フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

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ルクセンブルグ美術館 - MATISSE: UNE SECONDE VIE

2005-06-27 22:40:54 | 展覧会

昨日の午後、嵐が去った後ゆっくりとマティス展 « Matisse: une seconde vie » を見に Musée du Luxembourg へ出かけた。昨年東京の展覧会で見ているので2度目になる。5時前に着き、約1時間。今回は、コンパクトにまとまった、焦点の絞られた展覧会であった。

Henri Matisse (1869-1954)

会場に入ると、まず André Rouveyre (1879-1962; le desinateur satirique et écrivain) なる人物が紹介される。第一次世界大戦後、作家を始めたが、世間的な成功は全く得られず、次第に引きこもるようになる (R. amorse une carrière de romancier, qui n'est manquée d'aucun succès populaire. Il se retire progressivement de toute vie sociale.)。いくつか小説は残しているらしい。彼の存命中にマティスから貰った手紙をコペンハーゲンの王立図書館に保存のために寄贈している(R. offre, de son vivant, les lettres reçus de Matisse à la Bibliothèque royale de Copenhague pour en assurer la conservation.)。その内容は、Flammarion から出版されている。

ニースに住んでいたマティスは、第二次大戦中、文化的孤立を深め苦しんでいた (M. a certainement soufert, pendant la guerre, de son isolement culturel.)。その中で、彼は自分の進行中の仕事、研究成果、喜び、絶望、消えない疑いなどを R. に打ち分けて(se confier)いた。実際、ほとんど毎日のように、時には一日に数回も(quasiment quotidiennement, voire parfois plusiers fois par jour) R. に手紙を書いており、その数 1,200通くらいになる。それが彼の精神的安定にきわめて重要であったという背景があるようだ。1941年から彼が亡くなる54年までの作品に絞って展示されていた。

この時期、同じテーマをしつこく描いている。木、植物、TABAC ROYALE の文字が入った花瓶、女性、人物像(R. をはじめとして)など。個人的には、ペンで描かれた人物像の伸びやかさが気に入った。R. の肖像は炭で描かれていることが多く、一筋縄ではいかない複雑な人間 R. とその人生を現わすにはペンでは物足りなかったのだろうなどと考えていた。それから絵の具を塗った絵を切り、それを貼ったような絵 (gouache découpée) が多数。JAZZ シリーズ (6月18日のブログに使った絵の本物があった)。La Chapelle de Vence のために黒絵の具(墨のような印象)だけで描かれた習作、Saint Dominique も相当な大作。1950年の2 x 3 m くらいある Zulma や 3 x 8 m は優にあると思われる La Perruche et la Sirène (1952-3年作とされる) も強い印象を残した。

出口の前の壁には、R. に宛てた最後の手紙 (1954年9月19日) が紹介されていた。

「私には不平不満はない。何かうまくいかないことがあれば、満足のいく面を探すようにしている。人はいろいろ考えるだろうが、自分は幸運な人生を送ってきた (J'étais chanceux toute ma vie.)。心配事がなければ退屈してしまう。安定した家族があり、よき友があり、それ以上に何を望むと言うのか (Que peut-on souhaiter de plus.)。もう少し働くが、これまでの訓練のお陰で仕事の質が下がることはないだろう。しかし、謙虚でなければ (Mais il faut être modeste.)。忘れていたが、最近 4 x 3 m の La Gerbe を完成し、Salon de Mai で見ることができるだろう。...」

1953年作を示す HM53 のサインのある La Gerbe は忘れられない作品になりそうだ。

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会場を出た後、ルクセンブルグ公園を散策。先日見た「国境なき記者団のための写真展」が公園の柵の内側にも展示していたので目を通す。遠くから野外演奏会のオーケストラの響きが聞こえるので近寄ってみると、La Sirène de Paris というアマチュアの楽団であった。演奏を終えた trompettiste と言葉を交わす。3時くらいから1時間ずつ4団体が演奏していたらしい。元気のよいその若者は、次は9月に演奏会をやるので是非聞きに来てほしいと言っていた。

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1 コメント

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Unknown (Julia)
2005-08-09 00:57:51
私のマティスの記事へTBして頂きまして、

ありがとうございます。すごく嬉しかったです!



マティスがこのように苦しんでいたとは・・

そしてR氏へその胸の内を打ち明けるために

何千通ものお手紙を書いていたのですね!



「私には不平不満はない。何かうまくいかないことがあれば、満足のいく面を探すようにしている。」

 この言葉、すごくいいですね!

 マティスの明るい絵からいつも元気を頂いています!



 こちらもTBさせて頂きます。
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