神々の黄昏 ―Gotterdammerung―

日常の出来事や、ちょっとした物事の考察を書いていくブログ

桜・連続シンポジウムへ行ってきた

2008-05-05 | 読み物
5月2日、チャンネル桜主催の連続シンポジウム「胡錦濤訪日、北京オリンピック、東アジア大討論 Part2」を聞くため、九段会館へ行ってきた。

登壇者は以下の10名であった。
  青木直人 (ジャーナリスト)
  岩本太郎 (フリーライター)
  大高未貴 (ジャーナリスト)
  斎藤貴男 (ジャーナリスト)
  坂本 衛 (ジャーナリスト)
  西尾幹二 (評論家)
  西部 邁 (評論家)
  西村幸祐 (ジャーナリスト)
  西村仁美 (フリーライター)
  三上 治 (評論家)

ここでは、各氏の印象に残った言葉を抜粋して記しておきたい。

青木氏:長野の聖火リレーではためいた多くの五星紅旗は、中国のナショナリズムを象徴していたが、これは排外主義に結びつき、諸外国との対立を招くものだ。今後、中国と日本のナショナリズムが衝突することは確実だ。また、中国の排外主義を伴うナショナリズムは将来、中国共産党へ矛先が向かう可能性が十分ある。そのときは中国内部で大変革が起こり、日中友好72年体制も改変を求められることになる。日本はその覚悟が必要だ。

大高氏:各地を巡った聖火リレーが、中国の本質を世界に晒した。もう情けないほどの醜態を晒したと言っていい。私はチベット支持派の行動を妨害とは思わない。また、ダライ・ラマの本心を日本人は理解していない。彼は先日トランジットのため成田へ立ち寄ったが、その時に会見で、中国から黒幕はダライと批判されていることについて訊かれ、「私は鬼か悪魔ですか?」と語った。日本ではスルーされた彼のその言葉にはとても深い意味がある。彼は宗教家であるとともに、一流の政治家なのだ。

斎藤氏:なぜ長野で、警察は中国人ばかり守ったのか。それは日本政府が北京オリンピックをビジネスとしか見ていないからだ。オリンピックが成功しないと公式スポンサーの商売に影響が出る。その中には日本のパナソニックも入っている。この考え方はアメリカも一緒だ。だからブッシュはボイコットの可能性を言い出さない。日本の保守系のマスコミからもボイコットを推す声が出ないのは、スポンサーとの絡みがあるからだ。こういう現状下で、論陣を右左に分けている場合ではない。将来的な東アジア共同体の実現に向けて一致団結して議論していく必要がある。

西尾氏:毒ギョーザ事件で、中国という国の実態を日本人は知ることができた。中国では人命に対する意識がとても軽い。今回の毒ギョーザ事件のような出来事は、中国では頻繁に起こっており珍しくないことなのだ。

西部氏:日本は今、“中国恐怖症”とでも言うべき状態だ。以前はアメリカ恐怖症だったものが、対象が中国に変わっただけだ。

西村幸祐氏:チベット騒乱が発生したことによって、初めて世界的にチベット独立支持の声が上がった。日本でもチベット問題が公になった意義は大きい。中国の覇権主義が露になった現在、9条改正を含めたドラスティックな改革を日本は迫られている。

三上氏:中国が警察国家とはよく言われるが、日本の実態もたいして変わらない。この頃はビラ撒きによる主張が制限されたりしており、日本も実態は警察国家と言える。


本当はもっと多くの有意義な主張が聞かれたのだが、すでにシンポジウムから3日経過しており、細かいやりとりを記憶していない(メモを取っておけばよかった…)。

全体的な感想としては、保守派からは中国についての現状認識を踏まえた現実的で的確な考察が示されたのに対し、リベラル派のほうは情勢認識の甘さからくる曖昧かつ矛盾が含まれた論考が多かった。とくに三上氏の主張は丸っきり的外れと言ってよく、傾聴に値しないものばかりであった。彼の頭の中は1970年で止まっているのではないか。

東アジア共同体構想を披露した斎藤氏に代表されるように、リベラル派には中国への幻想を未だに抱いてる論者が多いというのが俺の印象だ。少しでも中国や北朝鮮について研究したことがあれば、彼の国々が日本とは甚だしく異なる行動原理を持っており、共同体を組むことなど到底不可能であることは簡単に認識できると思うのだが。

また、左派系の人間やメディアは、「日本と中国は友人同士。さらなる日中友好を」という甘言を度々発信するが、そもそも国家間の関係に友達も何もないのだ。外交とはシビアな国益主張の場であるのだから、ライバル関係こそあっても友人関係は成り立たない。福田のように「中国は友人なんです。友達の嫌がることはやらないのが私のやり方だ」などと言ってるようじゃ、日本の国益は損失を被るばかりだ。すでに東シナ海のガス田を、中国に一方的に奪われかけているように。

中国との関係を考えるうえで必要なこと――正しい現状認識を持ち、根拠のない幻想は抱かない――をあらためて実感した。


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