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フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

芥川の手紙 UNE LETTRE DE RYUNOSUKE AKUTAGAWA

2007-02-22 00:47:41 | 日本の作家

先の休みに20年ほど前のノートをめくっていて、NHKテレビで夏目漱石の評伝を見た後に残していたメモを発見。予想もしないものが出てくると、当時確かに生きていた、何らかの精神活動をしていたことを確認でき、頭の中に力が漲ってくる。それは、芥川龍之介 (1892年3月1日 - 1927年7月24日) が久米正雄 (1891年11月23日 - 1952年3月1日) に宛てて書いた次のような言葉であった。

「世の中は、根気よくやる人には頭を下げるが、華やかなことは一瞬のうちに頭から去っていく。人はみな馬になろうとするが、牛になれ。そうして、死ぬまで押し続けるのだ。何を押し続けるかと言えば、それは他にはない、他人ではない。それは自分の中にある何か本質的なものなのだ。」

芥川はやはり自身を馬であると感じていたのかという思いが湧いたのか、自ら馬になろうとしている心を戒めようとでも思って控えた言葉であったのか。メモを見た時は驚いたが、その時のことが微かに浮かび上がってきている。


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(22 février 2007)
この記事について、kounit 様からここで取り上げた言葉は漱石のものではないかというコメントがありました (コメント欄をご覧下さい)。さっそく調べてみたところ、ご指摘通り、漱石から芥川と久米に送られた手紙であることが判明しました。記事にある手紙の要約を読み直してみると、相当思い入れの強そうな書き方をしていますので、その言葉に集中し過ぎて周りを見落としていたのかもしれません。このような誤りが随所に転がっている可能性がありますので、お気付きの点がありましたらコメントの方をよろしくお願いいたします。

kounit 様、ご指摘ありがとうございました。訂正版を明日出すことにします。これに懲りずに今後ともよろしくお願いいたします。

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Unknown (kounit)
2007-02-22 12:35:27
お久しぶりです。暖かい冬ですね。私も漱石は好きで岩波の新書版の全集を何度か読み通したものですが、「馬でなく牛になれ」という言葉は、漱石から竜之介に宛てた手紙にもあったと記憶します。竜之介がデビューしたころ漱石はその才能は高く評価したのですが、どこか病的なほど鋭敏で危ういものを芥川に感じていたのではないでしょうか。もう一度読み返してみないと分かりませんが・・・・それにしても漱石の書簡集はまさに文学作品そのものですね。
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漱石・俳句・グールド (冬月)
2007-02-22 16:41:39
■漱石と言えば、意外だったのは、ピアニストのグレン・グールドが漱石を好きだったことですね。『草枕』を20世紀最高の小説のひとつと言っていたとか。ぼくも、『草枕』は大好きで、どこか、俳味があるように感じます。

ところで、漱石って、俳句が意外にいい味だしているんですね。ずっと、以前、ネットで数人で漱石の俳句を読んだことがあります。

月に行く漱石妻を忘れたり

木瓜咲くや漱石拙を守るべく

叩かれて昼の蚊を吐く木魚かな

寝る門を初雪じゃとて叩きけり(記憶あいまい)

印象に残る句がたくさんありました。
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グレン・グールド (ミコ)
2007-02-22 19:39:28

  冬月さん

グールドが漱石が好きだったというソースは何ですか?英訳の「草枕」を読んだとすれば、それに最高の小説と言うからには、欧米の作品も沢山読んでたのでしょうか?

あの世捨て人の演奏が漱石にまで辿れるとしたら、ファンには衝撃的な事実ですね。是非ソースをお教え下さい。彼の自宅でつぶやきつつ弾いているLDがあります。
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kounit 様 (paul-ailleurs)
2007-02-22 20:01:51
適切なご指摘ありがとうございました。この暑さのせいではないと思いますが、このような気付かないミスがだんだん増えているようです。ところで漱石が手紙魔だったとは知りませんでした。2500通以上も書いているとのこと、私も読んでみたくなりました。

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冬月様 (paul-ailleurs)
2007-02-22 20:20:34
グールドが漱石を、とのご指摘、私もはっとしました。グールドに関しては、その演奏をいつも聞いていますし、以前に何冊か読んだことがありますので、この結びつきに興味を覚えました。漱石もまだじっくり読んだことがありませんので、読みながらこの関係を私なりに見ることができればと思っております。俳句をご紹介いただき、ありがとうございます。これから楽しみ、苦しみながらフランス語にできればよいのですが、、、
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グールド (冬月)
2007-02-22 21:25:15
■ミコ様、paul-ailleurs様

グールドと漱石の結びつき、意外だったようですね。ぼくとしても、紹介させていただいた意味があったというものです。

初めて知ったのは、数年前の朝日新聞の日曜版だったと思いますが、松岡正剛さんのページがコンパクトにまとめられています。

http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0980.html

わたしの「冬月」をクリックしても、当該ページに行けます。グールドは英訳版で触れたようですね。ぼくも、英訳版というのに興味を持ちました。

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冬月様 (paul-ailleurs)
2007-02-22 22:35:33
グールド・漱石についての記事ありがとうございます。グールドが語ったといわれる
 
「『草枕』はさまざまな要素を含んでいますが、とくに思索と行動、無関心と義理、西洋と東洋の価値観の対立、モダニズムの孕む危険を扱っています。これは二十世紀の小説の最高傑作のひとつだと、私は思います」

という言葉の中にある対比、思索と行動、西洋と東洋、モダニズムに孕む危険などはここでも興味を持っているところですので、この面からもグールドを見てみたいと思いが出てきています。


 木瓜(ぼけ)咲くや漱石拙を守るべく

  le cognassier du Japon fleurissant
   Sôseki garde son mode de vie
    simple et honnête

(http://fr.wikipedia.org/wiki/Cognassier_du_Japon)


 月に行く漱石妻を忘れたり

  admirant la lune
   Sôseki a oublié
    sa femme


 叩かれて昼の蚊を吐く木魚かな

  étant frappé
   vomit des moustiques
    le bloc en bois de poisson*

  *木魚 mokugyo : un instrument à
   percussion utilisé dans un rituel
   bouddhiste
  (http://en.wikipedia.org/wiki/Mokugyo)

   (Sôseki; traduit par paul-ailleurs)

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漱石仏訳 (冬月)
2007-02-22 23:33:34
■面白いですね。フランス人が読んで、何を感じたか、たずねてみたくなります。2句目など、やっぱりフランス人も笑うんでしょうね。それとも、考え込むかな。

松岡さんも言ってますが、グールドも俳句を知っていれば、夢中になったかもしれませんね。
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グールド (ミコ)
2007-02-22 23:42:02

  冬月さん

グールドと漱石などに関する情報有難うございました。「草枕変奏曲」の書も知りませんでしたし、映画「砂の女」を100回も観た話も初めてでした。「砂の女」は映画化の前に林光作曲、千田是也の演出で大阪労音がミュージカル制作をしていますが、スタッフで1度もグールドは話題になりませんでしたね。驚きました。

彼がライヴを止めてからの晩年に、来日公演もう一歩までいったことをご存じですか?ホロヴィッツ(2回)やカラヤンとベルリンフィルなどさまざま招聘した梶本尚靖氏が、一番招聘に情熱を燃やしていたのが、グールドだったのです。「ミコさん、絶対にやるからね。これは僕の天命やからね」と言い何回も接触し、実現しそうな時に突然の訃報だったのです。

グールドの個性は全くオンリーワンだったと思いますが、なにぶんライヴに接しておらず、ピアノでの来日最高はミケランジェリだったと思います。自分のピアノを持ち込んでの演奏でしたし。リヒテルと言う人も多いのですが、リヒテルは何度も来てくれましたしね。

今日もいい気分で終わります。有難うございました。
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冬月様 (paul-ailleurs)
2007-02-23 06:44:09
私もフランスの俳人の意見を聞いてみたいものだと常々思っております。面白い展開があるような気もしていますが、、、

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