杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・久間防衛相:原爆投下に関し「しょうがない」の発言

2007-07-01 01:54:16 | Weblog
久間章生防衛相が07年6月30日、千葉県柏市の麗沢大学で「我が国の防衛について」と題して行った講演で、
太平洋戦争終結時に米国が広島、長崎に原爆を投下したことについて「米国はソ連が日本を占領しないよう原爆を落とした。無数の人が悲惨な目にあったが、あれで戦争が終わったという頭の整理で、今しょうがないなと思っている」と述べたという報道がありました。

 久間防衛相は当時の戦況について「(米国は)日本が負けると分かっているのに、あえて原爆を広島と長崎に落とした。これなら必ず日本も降参し、ソ連の参戦を食い止めることができる、という考えだった。間違えば北海道まではソ連に取られてしまった」などと分析し
 原爆投下については「米国を恨む気はないが、勝ち戦と分かっている時に原爆を使う必要があったのか」と疑問を呈し、その一方で「国際情勢や戦後の占領を考えると、選択肢として戦争の場合は(原爆投下も)あり得るのかなと思う」と言及した、と報じられていました。
そして、
 久間防衛相は同日夜、東京都内で記者団に対し、自身の発言が問題視されていることについて「ソ連の意図を見抜けなかった日本の判断ミスについて言った。そのために、私の(選挙区である)長崎なども悲惨な目にあった。しょうがない点もあるが、相手の意図を見抜かなければならない。それで『米国(のこと)はもう恨んでいない』と(いう趣旨のことを言った)。原爆を是認したわけではない」と釈明した、とのことです(毎日新聞より)。

 久間氏自身は、被爆地・長崎の出身であるとのことで、100歩譲って善意に考えれば、物事の善し悪しを自覚する力が衰えてきておられるのではないか、と大変不安になります。
このような方に、自衛隊を擁する防衛相を任すのは、あまりに恐ろしい。
自覚する力が衰えておられるのでなければ、なお恐ろしい。

そういえば、先日車で郊外を走っているときのことを思い出しました。
前の車が妙に蛇行するのです。おかしいと思って車間を取って見ていると、縁石に乗り上げる、発進時に(マニュアル車なのでしょう)マンガで見るようにノッキングしてその場で小刻みにバウンドしているように見えるのです。横を走るバイクとは接触寸前。どうしたものだろうと思いながら、追い抜くときにのぞくと高齢の男性でした。
車も走る凶器です。

 久間防衛相は先日(5月26日)もクラスター爆弾について、問題ある発言があったばかりでした。

「日本は島国で海岸線が長く、クラスター爆弾を上陸してくる敵を海岸線で防ぐために使うことが想定されている。」と防衛省の田母神俊雄(たもがみ・としお)空幕長が5月25日の定例会見で述べたことをうけて、久間防衛相も閣議後会見で、「攻撃されて蹂躙(じゅうりん)されるか、守り抜いた後で不発弾処理をした方がいいか。今の技術レベルだと、私は後者だと思う」と述べた、という報道でした。

蹂躙されるまでに防衛するということになると、いったい、いつが防衛に必要なときと考えるのでしょうか。
「敵の上陸の恐れ、敵が(日本を)蹂躙の恐れ」をどのように捉えるかによっては、いま、海岸線にクラスター爆弾が仕掛けられても仕方ない、そして、日本人にその犠牲がでたとしてもやむをえない、ということなのでしょう。

今の政権の下では、武器を持たせ、行使を許し、行使のための「危険性」判断を委ねたら、国民の生命身体は自国によってさえ侵害されない危険な状態です。

まして、故郷長崎に原爆が落ちたことを「しょうがない」で済ます防衛相です。




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19 コメント

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Unknown (hiro)
2007-07-01 03:46:23
>故郷長崎に原爆が落ちたことを「しょうがない」で済ます防衛相です。
まったくあきれますね。驚きです。
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正しいことがんばってください。 (はし)
2007-07-01 04:44:48
微力ですが、応援してます。
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コメントありがとうございます (杉浦ひとみ)
2007-07-01 09:56:47
hiroさん、はしさん
こめんとありがとうございます。
驚いて書いたブログで、何がどう問題かについてあまり書かないままの、お知らせエントリーになってしまいました。

普通の感覚からおかしいことを黙っていない、少なくともそんなことからはじめます。
応援ありがとうございます。

よかったら、オフィシャルHPも見てください。
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Unknown (ken)
2007-07-01 10:28:12
 しょうがなかった、ということは、これからしょうがない状況があれば原爆を使う、といっているようなものです。許しがたい発言です。
 ただ、残念ながら、アメリカには原爆肯定派が少なくないようです。もちろん、冷静な判断力のある方は反対していますが。
 当時の国際法でも、無差別の民間人攻撃は違法でした。
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Unknown (志村建世)
2007-07-01 10:56:21
伝統的日本のオジさんの、床屋の世間話レベルの話に聞こえます。「個の知性」が感じられません。アメリカの最初の原爆は、東京湾上空で爆発させて、威力を見せるべきでした。
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アメリカでの原爆肯定派 (杉浦ひとみ)
2007-07-01 11:00:45
kenさんの、久間発言の方向性の認識、同感で、戦中の市民の苦しみが、政治家から率先して忘れよう、否、進んで消し去ろうとしていることに大きな危惧感を感じます。

アメリカの原爆肯定派のことも、聞いていますが、でもアメリカ市民が原爆被害について、知らないでいるためだ(知った方はその問題性を確認される)とも聞いています。

事実を知ること、自分の問題にそれを置き換えることが必要だと思います。
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逆説に込められた思い、感じ取ります (杉浦ひとみ)
2007-07-01 11:06:50
志村様

戦争のなんたるかを身をもってご存じの志村さんが、原爆は東京湾上空で投下されるべきだったとの逆説に、その憤怒の思いを感じます。
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「しょうがない」より「選択肢としてあり得る」が大問題 (Devlin)
2007-07-01 15:47:57
この方は防衛大臣で、日本軍を指揮する任にたずさわっています。「しょうがない」も暴言ですが、それよりむしろ「選択肢として戦争の場合は(原爆投下も)あり得るのかな」という認識をお持ちのようで、そちらのほうがよほど問題だと考えます。自らの判断で情勢に応じて「原爆投下を認める」と言っている。

電子版産経新聞の「防衛相の発言要旨」を引用すると、「そういうことも選択としてはあり得るのかなということも頭に入れながら考えなければいけない」(2007/06/30 22:19)。頭に入れながら考えなければいけないのは誰か、ということを問題にするなら、核の保有が実現すれば核兵器使用を選択肢の一つとして念頭におく、と明言したことになります。
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キツイことを書きます。しかも長文。 (鉄甲機)
2007-07-01 21:53:46
 久間大臣の発言は、原爆投下を強行したアメリカの当時の状況を説明した上で、ソ連参戦を予測できなかった日本の判断の甘さを指摘したもののはずです。話の本筋に目を背け、「しょうがない」の一言にことさら反応するのは、自分たちの考えに一言一句合致しないものは許さないという思考の狭さを感じます。
 元長崎市長本島等氏も「原爆投下は仕方なかった」と発言される方ですが、本島氏に対しても同じように糾弾されるのでしょうか。
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/news/20070701k0000m010128000c.html
久間防衛相:発言に被爆地から怒りの声 一方で複雑さも

 私は核兵器は許されるものではないと思いますが、広島長崎の核使用は「しょうがない」と考えます。神ならぬ人の身である以上時間を戻すことはできません。大事なのは次の核使用を許さないこと、そして核兵器を廃絶することのはずです。魔女狩り、言葉狩りはいい加減にやめて、実効力のある核廃絶運動を目指しませんか?

>杉浦さま
> 久間氏自身は、(略)物事の善し悪しを自覚する力が衰えてきておられるのではないか、と大変不安になります。
>(略)高齢の男性でした。車も走る凶器です。
 私に並の読解力があるのなら、久間氏は高齢で善悪の判断ができていないと杉浦さんは仰ってるんですね。杉浦さんがこういう中傷をされる方とは思ってもいませんでした。

>志村建世さま
 志村さまの発言にも「個の知性」が感じられませんね。
>アメリカの最初の原爆は、東京湾上空で爆発させて、威力を見せるべきでした。
 あえて揚げ足を取らせていただきましょう。
 そうなると、日本はポツダム宣言を受諾する政府を失い、戦線は泥沼化、日本各地で沖縄以上の悲劇が実現したかもしれません。当然ソ連は北海道を占領し、金日成傀儡政権が朝鮮半島全てを支配するでしょう。日本は米軍基地・ソ連軍基地が林立する東西冷戦の最前線。北海道返還(or南北日本の統一)はいったいいつになることか。ついでに言えば、東京で原爆が爆発しようとも、その破壊力を恐れたソ連はしっかり原爆・水爆を完成させますよ。第三の核兵器使用は北海道か東北かもしれませんね。
 怒りにまかせて書き殴られたとは言え、この程度の想像も出来ないとは泥酔者の戯言レベルです。杉浦さんの「高齢の男性でした。」発言にいきなり説得力を持たせるような御発言は如何なものでしょうか。

>杉浦さま
>海岸線にクラスター爆弾が仕掛けられても
 クラスター爆弾は地雷じゃありません。言ってみれば散弾銃弾のようなもので、中に小型爆弾がつまった対地爆弾です。よってクラスター爆弾は決して国民に向けてでなく、侵攻する敵軍に向けて投下されることになります。何か久間氏の発言に問題でも?
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from広島 (中年男性)
2007-07-02 02:12:23
実は、私の祖父母、両親とも被曝しました。
(私は、被曝2世に相当するんかな??)
祖父母と両親は投下後、親族を探しに市内へ出掛けたそうです。
直接的な被曝では無いので、幸い原爆症にはなりませんでした。(別の理由から手帳は申請していません。)

その祖父母は、「しょうがない」と思っていたようです。
時は巻き戻せません、自分達が出来る事は、復興する事なんだと、がんばって広島の街を復興させました。私は、このような祖父母を誇りに思っています。

今更、「しょうがない」という大臣の過去に対する感想に噛み付いても、それこそ「しょうがない」のではないでしょうか?
私には、この「しょうがない」を大きな問題だと捉える方達のお考えが、今一つ理解できないでいます。
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