成人用WAIS-Ⅲと児童用WISC-Ⅲでは、解釈の仕方が異なります。
用途としても、成人の場合は、
・自分自身の長所と短所の確認
・認知特性の把握
・社会における致命的短所の補完方法の考察
などが挙げられると思います。
ここでは、WAIS-Ⅲの一事例を検証します。
WAIS-Ⅲ 検査結果(フィクションです)
1)アセスメントレベルⅠ
FIQ=131(90%信頼区間 125~134) パーセンタイル:98
VIQ=146(90%信頼区間 142~148) パーセンタイル:99
PIQ=108(90%信頼区間 102~113) パーセンタイル:70
VIQとPIQの差38は5%水準で統計的に有意な差があり(頻度1.6%)。
2)アセスメントレベルⅡ
言語理解 VC=132(90%信頼区間 125~134) パーセンタイル:98
知覚統合 PO=121(90%信頼区間 112~126) パーセンタイル:92
作動記憶 FD=126(90%信頼区間 119~130) パーセンタイル:94
処理速度PS=100(90%信頼区間 93~107) パーセンタイル:50
VC(132) ≒ FD(126) ≒ PO(121) > PS(100)
言語理解VC - 知覚統合PO(有意水準15%) 差:11(頻度25.6%)
言語理解VC - 処理速度PS(有意水準5%) 差:32(頻度2.4%)
作動記憶FD - 処理速度PS(有意水準5%) 差:26(頻度4.8%)
知覚統合PO - 処理速度PS(有意水準5%) 差:21(頻度17.3%)
言語理解:<単語><類似><理解>
知覚統合:<絵画完成><積木模様><行列推理>
作動記憶:<算数><数唱><語音整列>
処理速度:<符号><記号探し>
3)アセスメントレベルⅢ
下位検査項目
・<算数><単語><理解><積木模様>で「S」
・<行列推理><記号探し>で「+」
・<数唱><符号>で「W」
・<知識><絵画完成><絵画配列>で「 - 」
1.言語性下位検査に関して
<算数><単語><理解>が有意に高い。
<数唱>が有意に低い。
<単語>に対して<知識>が有意に低い(評価点差:4【2以上】)
<数唱>における順唱と逆唱の差:5(順唱:8、逆唱:3)
2.動作性下位検査に関して
<積木模様>が有意に高い。
<符号>が有意に低い。
<符号>における対再生:素点4(累積2%)、自動再生:素点7(累積25%)
3.プロフィール分析による強みと弱み、影響因
明確な判定項目なし。
一見ディスクレパンシーが非常に大きいこと、
各下位検査間・群指数の差が顕著であることを除けば、
全体的に評価点は高いことから、問題がなさそうに見えますが、
根拠を抽出し、深く探っていくとある種の傾向・推論に行き着くと思います。
幾ら評価点が高くても、能力・認知特性のアンバランスは、社会生活を営むにおいて、非常に困難を伴うものと推察されます。
気が向いたら、いつの日か考察を書いてみます。
私自身、符号の点数が低く、どの検査の結果だったか気になってたのですが、plutoさんの「符号」のエントリーではっきり理解でき、非常にすっきりしました。ありがとうございます。
ウェクスラー知能検査について書かれている考察も興味深いのでまたじっくり読みに来たいと思います。
こんにちは。
参考になるのかどうかはワタシ自身わからないのですが、すっきりして下さったのは嬉しいです。
ウェクスラー知能検査は、どうも生みの親David Wechsler氏の意図とはずれてきているような気がしています
ありがとうございます。
ただアセスメントレベルⅢの+、-がどれに該当するのか自分なりに調べましたがわからずじまいでした…(; ̄ー ̄川
何かコメントをくだされば嬉しいです。
こんばんは。
お役に立てまして光栄です。
ワタシもウェクスラー知能検査の書籍等を読みふけってから時間経過していますので、間違ってましたらすみません。
言語性、動作性各検査の平均値(図中の赤破線)と下位検査項目値の差が1~2(平均値より上が+、下が-だったと記憶しています)。
Yahoo検索で「WISC-Ⅲ プロフィール分析」と入力しますと名古屋市立大学看護学部 小笠原研究室WEBサイト上で「プロフィール分析」の簡易版のエクセルデータがあったりします。
興味がおありでしたら、ご覧になってみられては如何でしょうか。