フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

エルンスト・マイヤー ERNST MAYR

2007-04-27 23:03:24 | 科学、宗教+

先日コピーしておいたこの方の科学における原因と結果についての1961年の論文にザーッと目を通す。その中に生物学を大きく機能生物学 functional biology と進化生物学 evolutionary biology に分けて、前者は生物学的現象がどのように起こっているのか (how?) を問うもので、後者は why? を考えるものというところがでてくる。この二つの疑問については以前にも触れているので、この方を近くに感じる。最近、どうも how という問を発するだけでは満足できなくなっているようだ。このあたりの問題についてもう少し考えてみたいという思いが湧いている。

エルンスト・マイヤー Ernst Mayr (July 5, 1904, Kempten, Germany – February 3, 2005, Bedford, MA, USA)

ご覧のように100歳で亡くなっているが、その1年前に本を出しており、最後まで活力を失わなかった人である。例えば、彼は生涯に25冊の本を出しているが、そのうち14冊は65歳以降のものであり、70歳でハーバード大学を定年になった後に200編の論文を発表している。「20世紀のダーウィン」、「最も著名な進化生物学者」、「歴史上の偉大な科学者100人の一人」 などと形容されていたらしい。ドイツのグライフスヴァルト大学医学部に入るも昆虫学への思い断ちがたく転向。ベルリン大学で16ヶ月で動物学博士となり、博物館に勤める。21歳の時である。「遠く」 に興味があったようだが、すぐにニューギニアへの探検に誘われ、これがその後の人生を決める出来事となる。

これからたびたびこの方の考え方に触れる機会があると思われる。しかしその道のりを眺めるだけで壮観だろう。私の理想の一人になってくるのかもしれない。

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6 コメント

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how ,why (Nao)
2007-04-28 10:06:39
how,why の疑問で思い出したこと、を書かせていただきます。「結婚式を目前にして、最愛のひとが交通事故で死んでしまつた人がいる。この人は「なぜ」とたずねるに違いない。これにたいして、「頭部外傷により・・云々」と医者はこたえるであろう。この答えは間違つてはいない。なぜ、この正しい答えが、このひとを満足させないのか。それは、この「Why」という問いを「いかに」(How)の問いに変えて答えをだしたからである。医者はHow did he die?(どのように死んだのか)について述べたのである。ここに私は、ヘルムホルツの有名な言葉、「物理学はWhyの学問ではなく、Howの学問である」を思い出す。雨はなぜふるのか、風はなぜおこるのか、という問いについて、思弁しようとするのをやめ、雨はいかにふり、風はいかに吹くか、その現象を適格に記述しようとの態度によつて、近代の物理学は発展してきた。極言すれば、WhyをHowにかえることによつて、自然科学は今日の発展をとげてきた。・・しかし、この輝かしい理論体系はわれわれの患者の「あのひとはなぜ死んだか」という素朴なWhyにはなんらの解答をも与えてくれない。じつのところ、心理療法家とはこの素朴にして困難なWhyの前にたつことを余儀なくされた人間である」(河合隼雄「ユング心理学入門」、2-3p倍風館)
数学者の河合氏が悩み通して、最初にたどりついたWhyへの道がこの本の最初にかかれています。すでにご存知でしたら、失礼ですが。Howの思考に熟達されて、Whyの道をお考えくださるポールさまの行方は私には興味深々です。
難しい本を考えながら読む。この喜びをお伝え頂きありがとうございました。こころが晴れました。なおこの本は難しいことを、見事な表現で読みやすくつくられていて、驚きです。S42年にでていますが、少しも色あせておりません。


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古くて新しい・・・ (paul-ailleurs)
2007-04-28 21:24:07
河合氏の辿った道は私の道とも重なるようにも思えます。ひょっとすると、これは昔から人がどこかで気付きとってきた道なのかもしれません。現代のお医者さんは忙しすぎて、人を癒すということをじっくり考える余裕さえないのではないかと疑っています。特に若い世代ではほとんど絶望的に見えます。これから増えるであろう年を重ねた医師にうまく働いてもらう方法を考えることも重要になるように感じています。

ご紹介いただいた本はもちろん初めてのものです。機会を見て触れてみたいと思います。ありがとうございました。

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Pourquoi? (らっこ)
2007-04-29 03:50:14
昨晩は久々の再会、とってもうれしかったです。らっこのブログ、What comes from the heart goes to the heartへのコメントも今、拝見しました。Inside the Actors Studioがお好きとは。。なにやら共通の趣味を発見したようで、これまたうれしいです。文面からすると、Paulさん、かつてアメリカにおられたようですね。らっこは昔、NYTの記者をやっていた頃、NYの本社に短期間いたことがあります。

ところで、howよりもwhy。らっこも同感です。Paulさんが哲学に、そしてフランスに惹かれるのがなぜか、なんとなく分かったような気がします。

フランスといえば、パリの大学で親友(というか、親戚みたいなもんですが)が哲学を教えています。もともと一橋で国際経済を専攻していたのに、なぜか途中から哲学(特にミッシェル・フーコ)に惹かれて渡仏し、今では大学で哲学を教えるまでになった男で、なかなかの好青年(青年とはいってもたしか40歳前後)。自宅では自分で蕎麦を打ったりする料理好きでもあります。これも何かのご縁。今度、ご紹介いたしましょうか?

ではまた次回、さくらさくらにて。。。
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お久しぶりでした (paul-ailleurs)
2007-04-29 14:07:48
あの番組は素晴らしいですね。心の底から出てくる何かが溢れていますので、見ていて参考にもなり気分もすっきりします。ところでパリで哲学を教えている友人がおられるとのこと、いずれそのような機会が出てきましたらご紹介いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。



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追伸 (Nao)
2007-04-29 16:21:09
少し訂正と補足をさせていただきます。河合氏は数学出身でしばらく、高校の数学の先生をされていましたが、後心理学に転じられましたから、数学者といういいかたは、正確ではありませんでした。
河合氏がたどり着かれたのは、現象学ですが少し独自のものがあります。その現象学は「自分の視野をできるだけ拡大することに努めつつ、自分の主体をその現象に関与させることにより、その主観と客観を通じて認められる一つの布置を、できるだけ適格に把握しようとするもの」です。
科学者がここまでたどり着いた努力を文系出身の心理臨床家はしていません。これがわが国の心理家の弱点かと、私はひそかにおもつております。えらそうなことはいえないのですが。医師が心理家をもつと上手に使えるようなくらい、力のある心理家がでることをいのらずにはおれません。医師になにもかも、背負わせるのは酷だとおもいますので。以上補足させていただきました。
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merci de vos précisions (paul-ailleurs)
2007-04-29 19:10:59
河合氏のこれまでの遍歴や心理学、あるいは心理学と医学の接点についてはよくわかりませんので、これから機会を見て少しずつ触れることができればと思っています。医学が豊かになるためには(特に本来の目的である人を癒すという面において)いろいろな領域の参加が必要になるだろうということは感じることができます。今の段階ではあくまでも感じですが、、

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