
既存の就労支援センターでは対応が難しかった働きづらさを抱える人をどう支援するのか、引き続き、検討が必要です。
本日、西日本新聞に掲載されました。(考案 大塚)
次に、働きづらさを抱える人への就労支援として、日本財団の助成を活用して実施している「福岡県ワークダイバーシティモデル事業」についてお尋ねします。
県民の誰もが住み慣れた地域で働くことができる地域社会づくりに取り組むことは県の責務です。
県では、若者や、女性、中高年、高齢者、障がいのある方などを対象に年代別・対象別に就職支援センターを設置し、相談者一人ひとりの状況に寄り添った就労支援を実施しているところです。
しかしながら、近年、就労していない障がいのある人や、ひきこもり、がん患者、難病患者、刑余者、LGBTQ、生活困窮者など、働きづらさを抱える人が多様化しており、それぞれが抱える働きづらさの要因も複雑化する中で、生活困窮者自立支援制度などの既存の制度にもとづいて設置している自治体の相談窓口等では対応が難しい事例も見受けられると聞いています。
2018年に日本財団が行った調査によると、働きづらさを抱える人は全国で延べ1,500万人と想定され、このうち既に働いている人や、働きづらさの要因が重複している人を整理すると、実数は約600万人と推計されています。
これは国民の約20人に1人が働きづらさを抱えている計算となり、福岡県の生産年齢人口に当てはめた場合、働きづらさを抱えた、いわゆる就労困難者は約14万人いると見込まれることになります。
一方、人口減少や少子高齢化により、今後も生産年齢人口の減少が見込まれるなか、こうした就労困難者の就労支援を行うことは、労働力不足の解消につながるとともに、就労によって、支えられる側から社会を支える側に変わることは、当事者の自己肯定感につながり、地域での共生社会の実現を図る上で必要な要素とも言えます。
そうした課題を背景として、県は、日本財団が企画するワークダイバーシティプロジェクトに賛同し、令和4年度から、福岡県就労支援協同組合を事業の実施主体として、日本財団が8割・県が2割の助成のもと、社会実証モデルである「福岡県ワークダイバーシティモデル事業」に取り組んでいます。
このモデル事業は、本来、障害者手帳等をお持ちの方が利用する障害者総合支援法に基づく就労支援事業を行う「就労移行支援事業所」において、障害者手帳等をお持ちでない方でも、就労に向けた訓練等を受け、一般就労への移行まで支援するものであり、普段から障がい者と接することで、それぞれの特性を見極める能力が高い方が支援を行うことなどから、多様な働きづらさを抱える人の就労支援として非常に有意義な取組みの一つであり、実際に、20年間ひきこもり生活保護を受けていた50代の方が、支援を受ける中、一般就労に結びついた事例など、現在、モデル事業の実証結果などを踏まえ、日本財団の有識者会議である「ワークダイバーシティ政策実現会議」において、国の制度化に向けた提言案を検討中であると聞いています。
そこで知事にお尋ねします。
① まず、本県では、働きづらさを抱える人をどのようにモデル事業の支援につないできたのか、お伺いします。
② 次に、国の制度化の後押しともなる、本県におけるモデル事業の成果についてお伺いします。
障がい者の短時間雇用について
次に、障がい者の短時間雇用についてお尋ねします。
令和4年9月議会の一般質問において、我が会派の大塚勝利議員が、障がい者の短時間雇用について、障がい者雇用率制度の算定対象に加える国の法改正の動きに触れ、知事は、この法改正の動きは、「就労機会の拡大に資する」との答弁をされています。
令和4年12月に障害者総合支援法の一部改正法が公布され、障がい者法定雇用率制度の見直しについては、これまで週20時間以上働ける障がい者に限定されていましたが、令和6年4月から、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の、いわゆる短時間雇用の、精神障がい者や重度の身体障がい者及び重度の知的障がい者について、障がい者雇用率の算定対象となっているところです。
そこで知事にお尋ねします。
令和6年4月から障がい者雇用率制度が見直され、障がい者の短時間雇用が障がい者法定雇用率の算定対象となっていますが、県ではどのような対応をされているのかお伺いします。
【知事答弁骨子】
問 働きづらさを抱える人をワークダイバーシティモデル事業の支援に繋げる
ための取組について
○ 県では、ニート、ひきこもり、難病患者等働きづらさを抱える人の働く場を
創出し、社会からの孤立や貧困といった課題の解決を図るため、「ワークダイバーシティモデル事業」による就労支援に取り組んでいる。
この事業の実施に当たっては、県だよりやLINE、✕などの各種広報媒体を活用
して広く周知するとともに、県や市の生活困窮者自立相談支援機関、ひきこもり
地域支援センター、ハローワークなど、日頃から県民の方々の相談に対応
している関係機関からこの事業の利用が効果的と見込まれる方を紹介いただく
ことで、支援に繋げてきたところである。
問 モデル事業の成果について
○ この事業では、普段から障がいのある方と接している就労移行支援事業所が、
利用者お一人おひとりの特性や体調等に合わせ、
・訓練メニューの提供や訓練日時の設定
・生活リズムの改善や対人スキル向上の支援
・適性に合った職場探し
など、そのノウハウを活かしたきめ細かな就労支援を行っている。
○ 事業を開始した令和4年9月から今年10月までにモデル事業による支援
を受けた方は73名であり、このうち、一般企業に就職した方が14名、就労系
障がい福祉サービス事業所に繋がった方が14名となっている。
また、継続して支援を受けている方が36名、自己都合により支援を終了し
た方が9名おられる。
○ これまで、既存の支援制度で対応が困難であった方を、このモデル事業により
受け入れ支援できたこと、就労移行支援事業所を活用した支援により、一般
企業への就職や障がい福祉サービス事業所に繋がったことは、このモデル事業
の大きな成果であると考えている。
問 障がい者の短時間雇用について
○ 県では、障がい者雇用率制度の見直しにより、週の労働時間が10時間以上
20時間未満の短時間雇用についても、雇用率の算定対象となったことを受け、
今年度から、障がい者雇用に精通した求人開拓員による、短時間求人の掘り起こしに取り組んでいる。
求人開拓員が県内企業を訪問し、業務内容を聞き取り、細分化し、切り出す
ことにより、今年10月までに207件、384人分の短時間求人を開拓して
いる。
○ また、外出困難な重度の障がいのある方の短時間就労の可能性を探るため、
分身ロボット「オリヒメ」を活用した就労実証に取り組んでいる。
今年9月から先月までは、JR九州のご協力のもと、JR吉塚駅のみどりの
窓口において実施し、今月20日には、私も現地での実証に参加を予定している
が、今月から来年2月まで、西鉄グループ会社のご協力のもと、マリンワー
ルド海の中道のレストランにおいて館内の案内業務の就労実証を実施する。
○ このような新たな取組にも積極的にチャレンジし、障がいのある方の働きた
いという希望を一人でも多く実現できるよう、引き続き、きめ細かに支援を行ってまいる。
(要望)
働きづらさを抱える人への就労支援について、知事に要望です。
知事からモデル事業の成果について答弁いただきましたが、日本財団からの助成は令和7年3月末に終了すると聞いています。ある就労移行支援事務所の所長は、「同事業は大変に有効であり、継続すべきであるが、今後どうなるのか?」と懸念する声が寄せられています。現在、就労支援中の方もいます。来年4月以降の支援をどうするのか早急に検討するよう要望します。
また、日本財団は3年間の実証を経て、国に対して制度化の提案をされるようですが、実際に制度化されるのかどうかわかりません。県として実証結果を検証され、何らかの形で働きづらさを抱える人への支援が継続できるよう強く要望し、公明党の代表質問を終わります。ご清聴、ありがとうございました。