フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

五十、六十鼻垂れ小僧 - 「独特老人」 NE COMMENCE PAS ENCORE

2005-12-11 00:48:07 | 年齢とヴィヴァシテ

「五十、六十鼻垂れ小僧」と昔聞いた時、何を仰っているのか、ご老人の戯言くらいに思っていた。しかしどうだろう。自分がその領域に入ってくると、まだ何も始まっていないことに気付く。もちろん、すでにやりつくしたと考えている方もおられるだろう。私の場合はとてもそのような心境には至っていない。これまでが何か準備期間のように思えてきてしようがない。錯覚でないことを願うが、。

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夜、ある本を探すために本棚を覗いていたら 「独特老人」 なる3年ほど前に買った本が出てきた。ページを開いたところ何という偶然だろうか、「植田正治」 の名前と顔写真が出てきた。この人がインタビューされていたのだ。買った当時は気にもかけていなかった。少し読んでみると、アマチュア写真家の批判を繰り返している。景色やお祭りなどばかり撮っていないで、もっと勉強しろと言っている。

こういう偶然なので他のところも少し読んでみた。「堀田善衛」の中には次の言葉が。

「徳川時代には字の読めない人というのが非常に少なかった。今でもそうだと思いますけど、徳川時代からね、日本の識字率ってのが世界一だったろうと思いますよ。...
 ところが、二十世紀の近代戦争においては、やっぱり日本の軍人たちというものが実に無教養だった。それこそ江戸時代の知的水準とかさ、それ以前の知的水準なんかよりもずーっと低かったでしょう。とにかくあの知的水準の低さっていうものは、それは日本の歴史の中でも驚くべき低さですよ。」

彼は7年ほどバルセロナに住んでいたが、不思議なつながりを感じるこんな記述がでてくる。

「日本人が亡命できるか? できないことは全然ないよ。でも、僕はしないよ(笑)。...それからたとえば、バルセロナで僕の家の近所に住んでいたのが、バルガス=リョサって言ったかな、ペルーかどっかの作家ですね。いろんな南米の作家たちが家持ってました。」

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この本、30人ほどの老人へのインタビューからなる。その序文は次のように始まる。

「人の魅力とは何だろうか? 今の世の中のように、社会に飼いならされながら歳をとっても、それはその人を少しも魅力的にしない。」

その後に線がついているところがある。

「人が正しく生きるとは、年齢を重ねるにしたがって、解放されてゆくことだと思う。当たり前にこわいものがなくなり、よりこわい領域に入る。それは、ある意味では、人から逸脱してゆくことになる。かつて江戸の文人は『奇なくして趣なし』と言ったが、人の魅力とは、『奇』であり、言いかえればその人を突き動かす『妄想』である。妄想なくして魅力なし。」

「独特とは、円満な境地の中に現れない。むしろ『奇』『狂』『偏』の中にこそ現れる。したがって彼らは皆『野』の人である。通俗的な『権威』『名声』とは無縁、それを超えている。たとえ評価を得たとしても、結果に過ぎず、すぐさま破り捨ててしまう。手がつけられないのである。」

他にも面白そうな話が満載の趣。ゆっくりと噛みながら味わってみたい。

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4 コメント

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Unknown (さなえ)
2005-12-11 11:46:45
こんにちは。『妄想』だけは沢山あります。歳も十分すぎるほど重ねています。あとは魅力が自ずから花開いてくれるのを待つだけ…ですけど。

どのように自分に始末をつけるのか、それが目下のところ大きな問題です。
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Unknown (paul-ailleurs)
2005-12-11 17:07:17
妄想を抑えずに羽ばたかせることができるようになるのが、これからではないかと思っているところです。『奇』『狂』『偏』の出番が待っているということかもしれません。その意味では面白い時間になるのでしょうか。コメントありがとうございました。

返信する
はじめまして (いづみ)
2005-12-13 01:03:55
こんばんわ。

はじめまして。

毎日こちらにお邪魔するのが

最近の日課となっています。



本日のエントリーをきっかけに

購入しました。

「独特老人」他、同じ著書の本1冊。



近すぎてよく見えない今の自分を省みつつ、

老人と呼んでいいものか、

熟した大人達?の言葉を

追い掛けてみたいと思っております。

明日には届く予定です。

なんとも待ち遠しい。



おもしろそうな本の紹介、

ありがとうございました。







返信する
訪問ありがとうございます (paul-ailleurs)
2005-12-13 22:55:33
妄言、独断溢れるブログを訪ねていただきありがとうございます。「独特老人」のような本は若い時には味わえないもののような気がします。時間とともに自分に重ねることができることが増えるというのは、増えてくる不自由を補うに十分な至福をもたらしてくれるようです。味わっていきたいと思っています。これからもよろしくお願いいたします。
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