先日コピーしておいたこの方の科学における原因と結果についての1961年の論文にザーッと目を通す。その中に生物学を大きく機能生物学 functional biology と進化生物学 evolutionary biology に分けて、前者は生物学的現象がどのように起こっているのか (how?) を問うもので、後者は why? を考えるものというところがでてくる。この二つの疑問については以前にも触れているので、この方を近くに感じる。最近、どうも how という問を発するだけでは満足できなくなっているようだ。このあたりの問題についてもう少し考えてみたいという思いが湧いている。
エルンスト・マイヤー Ernst Mayr (July 5, 1904, Kempten, Germany – February 3, 2005, Bedford, MA, USA)
ご覧のように100歳で亡くなっているが、その1年前に本を出しており、最後まで活力を失わなかった人である。例えば、彼は生涯に25冊の本を出しているが、そのうち14冊は65歳以降のものであり、70歳でハーバード大学を定年になった後に200編の論文を発表している。「20世紀のダーウィン」、「最も著名な進化生物学者」、「歴史上の偉大な科学者100人の一人」 などと形容されていたらしい。ドイツのグライフスヴァルト大学医学部に入るも昆虫学への思い断ちがたく転向。ベルリン大学で16ヶ月で動物学博士となり、博物館に勤める。21歳の時である。「遠く」 に興味があったようだが、すぐにニューギニアへの探検に誘われ、これがその後の人生を決める出来事となる。
これからたびたびこの方の考え方に触れる機会があると思われる。しかしその道のりを眺めるだけで壮観だろう。私の理想の一人になってくるのかもしれない。
数学者の河合氏が悩み通して、最初にたどりついたWhyへの道がこの本の最初にかかれています。すでにご存知でしたら、失礼ですが。Howの思考に熟達されて、Whyの道をお考えくださるポールさまの行方は私には興味深々です。
難しい本を考えながら読む。この喜びをお伝え頂きありがとうございました。こころが晴れました。なおこの本は難しいことを、見事な表現で読みやすくつくられていて、驚きです。S42年にでていますが、少しも色あせておりません。
ご紹介いただいた本はもちろん初めてのものです。機会を見て触れてみたいと思います。ありがとうございました。
ところで、howよりもwhy。らっこも同感です。Paulさんが哲学に、そしてフランスに惹かれるのがなぜか、なんとなく分かったような気がします。
フランスといえば、パリの大学で親友(というか、親戚みたいなもんですが)が哲学を教えています。もともと一橋で国際経済を専攻していたのに、なぜか途中から哲学(特にミッシェル・フーコ)に惹かれて渡仏し、今では大学で哲学を教えるまでになった男で、なかなかの好青年(青年とはいってもたしか40歳前後)。自宅では自分で蕎麦を打ったりする料理好きでもあります。これも何かのご縁。今度、ご紹介いたしましょうか?
ではまた次回、さくらさくらにて。。。
河合氏がたどり着かれたのは、現象学ですが少し独自のものがあります。その現象学は「自分の視野をできるだけ拡大することに努めつつ、自分の主体をその現象に関与させることにより、その主観と客観を通じて認められる一つの布置を、できるだけ適格に把握しようとするもの」です。
科学者がここまでたどり着いた努力を文系出身の心理臨床家はしていません。これがわが国の心理家の弱点かと、私はひそかにおもつております。えらそうなことはいえないのですが。医師が心理家をもつと上手に使えるようなくらい、力のある心理家がでることをいのらずにはおれません。医師になにもかも、背負わせるのは酷だとおもいますので。以上補足させていただきました。