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男が一切役に立たない『アナ雪』が描いた真実の愛とは

2014年04月29日 | 芸能









ここ数年、ディズニーのプリンセス系アニメーション映画は、主人公の女の子が自ら敵や魔女と戦い、成長していく物語を描くことに躍起になっているように感じていた(95年『ポカホンタス』くらいからその兆しが現れ、07年エイミー・アダムス主演の実写プリンセス映画『魔法にかけられて』でかなり露骨になったか)。

まるで、ディズニー自らが百年近くかけて作り上げた「無垢で美しい少女が王子様のキスによって目覚め、そのまま大切に守られ、他の世界も知らないまま、お城で一生幸せに過ごしましたとさ」という非現実的なお姫様像(=ジェンダー観)が、映画の枠を飛び越え、世界や歴史を飲み込んでしまったことを猛烈に反省するかのようだ。

それはそれで充分意味のあることだし、映画の中で女性を描くということに対する意識の高さには感服するしかないのだが、それでもやっぱり、最終的には「白馬に乗った王子様」が現れることにちょっとがっかりもしていたのだ。おとぎ話なんだから当たり前だとは半ば諦めつつ。
 










だからこそ、今回の『アナと雪の女王』を見た時の驚きと喜びは、相当な衝撃であった。

幼い頃は仲の良かった小さな国の王家の姉妹、しかし姉(女王)の持つ不思議な魔法(触れるものを凍らせてしまう)は日に日に力を増し、ついには妹(アナ)を傷つける事態を招いてしまう。そのことに対する親の怒りと、自らの力に対する恐れのため、姉は引きこもりの生活を送るようになり、他人との交流を一切断つ。事情を知らない妹もまた、姉に拒絶されたと孤独を感じながら生きる。

今までのディズニーアニメは、絶対的な父親や、娘を所有しようとする母親(年老いた醜い魔女)によって狭い世界に閉じ込められたプリンセスの脱出劇が基本的な物語だった。しかし今回は、女王の魔力をコントロールしようとする両親はさほど悪者扱いされてないうえ、映画開始数分で拍子抜けするくらいあっさりといなくなる。つまりはじめから、女王には戦うべき敵が自分しかいないということがはっきりしているのだ。が、これまた意外とあっさりと、女王は自分の力を受け入れ、本気で己と戦う前にそそくさと自分の世界に籠ることを選択し、雪山の中でおひとりさまとして生きていくことを勝手に決意する。
 
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しかしそんな独りよがりの生き方で何か問題が解決するわけはもちろんなく、見て見ぬフリを決めた魔法の力は彼女の想いとは裏腹に悪いほうへと暴走し、妹や大切な国を苦しめてしまう。女王は再び自分の力を呪うハメになるのだ。

そんな姉をなんとか助けようと、妹のアナは果敢に雪の中に飛び出して行くのだが、この子がまた、見ててちょっと引くくらい男に惚れやすく、あわや二股かとハラハラさせるような、これまでのディズニーアニメでは考えられないようなキャラクター(おきゃんな娘はいても、ここまで簡単に婚約する奴は見たことないかと)。

しかし、そんな一見とんでもない女の子の「存在」が、姉を孤独と周囲の抑圧から、世界を悪い力から、解放し、救い出すのだ。この映画では、劇中のセリフでも繰り返される「真実の愛」が、もはや王子様のキスなんてものではなく、異性の存在を必要としない、女の子たちそのものとして描かれているのだ。

もちろん「姉妹」というカテゴリーに頼ってはいるものの、ここまで男が役に立たない映画も珍しい。ディズニーさん、思い切ったもんである。

なので私は、実は前から薄々感じていたことを今回はっきりと言いたい。ディズニーアニメは近い将来、絶対に正々堂々と同性愛について語るべきである。そうすれば、世界と歴史は変わる。
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それともうひとつ本作を見て感じたことがある。

物語の途中、それまで「女王」ともてはやされていた主人公が、誰にも理解できない強力な力を持っていると発覚するや否や「モンスター(化け物)!」と罵られ、拒絶される(彼女を罵る人々の姿はいたって曖昧)。それをきっかけに、女王は雪山に閉じこもってしまうのだが、最終的には自分の力を自分自身が信じるしかないと気付く。これは是非とも今話題の某リケジョにも見てもらって、今回の、科学的な話とかけ離れたところでの馬鹿げた騒動は、彼女自身の問題以前に、彼女を「女の子」ともてはやした(簡単に転がされた)頭の悪い男たちの問題なのだと清々してほしい、と本気で願う。

『アナと雪の女王』を見た現代の子供たちが、どのような「夢」を抱くのか、本当に楽しみ。

と小難しいことを考える前に、私は今回2D字幕版で鑑賞してしまったのだが、この映画は完全に3Dを念頭に作られた画面になっているので(2Dだと奥行きがなく平面的過ぎる)、もしこれからご覧になる方には多少お金がかかっても3Dで見ることをオススメします。



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