one's works. my works!


one'sとは「その人の」と言う意味です。
僕らはone'sに「皆様の」と言う思いを込めました。

コイバナ最終章~10年後の君は、10年後の俺は~    (田中)

2006年09月18日 01時11分51秒 | コイバナ・・・哀愁の村に雪は降るのだ
初めてヤツと会ったのは俺が21歳でヤツが19歳の時。
美容院で働きながら通信教育で免許を取ろうと頑張ってた。
通信教育といえども一年に数回は学校に行かなければならない。

ヤツは俺の後ろの席に居た・・・・
きっついメイクに金髪、ポニーテール剃った細い眉。
「こえーよ・・・今時こんなヤンキー居んのかよ」って。
いつ後ろから刺されんのか俺、みたいな。

とにかく怖かった。
でもね、ちょっと気に掛かったトコもあったのね。
で、ワザと消しゴム忘れたフリして「消しゴム貸してくれない?」って後ろ向いたらジェームス・ディーンの筆箱!
だっしぇ~~!
もうびっくり。
イメージ通りやんか、そんなん、あんた。
しかも定規も消しゴムもジェームス・ディーンって・・・・
うぁ。

でも、普通に貸してくれました。
思ったね。
「言葉はどうやら通じるらしい」って。

そうこうするうちに学校の中で言葉を交わす機会も増えてきた。
どうやら困ってる様子。
「ヤンキーの子達から凄く誘われて困る」って。
「・・・・・・・・・・・・・」ですよ。
そりゃあ「あんたその頭とメイクじゃな」、とは怖くて言えませんでした、すいません。

ある雨の日。
帰り道俺は当時ミニに乗ってた。
電車に乗ろうと歩いてたヤツに声を掛ける。
「乗ってく?」って。
仕事その後休みだろうと思ってたからさ。
どっかこのまま連れてってやろうかなんて。

ところが「スーパーの中で入ってる美容院だから仕事だ」何て言うんですよ。
ガソリン代返せyo!
とは言えませんでした、怖くて。

何かただの足代わりとなってヤツを当時勤めてたサン○レーに送る。
何だよ電話番号も聞いてきやしない。
ふん、そんなもんか。
それが最後。

それから数年経って俺は美容院を止めてまたバンドをやってた。
でもうまくいかないんだな。
仕事も入ってこない。
随分前に世話になったプロデューサーも所在不明。
プラプラとしてたっけ。

で、どっかの初詣に連れらと行って。
そこで中学時代の友人にばったり。
女の子なんだけど美容師をしてるらしくって「田中君今何やってんの?」
「バンド・・・・みたいなモン」
「暇だったらさ、私が働いてる美容院紹介しようか?」って。
ま、三ヶ月程稼いだらまたバンドやるかぐらいの軽い気持ちで面接。

何故かオーナーにやたらと気に入られる。
「直ぐに来て欲しい」っていわれたんだけどうざかったので(その言い方が)「じゃあ一ヵ月後に」って。
もう一ヶ月遊ぼうって訳ですね。

ここまでお読みになった皆さん、お気づきかと思いますが基本的に俺は怠け者で夜の人間です。
昼日中表を歩ける様には向いてない。
そんな人間だったんです。

一ヵ月後約束をブッチしようかとも思ったのですが流石に24歳でそれはまずいかと嫌々出勤。
するとですね、その店が異様に暗い。
雰囲気が。
イキオイも全く感じられない。
バンドやってた特性上「行くぜ、オラ~~!」みたいなノリで仕事がしたかったんですね。
次の日にはもう辞表。

慌てて先生とオーナーが車飛ばしてやってきた。
「とにかくあんな暗い雰囲気の店はダメだ、合わないです」とか色々難癖付けて辞めさせてくれと。

オーナーは「せめてあと3ヶ月様子を見てくれませんか?」と
喫茶店の中で2~3時間押し問答。
根負けしました。
「じゃあ三ヶ月だけ」って。(でもそれから店の雰囲気が凄く良くなってきて結局8年働く事になる)

その店の系列店でミニに乗せたヤツが働いてたんですね。
うっかり忘れてた。
あれから3年か・・・随分変わっただろうな。
何て思ったら全く変わりなし。
むしろパワーアップしてませんか・・・その頭とメイク。

久しぶりに会ったにも関わらず結構仲良く喋ってくれた気がした・・・・
のは勘違いだったのか。

スタイリストとして入ったのですが(免許持ってたし色々コンクールで入賞してたし)一応シャンプーからチェックです。

各店の店長の頭をシャンプー。
その中にヤツが。
多分最年少のチーフか店長かだったと思う。
仕事がとにかく出来たんだよな。

こりゃ楽勝だな、だって一人は顔見知りだし。
5人ぐらい立て続けにシャンプーをして結果発表。
各店の店長が評価したチェックシートを貰う。
100点満点で平均80点以上が合格。

みんな大体100点~98点の点数を付けてくれました。
コメントも「気持ちよかったです、これからよろしく!」とか好意的なものばかり・・・
の中にあってヤツのは一味違う。
「68点」評価「気持ち悪い」

!!!!!!!!!!!

68点・・・・・は仕方がない。
しかしあんた「気持ち悪い」て。
こいつのおかげでギリ合格。
ホントなら余裕で合格。
何かみんなバツが悪そう。
それ以来ヤツは俺の中では「敵」として認識。

事ある度に衝突。
スタッフルームでだらけた姿を見ると「お前さ、それでも女かよ」「あんたの彼女でもないのにそんなん言われる筋合いない!」とか。
口で勝てないので行動に移す。

シャンプー台で後輩の練習台となっているヤツが寝てるのを良い事にお腹の肉を掴んでやった。
「なんや、これ?!」
「キャー!おっぼえとけよ~!」ってな具合。

でも、多分仲は良かった。
お互いの恋愛相談とか。
その度にお互い「よーあんたと付き合う人なんておるな、世の中であんたと二人きりになってもあんたとは絶対に付き合えんな」って。

そんな関係が6年。
そして7年目。
その頃よくアパートに女の子達が遊びに来てた。
みんなで俺の食事やら部屋の掃除やら。
その中にヤツはいた。

俺を目当て(いや、そんなもててないですがっ)で来てた子の付き添いとして・・・だったんですね、後で知る事となる。
ある日、俺の部屋でヤツが「マライア・キャリー」のビデオを発見。
「貸して」って。
それから数日後、いつもは数人で連れ立って来るのがその日ヤツはビデオを俺に返す為に一人で来た。

玄関先でビデオを返そうとする。
遠慮して部屋に入って来ない気配がバリバリ。
「なるほど、普段はみんなと一緒だから無頓着な感じで来てたんだな」って。
この時点でヤツの友人が俺に好意を抱いてくれてる事など露など知らず。

「入れよ、寒いし」
遠慮がちに入ってきた彼女に思った。
「こいつ、こんなに可愛かったっけ?」

何かいつもと雰囲気が違う。
そりゃそうだ。
だっていつも何人かで来ててはっちゃけてたから。
二人だと案外喋る事ってないな。
店の中だとバカ話しとか下ネタとかバンバン出来んのにな。
とかちょっと悩んだ。

詰まらない話ばかりしてた様な気がする。
夜はどんどん更けて行く。
テレビをぼやーっと見てたら何と彼女は俺のベッドによりかかって眠ってる。
「!」
「チャ~ンス!・・・とかじゃなくって、だってツレやし。」
しゃーねーな。
毛布かけてやるか。
それか叩き起こして帰すか。
軽く揺するが起きる気配無し。
「お泊りだな・・・」

小さいベッドだけどどうにか二人眠れるしな。
何にも無しで女性と眠るのはその頃自分の中では結構当たり前だった。
考えてみれば子供の頃からよく女の子達と遊んでたっけ。

コイツには何も起こらないだろうって。
そ・れ・が・だ。

なるようになっちまった。
あの日の朝日の中俺の腕の中の彼女の表情を今でもはっきりと覚えている。
太陽の明かりに透けた髪。
優しい笑み。

ああ、俺は日の下に居る。
子供の頃に感じた安心感がそこにはあった。
その直前にしてた恋愛が酷かった。
女性不信に陥っていた。
でもまた日の下に俺はいる。

直後彼女の親友が俺に好意を抱いていてくれた事を知る。
でももうどうする事もできない。
ひょっとして産まれて初めて本気で好きになったかも知れないコイツの事だけで頭は一杯だったしその人から何かを言われてた訳でもないし。
大変だったのは彼女だったろう。
この辺りは詳しくは書かない。

それからひっそりと彼女との付き合いが始まる。
社内恋愛は厳禁。
バレたら解雇。
お互い役職持ち。

でもこれが案外噂にならない。
後輩連中が噂をする「田中チーフと川原田店長っていつも夜一緒にいるみたいですけど付き合ってるんですか?」って。
その度に他店の店長は言ってたみたいです。
「それはない、ない、お互いの事知りすぎて無理があるって。仲がいいから一緒にいるだけじゃない」って。

手も繋いだ事さえない相手と10人ぐらい噂になったのに実際に付き合ってたコイツとは噂にならないんだ・・・
それはそれでちょっと寂しいような。

半年以上経った頃結婚を申し出た。
「一緒に暮したいんだ・・・・」ともごもご。
どっちかがクビになる覚悟でオーナーの元へ二人で。
「結婚する事になりました」
「誰が?」
「俺が」
「誰と?」(二人で行ってるのにも関わらず)
「この人と」(と言って隣の彼女を指す)
「え~~~~!?あなた達が―――――!!」
って後は大笑い。
あまりにもありえないカップルだったみたいです。
先生もオーナーも何故か非常に喜んで頂いてクビにもされなかった。
不思議。

結婚する時ってプロポーズしたりさ色々かっこいい事言ったりするでしょ?
「幸せにする」「お前は俺が一生守る」とかさ。
俺は言わなかった。
今でもドラマとか映画でそんな言葉聞くとさ拒否反応が。
そう言ってても数年で別れちゃったりしねーか?!
数十秒に一組だっけ?離婚。

「一生守るんじゃなかったのかぃ?」って。
そんなん誰でも言えるんだって。
「熱」に浮かされてるから。
その言葉はさ10年後に取っとけって。
10年後も本気で「愛してる」って言える相手をさがすんだって。
好きだから「結婚する」。
それだけでいいじゃんか。

今でも子供みたいなコイツの寝顔を見ながら付き合い出した頃からずっと俺の頭の中で流れてる曲がある。

GUNS・N・ROSESの「SWEET CHILD O'MINE」だ。
日本語の訳は激しく恥ずかしいけど・・・・
こんな感じの詩。


彼女の微笑みは俺にとっては子供の頃を思い出させる。
あの頃は総てが明るい青空の様に眩しかった。
昔も今も彼女の顔を見ると
俺は特別な何処かへ連れて行かれてしまうんだ。
長く見つめれば崩れ落ちて泣く事になるだろう。

俺の可愛いお嬢ちゃん。
俺の可愛い恋人。

彼女の眼は真っ青な空みたいだ。
雨など降りそうもない程の青空。
俺はあの眼を見つめるのが嫌なんだ。
少しばかりの苦しみを見るのも。
彼女の髪は安全で暖かな場所を思い出させる。
子供の頃身を隠しては
雷や
雨が
静かに俺を通り過ぎすぎていきますようにと祈った場所を。

俺の可愛いお嬢ちゃん。
俺の可愛い恋人。

俺達は何処に行くんだろう。
俺達は今何処へ行くんだろう。
俺達は何処へ行くんだろうか。
俺の可愛いお嬢ちゃん。




結婚して今日で丁度10年。
今でも俺の頭の中で「SWEET CHILD O'MINE」が流れてる。
今でも本気で「好きだ」って言える。
「お前とその娘を生涯掛けて守ろう」と思う。

10年前と今と。
俺は何も変わらない。
明るい日の下に俺を引っ張り出してくれたお前を俺は死ぬまで。

とりあえず10年ありがとう。
















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