皮膚呼吸しか知らない蛙

アスペルガー症候群当事者が、2次障害に溺れることもありながら社会に適応していく道のりを綴っていきます。

大陸地殻の成長率の変化は、マントル対流の活発さを反映している

2009-01-03 21:37:31 | 地球科学

大陸地殻の成長率に影響を与えると思われる要素は、John Tuzo Wilson (1968)のプレートテクトニクス理論からマントル対流の活発さに起因することが考えられる。 

中央海嶺で上部マントル(アセノスフェア)から部分融解した玄武岩質マグマが、海洋地殻を形成し、沈み込み帯に向かって移動していることはVLBI(Very Long Baseline Interferometry)GPSなどの測量からも実測されている。大陸地殻は、このプレート運動によって移動し、ヒマラヤ山脈を典型例とする大陸地殻同士の衝突による造山運動(付加帯の衝上やそれに付随する火山活動)、大陸地殻と海洋地殻の衝突による島弧・海溝系の火山活動、オフィオライト等の付加帯構成物の付加、スカンジナビア半島に代表される大陸氷河削剥による上昇運動などが成長の直接的要因であると考えられる。

プレート運動で固体地球表層を移動するリソスフェアは、弾性体であり、その下部のアセノスフェアより密度が小さいことから、鉛直方向に移動するには外的な力が必要となってくる。地震波トモグラフィー解析(*熊澤峰夫・丸山茂徳編:プルームテクトニクスと全地球史解読, 2002 )によると、マントル内部では核-マントル境界付近から上昇してくるホットプリュームと、冷たい下降流のコールドプリュームが確認されており、厳密には深度670km付近で一旦滞留している。このマントル対流によって、ホットプリュームにて海洋地殻が形成され、コールドプリュームで海洋地殻が沈み込む(slab)という一連の流れを通して、大陸地殻の成長率が変化していることを示唆している(プリュームテクトニクス)。

 (*栗田敬他:マントル対流の基本的問題 , 2007 )によると、地震波速度構造とレーリー・ベナール対流の温度構造の不一致を、上下境界の不均一性による障害物として、対流構造の地震波速度構造との相関性を示唆している。つまり、沈み込み帯におけるマントル上部境界は、力学特性、化学組成、熱量的にも他の地域と異なった深度100400kmの「異質部分」が存在し、その配置に依存して対流するという双方向性を持っていることになる。

 

内部の解放熱を外部に逃がすためのマントル対流が、その上下境界の不均質さによって安定な準定常状態の対流を維持していると言うことが示唆され、マントル対流の活発さが大陸地殻の成長率に影響を与えていることを示している。

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(Wikipedia プレートテクトニクス: Illustration by Jose F. Vigil. USGS)


(Wikipedia
プルームテクトニクス:丸山茂徳「新説「プリュームテクトニクス」」図⑤(『最新・地球学』所収、1993年)参考)

 

(*李野修士他:砂川ジルコンの年代頻度からみる大陸地殻成長 , 日本地質学会 , 2006)によると、大陸地殻を形成する造山帯には花崗岩を原材料とする堆積物が占める割合は、大陸表面積全体の50%程度に達し、太古代後期から原生代の終わりに突発的に成長し、顕生代になると極端に成長率が低くなった可能性を示唆している。また、大陸地殻の沈み込みによって、島弧-海溝系におけるSiO2に富むテクトスフェアの存在の可能性を述べている。地域地質学、年代学のデータの蓄積と、Nd同位体地質学からマントルからの地殻物質の分離年代が求められたことでも、原生代前半までの大陸地殻成長が量的に重要で、その後はそれほどの増加はなく、大陸の分裂、島弧の形成、それらの合体集合という図式で、成長史の基本骨格がとらえられている現状に即した結果が得られているのは興味深い。

今後、衝突型広域変成帯の造岩鉱物研究や、オフィオライトの全岩化学組成の解析による生成場の特定、MORB・IATの希ガス元素の組成や同位体比の研究などが進めば、マントルと地殻物質の関連性、ひいては大陸地殻の成長過程の類推に大きく貢献することと思われる。

(1万2千年前【古ドリアス紀(最終亜氷期)】の北米・欧州の大陸氷河;サンディエゴ州立大学 powerd by google-earth)

 


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