わしには,センス・オブ・ワンダーがないのか?

翻訳もののSF短編を主に,あらすじや感想など、気ままにぼちぼちと書き連ねています。

リプレイ~ケン・グリムウッド

2008-09-29 00:45:11 | 海外SF長編
 最近?のタイムトラベルものでも出色ものとの評判により買っておいたものですがずっと積読状態で,先ほど一気読みいたしましたところであります。

 裏表紙のあらすじを読むと,何か甘そうな雰囲気がいたしましてちょっと敬遠していた節もあるのですが,いやいや,それなりにほろ苦くも前向きないいストーリーでございました。

 1988年に心臓麻痺で死亡した主人公は,目覚めるとそこは25年前であることに気づきます。記憶を有したまま過去へと戻った主人公は,やり直しの人生に挑もうとし,元とは異なる一生を送りますが,やはり1988年に死亡,25年前の世界へと連れ去られてしまいます。そしてまた…。

 救いかそうでないか,主人公は,やり直しの人生の複数回を含めて,すべての記憶を有しています。また,同じ境遇にいるパメラという女性と知り合い,何回かのリプレイを通じて,二人は互いにかけがえのない存在となっていきます。

 ここいらへんのアイデアは,まことにおなじみのものでありまして,本ブログでの短編で言えば,マッキントッシュの「第10時ラウンド」,バズビイの「ここがウィネトカならきみはジュディ」,そしてソムトウ・スチャリトクルの「しばし天の祝福より遠ざかり」(ほぼアイデア同一!)なんかが思い浮かぶところであります。

 この怪現象の理由は明らかにされません(謎の宇宙人説に行ってしまうのではと危惧したところは,無事回避されます。くわばらくわばら)が,だんだんリプレイの期間が短くなっていくところがミソであります。

 様々な蓋然性の人生を繰り返し,よりよい「過去」を求める主人公ですが,報われない挫折感が広がり,修復するチャンスの期間も少なくなる,クライマックスに向けての展開に読み手も引き込まれてしまいますなあ。

 さてさて,いくらこねくり回しても,過去はやっぱり振り返ってもしょうがない,やはり未来にこそ意味はあるのだというラストは,ごもっともでございまして,それを体感するための艱難辛苦であったのであれば,無駄ではなかったということでございましょうか。本当に主人公も(はたの者も)ご苦労さんでありましたなあ。

 魅力的な女性が3人登場いたしますが,さて,未来の折り合いはどうつけていくのでありましょうか。みんないいもんなあ。
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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おもしろそう! (rockroll)
2008-09-29 15:28:55
なかなかおもしろそうですね!
機会があったら、読んでみたいです。
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Unknown (藍色)
2008-10-03 01:35:56
はじめまして。
こちらの記事にトラックバックさせていただきました。
短くなっていくところがスリリングでしたね。

トラックバックなどいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
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興味をそそられますね。 (名づけ オヤジ)
2008-10-04 17:51:53
はじめまして。
とても興味深いストーリーですね。
輪廻転生を感じますが。
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Unknown (おおぎょるたこ)
2008-10-06 23:24:02
rockrollさん,はじめまして。
過去に戻った主人公が金儲けをするのが,結果のわかっている博打というのも,一抹の虚しさを感じてよろしいです。バック・トゥー・ザ・フューチャーのビフみたいなもんですな。
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Unknown (おおぎょるたこ)
2008-10-06 23:27:52
藍色さん,はじめまして。
確かに,さかのぼりが短くなるところが,クライマックスへの助走というところですね。
そこが書き尽くされたタイムトラベルものの新機軸かもしれません。
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Unknown (おおぎょるたこ)
2008-10-06 23:29:28
名づけおやじさん,はじめまして。
輪廻転生で現世に悟りをひらいたとなれば,仏の道に通じる話かもしれませんなあ。
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VAIO (VAIO遅い)
2010-07-16 09:18:27
コレは面白かったです。
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Unknown (マラソン 走り方)
2010-12-30 21:31:08
チラ見で立ち寄りました!

では!
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