧から守るため、500人の幼いユダヤ人の子どもたちがスウェーデンへと疎開してくる。ステフィ(12歳)とネッリ(7歳)の姉妹は別々の家にホームステイすることとなる。ウィーンでは華やかな生活を送っていた二人を受け入れてくれたのは西海岸の寂しい漁師町。すぐに打ち解け、周囲から愛される妹ネッリに対し、なかなか馴染めない姉のステフィ。言葉も通じない慣れない異国の地での生活と人々との交流を通し、葛藤しながら成長していく少女を描く。

これね、あらすじだけを読むと暗そうで興味が持てなかったのですが、表紙の絵と題名に惹かれて読み始めたら、もうもう一気読みです!スウェーデンがユダヤ人の子どもたちを受け入れていたという歴史的事実は初めて知りました。

ステフィを受け入れた家庭はペンテコステ派の厳格な子どものいない家庭なのですが、これがね~、とにかく色がなくて息苦しい。ステフィが海辺の家を“この世の果て”と感じてしまうのも分かる気がします。でもねー、この融通の利かない里親のメルタ、一見冷たい人に見えるメルタが徐々に実は尊敬できる信頼できる人ということが分かってくるのです。そこがいい。『からすが池の魔女』(E.G.スピア)に出てくるピューリタンの叔父を思い出させます。『赤毛のアン』のマリラみたいという人も多い。

文化が違うこともあるけれど、お世話になってるのに、日本人の感覚からするとかなりずうずうしいとも思える疎開してきた子どもたち。してもらって当たり前という感覚、いやあ、すごいな。でもね、「好きでこの状況になったわけじゃない!感謝、感謝ってうんざり!」ってところにはハッとさせられました。自分も里親しているので。

そんな風に自己主張は日本人から見ると強いのですが、ステフィがえらいのは、どんなにつらくても愚痴らないこと。淡々と耐えていること。だからこそ天は彼女の味方になっていったんだと思います。盗んだつもりじゃなかったのに、結果としてそうなってしまった事件、ダサイ水着を着たくないなどなど、色んな事件も起きて、一つ一つに、ああ!って共感。

ステフィは年齢的なこともあるけれどネッリと違って可愛げがない。けど、忍耐強いし自分の思い通りにならない状況にあるとき、本当に誇り高く生きるとはどういうことなのか、を教えてくれます。色々あるからこそ、最後に“ここもこの世の果てなんかじゃない、島の一つなんだ”とステフィが感じる場面には感動

戦争の悲惨さを直接的に描いているわけではないけれど、こういう一見安全な場所にいる子の成長を描くことのほうが戦争はやめたい、って素直に現実に目を向けられる気がします。
とても考えさせられるし、出会えてよかった!!!と思える素晴らしい物語です

最新の画像もっと見る

コメントを投稿