デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



ウージェーヌ・ドラクロワ「ダンテの小舟」(1822)

フランスを代表するロマン派の画家ドラクロワについては、以前少しだけこちらで触れた。
しかし、ルーヴルのデゥノン翼のフランス絵画の大作の部屋(ジェリコーの「メディーズ号の筏」もある)にあるドラクロワの作品群こそ、さらにとりあげるべきと思う。
ドラクロワという画家は「本当の父親は誰か?」という議論が巻き起こるその出生からして、現代の美術研究者を悩ませている。
また面白い逸話として以下の二つがある。
一つは、『モンテ・クリスト伯』や『三銃士』などを書いたデュマに、ドラクロワ自身が語った内容として、小さい頃何度も死に掛けたが、それでも生き抜いてこれたのは「神の摂理が私を見守っていてくれたおかげ」だといったものがある。
もう一つは、子供の頃に出会った占い師が「この子は将来きっと有名になるであろう。だがその生涯は苦難に満ちてけわしく、絶えず反対にぶつかるだろう」と言い、成人し熟年に達したドラクロワは「まったくその通りではないか。今でも私は仕事を続けているが、相変わらず批判されてばかりいる。あの男はたしかに本当の占い師だった」とかいったようなものだ。
妙なというか奇怪というか(笑)。
事実、彼が発表した作品は、当時の美術界のなかで賛否両論の嵐が吹き荒れ、本当に評価が真っ二つに分かれた。新古典主義の通常の評価の基準からすれば、ドラクロワの作品は《まったく滅茶塗り》だと評する人もいたし、通常の評価基準では評価できない新しく前衛的な画家としてドラクロワを天才と言い切る人もいた。
さて、上の「ダンテの小舟」はあらゆる先輩画家や文学に学び、2ヶ月半にわたって没頭して描かれた24歳のドラクロワ渾身の作品で、1822年サロンに出品された。賛否両論あるなかで、この作品は政府に買い上げられ、以後ドラクロワは画家としての自分の歩む道に自信を深めた。
それにしても、絵の題材であるダンテの『神曲』地獄篇は、読むだけでもいろんな場面が頭の中で想像できるのに、それを絵に昇華したドラクロワには舌を巻くしかない。ちなみにこの絵は縦189cm×横246cmのサイズで、迫力がある。すごい作品だが、これですらまだ序の口かも。



ドラクロワ「民衆を導く自由の女神」(1830)

来ました!フランスを代表する絵画の一つといっていい傑作。ちなみにサイズも260×325cmと圧巻だ。(ただ、これよりも大きいヴェロネーゼの「カナの婚礼」やダヴィッドの「妃ジョゼフィーヌ戴冠」もあるから、ルーヴルは計り知れない)
体があまり強くなく外に出ることの少なかった”書斎派”のドラクロワも、フランス革命の戦闘は目にしたことがあり、そこから絵につながる多大なるインスピレーションを得た。
フランス革命について書くと「~の襲撃」だ「~月革命」だとか、ごちゃごちゃあるようだが、「民衆を導く自由の女神」は1830年7月にシャルル10世のブルボン王朝が打倒された7月革命での民衆蜂起の寓意画である。ちなみに7月革命のあとルイ・フィリップによる「七月王政」が立つが、その頃にはこの作品の価値はあまり認められてなかったようだ。
しかし、今やこの作品は”フランスといえば、ドラクロワといえば”というぐらい、圧倒的な存在感と価値を誇っている。
私がこの大作で注目したのは、やっぱり上半身をむきだしにした「女神」の存在で、堂々としたリーダーシップを発揮し勇敢に歩む姿に、ほれぼれしてしまったのだった。帰国後、この絵についての解説を読んだら、なんと革命後発行された小冊子にアンヌ=シャルロットという洗濯女が戦闘で殺された弟の仇を討つため「スカートをつけただけの姿で」勇敢に戦った譚があって、「女神」像はそこから霊感を得た可能性もあるのだという。ルネサンスやバロック時代の画家も、モデルについて少し似たような霊感を得て絵にしたと聞いたことがあるが、ドラクロワにも同じことが少しくらいはいえるかもしれないと思う。



ドラクロワ「サルダナパールの死」(1827-28年)

反逆者に宮殿を取り囲まれた、栄華と快楽を極めた古代の専制君主が、最期に自分の寵愛した女や小姓、さらには愛馬や愛犬まですべて殺害するよう命じた場面。
左上に寝そべるサルダナパールの表情と傲然とした態度、もう完全な無意志というか、自暴自棄や絶望すら通り越してしまっている。官能的な殺害ともいえるドラマが、4m×5mぐらいの大きさで迫ってきた。
この絵は旅行ガイドブックでも「必見」みたいに扱われているが、私もそう思う。
絵のモティーフになっている時代は特定されてはおらず、伝説の域にとどまっているが、この絵のテーマは決して数は多くないとはいえ世に存在し、人間の無意識の一部を表現していると感じた。正直、心して見よ!と思った。

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