松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆熟議の市長選挙⑫ 穂積市長はなぜ提案したのか(2)(三浦半島)

2017-07-14 | 1.研究活動
 公開政策討論会は前回の選挙でも提案している。概要をまとめると、次のような経過をたどっている。

【前回の提案】
1.前回の市長選挙(2013年11月)の出馬表明(2013年3月)
穂積市長が公開討論会の構想を出す

① しかるべき時期に立候補予定者がそろって共同記者会見を行い、その様子については一部始終を動画配信する。
② 告示前に行われるであろう候補者討論会の開催に協力し、積極的に参加する。
③ 告示後は、合同の演説会を行う。

2.公開対話の提案(2013年07月12日)
 穂積市長から山本さんに、ウエブサイト上での往復書簡方式の公開対話を提案。

 どなたか信頼できる第3者にそのためのサイトを開設いただき、そこに貴殿と私とが順番に書き込みを送り、そこに誰でもがアクセスできるようにしておけば、より多くの市民が何を議論しているのかを明瞭に理解できるようになると思うのです。

 たとえば貴殿がブログに述べておられるような現市長批判とご自分の主張を述べたら、私がそれに対する反論や質疑、あるいは自己の考えを述べる、それに対してさらに貴殿が述べる、こんな繰り返しを一方的な主張だけでなく対話形式で行っていけば、市長選挙の真の「争点」もより鮮明になっていくでしょうし、また市政発展の諸課題についてもより深められた検討が可能になるでしょう。

3.山本さんのブログ(2013年7月13日)
 「往復書簡方式」などでなくとも、私の意見を自身のブログに貼り付け、そこに自分の意見を加えればいい。

・選挙は、候補者と有権者との対話で進めるもので、候補者の意見の是非は、選挙の結果が全てを語ると心得ます。
・ブログは、意見を発信するためのものである。違う意見であるなら自身のブログで発信すればよい。「往復書簡方式」などでなくとも、私の意見を自身のブログに貼り付け、そこに自分の意見を加えればいい。私も新聞やヒアリングした内容を書き、そこに自分の意見を書き足している。
・なお、私は市長選の挑戦者として、今や毎日分刻みで、健康維持のぎりぎりの睡眠時間で市内各所を走り回っています。その中で、このブログも自分自身で書いていますので、その上、新たなネット書き込みする暇などありません。

4.山本さんのブログを受けて、穂積さんのブログ(2013年7月13日)
 名前を売り込むことにエネルギーの大半を使う選挙を続けていたら、民主政治そのものが劣化せざるを得ない

 私はこれまで自分の選挙を4回やってきたが、在野の1住民として現職の方に挑む戦いも、また現職が辞任された後を新人同士で争う戦いも経験した。
 そこで明確に学んだことは、公職を争う選挙戦にひとたび正式に立候補の名乗りを上げたならば、その瞬間から市井の一私人とは違った責任を負わなければならない、ということだ。

 私は選挙戦で票を争うすべての「対立候補者」を、民主主義のために戦う戦友とみなしている。それぞれの立場、利害は真っ向対立しているものの、大きな目でみれば、互いが切磋琢磨しあい、有権者に意味ある選択肢を示し、選挙という民主政治の一番大切な土台を守り、互いで盛り上げていく役目を分け合った、そんな「チーム民主選挙」の一員同士だと思っている。

 そして今のような自陣営を囲い込むことや、名前を売り込むことにエネルギーの大半を使う選挙を続けていたら、民主政治そのものが劣化せざるを得ないのではないか、との危惧をもっている。

5.山本拓哉さんからの回答(2013年7月25日付)
 貴殿の要求には応じることができません

 貴殿より平成25年7月9日付け内容証明郵便を受け取りました。内容を拝見し、ウエブ上での書簡の交換を私にするよう要求されていると理解しました。
 本件につきまして山本たくや後援会と協議しました結果、ご意向に添え兼ねるものと決しました。
 よって、貴殿の要求には応じることができませんので、その旨ご回答します。

6.穂積さんから「個人演説会」合同開催の提案と申し入れ(2013年 9 月 23 日)
 告示後の「個人演説会」を合同開催の提案

・有権者が候補者の政策や主張をじっくりと聞き比べながらその選択を決することができるよう、われわれ候補(予定)者もより多くの努力を払わなければならないと思っています。
・そこで告示後の「個人演説会」を合同開催して、その任にこたえていきたいと考え、貴殿の賛同を得たいと願うところであります。
・もちろんそれぞれに独自の選挙活動がありますので、選挙日程の多くをここに割くわけにはいかないでしょうから、告示後少なくとも 1 会場、可能ならば新城、鳳来、作手各 1 会場の 3 会場で開催することをご提案いたします。

7.個人演説会合同開催提案に対する山本拓哉さんからの回答(2013年10月09日)
 貴殿からの提案を受け入れる余裕がありません

 貴殿より平成25年9月23日付け「個人演説会」合同開催の、提案と申し入れ書を受け取りました。
 私は、日夜支持を得るために活動しておりましてどうしても貴殿からの提案を受け入れる余裕がありませんので提案に添えることができません。宜しくお願い致します。

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 私は、次のようなブログを書いている。2013年3月26日付 

 新城が面白い。新城市は、奥三河の人口5万人を切る小さな町である。このまちで、さまざまな自治の新しい取り組みが試みられている。

 久しぶりに、穂積新城市長さんのブログを見ると、興味深い提案がされている。「市民参加の市長選、熟議の市長選」である。

 穂積さんの提案は、要するに市長選挙も、市民参加型、熟議型にしようというものである。
 穂積さんの体験によると、選挙というのは、仲間を固め、それをヒートアップすればするほど、強い選挙になるらしい。その結果、一般の(多くの)市民は埒外に置かれ、それがシラケの原因になっていく。要するに、市民は、投票という参加権があるが、実際は、埒外に置かれ、その結果よく分からずに、イメージやムードで投票を決めたり、あるいは投票に行かないことになる。今回の提案は、市長を選ぶという参加(投票権)をより実質的にしようということなのだろう。

 考えてみれば、ここ30年の間に、さまざまな分野で市民参加が試みられてきた。大きな方向性は、形式参加から実質参加である。形だけの参加を乗り越えて、熟議の市民参加に変えようということである。はじめは、行政への市民参加から始まったが、それが議会への参加に広がり、今回は、市長選挙への参加へと広げていこうということだろう。

 市長選を熟議の市民参加にする方法は、いろいろあるだろう。すでに行政や議会において、情報公開とセットで、市民参加の実質化の試みが行われてきた。ヒントはいくらでもある。選挙は、法の縛りが強いが、知恵を絞れば、熟議の市長選を実現する方法はあるだろう。

 新城市の市長選挙は、今のところ、穂積さんと山本拓哉さんが出るらしい。山本さんは、自治基本条例の市民会議でもご一緒したが、真面目で誠実な方である。

 穂積さんも山本さんも、それぞれ得意分野があって、この熟議の市長選の制度設計如何によっては、有利不利があろうかもしれない。また、それぞれ、相手側の提案に乗るというのは、後塵を拝するようで面白くないという意見もでるのかもしれない。しかし、そうした小異は、ほどよい決着点もあるはずだし、知恵を出して乗り越えてほしい。

 大事なのは、新城から、自治の新しい試みを発信することである。知恵を出し合って、自治の新たな仕組みの提案ができれば、新城の名はさらに全国に知られることになる。だから制度設計のときから、どんどん全国発信することが肝要である。発信しているのは、自治の新たな試みというハイブローなものである。

 これで新城のブランド力がさらに高まれば、新城の市民もさらに自信を持つことができるだろう。幸い、この方法は、頭で勝負でお金はかからない。人口5万人のまちが、生き残るには、ひとつ、ひとつのチャンスを活かすしかないだろう。幸い、今回は、こうしたことがよく分かっているお二人が名乗りを上げている。まちを元気にするという観点から、知恵を絞ってほしい。

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 熟議の選挙は、地方政治を住民に取り戻すチャンスである。同時に、新城のまちを元気にする絶好のチャンスである。チャンスはそうはやってこない。こんなチャンスにのらないという手はないだろう。
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