Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

新国立劇場オペラ「バラの騎士」批評(No.1836)

2011-04-19 23:51:41 | 批評

『新時代』に突入した 新国立劇場オペラの第1弾は「一定の水準」を保った


"Piano Music Japan"ブログに衣替えする前月の 2007年6月に「プレミエ」だった「バラの騎士」再演。元帥夫人に大好評だった初演時と同じ ニールント を招聘して、さらに「定期演奏会シーズンオープニングでバラの騎士演奏会形式で全曲演奏」した アルミンク+新日フィル を起用する、とのことでチケット代金は初演と同じ S=23,100円 に高く設定されたハズだった。

 3月11日に東日本大震災が起こり、東京電力福島第1原子力発電所が「放射能垂れ流し」状態になり、しかも日本政府の「大本営発表」が嘘だらけとバレると、「演奏家来日中止の嵐」が発生した。外国人は選挙で日本政府現首脳を選んだワケでは無いし、やむを得ない。新国立劇場は「お目当てのニールント + アルミンク」の両者が来日中止となった上にさらに3名来なかった。「オックス男爵 = ハヴラタ が予定通り来日」してくれたことの方が奇跡に近い。

 制作スタッフの努力の賜物で、「元帥夫人 = ベーンケ」「オクタヴィアン = 井坂恵」「ファーニナル = 小林由樹」「ゾフィー = 安井陽子」「指揮 = マイヤーホーファー」の布陣で、(当初予定初日を飛ばして)4/10初日で開催されることが決定した。まずは、出演を快諾してくれた皆様と制作スタッフに感謝する。
 さらに本日聴きに行ってわかったことは、「沼尻竜典がオーケストラリハーサルに多大な協力」をしたとのこと。沼尻にも深く感謝する次第である。
 終演後の盛り上がりは、代役を務めてくれた5名 + 予定通り来日のハヴラタ に極めて温かい拍手とブラヴォーが送られた。前回公演「マノン・レスコー」は飛んだのだから、聴衆は「公演再開」に努めてくれた全員に感謝の意を捧げたのである。私高本も同意。


 ・・・で、

「批評の基準」をどこに置くか?


が大問題である。いろいろな考え方があるだろう。音楽誌、新聞もそれぞれの基準が設定されるだろう。

私高本は「これまでの新国立劇場オペラの水準」を基準に書く


ことにした。
 「これまで」とは「1997年10月10日 オープニングの建(TAKERU)」から「2011年2月4-5日 夕鶴」までである。(次の「椿姫」公演は佐伯周子にチケット取られて聴けなかった。地震が来るとわかっていたら・・・)


楽劇「オックス男爵」だった新国立劇場オペラ「バラの騎士」再演


 スケジュールを確保できた歌手&指揮者での「最善の公演」をわかった上での批評だが、R.シュトラウス「バラの騎士」の本質を浮かび上がらせることができなかった公演となった。原因ははっきりしている。

タイトルロール = オクタヴィアン = 井坂恵 の声量がはっきり不足していた、ことに尽きる


 井坂に責任があるとは、私高本は全く感じても考えてもいない。新国立劇場オペラ制作陣から拝み倒されての登板だったことは容易に推測できるからだ。井坂が断ったら、本日配られた配役表の「カヴァー=池田香織」が演じるか? 中止か? になったハズである。井坂と池田のどちらが声量があるかは聴いて見なければわからない。
 この楽劇は、「オクタヴィアン」と「オックス男爵」が全幕に出ずっぱり。オクタヴィアンが「好かれる主役」で、オックス男爵が「嫌われる脇役」が鉄則。予定通り来てくれた オックス男爵 = ハヴラタ の歌唱と演技は、前回公演を上回る印象だ、声も演技も。「嫌らしい女好きの田舎っぺ」をそれはそれは見事に演じてくれた。2幕最後の低音の響きなど、素晴らしい限りの声であり、さらに演技も「田舎っぺ丸出し」に感じられる秀逸。
 「元帥夫人 = ベーンケ」は悪くない歌唱&演技。ニールントに比べれば、印象が薄いのだが「同一演出の再演」は基本的に初演よりも印象が薄くて当たり前、なので、ベーンケが原因かどうかはわからない。共演者や指揮者やオケの問題も大きいからなあ。
 「ゾフィー = 安井陽子」は(演技はぎこちなかったが)代役としては十分な声。前回は「年食った声」を聞かされて、違和感を感じていたので、前回新国立劇場オペラ公演よりも印象は良い。
 「ファーニナル = 小林由樹」も好演。ただただ振り回されるだけの役柄なのだが、「声」が主役陣に負けずに出ていたことが印象的。この人は若い時分から注目(=オペレッタ脇役に出ていた頃)していたのだが、ついに「自分の声」に確信が持てたようだ。

 ・・・で「オクタヴィアン = 井坂恵」は、はっきり声が足りなかった。ソロでも2重唱でも3重唱でも。以前、二期会でモーツァルトを聴いた時には全く感じなかった不満を感じるので、『やはり新国立劇場オペラは別格』と再認識した。

響き! 響き!! 響き!!!


 オペラの基本はこれだ!


 私高本が「バラの騎士」を観た(聴いた)のは何回目だろうか? 初回が「伝説のC.クライバー指揮ウィーン国立歌劇場来日公演を東京文化会館の最前方中央」で聴いたからか、印象に残る公演は「新国立劇場オペラプレミエ」くらいしか思い浮かばない。オッター がまだ現役ばりばりの時だった。印象が強すぎて、きつい批評になっている可能性もある。

 但し「井坂恵がオクタヴィアン」で再演された、としたら「聴かない可能性」が51%以上。そんな感触である。


 マイヤーホーファー指揮新日フィルについて。管楽器、特に木管楽器の「ニュアンス」が物足りない。つい先日聴いた、下野竜也指揮 の演奏会では全く不足していなかったことなので、おそらくは指揮者の問題。スケジュール不足の可能性が大。「声楽陣のまとめ」は上手い指揮者なので、今後スケジュールをきちんととったオペラ公演を是非是非振ってほしい。期待する。
コメント
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