杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・市民が信頼する刑事司法を!~ 警察の証拠ねつ造!?

2008-01-04 14:00:31 | Weblog
市民が警察をどれほど信頼しているかというと、犯罪の被害者となった方と接するときに必ずいわれる「警察に任せているから」「警察が被害者の代わりにやってくれている」という言葉に代表されていると思います。
その時点でもっとも悲惨な立場にある犯罪の被害者が、一番頼るのが警察なのですが、それは、警察が正義をまっとうしようという志を持ち、そのための教育と訓練を受け、力(強制力)をもっている人だと信じているからではないでしょうか。

ところが、その警察が正義とはあまりにもかけ離れた行為をおこなっていること、その強い疑いに関する事件に、新年早々触れることになったので、記事にしてみました。

捜査での、証拠のねつ造、つまり、証拠がないのに、犯人と目される人を有罪にしようという画策と行動を、権力を持つ警察がおこなったという事件です。
ひとつは、1月3日に毎日新聞に掲載された
佐賀・旧北方町の女性連続殺人事件で、県警が鑑定に細工を施したと、検察側が判断した、という件です(記事は後掲)。
 佐賀県旧北方(きたがた)町(現武雄市)で89年に3女性の遺体が見つかり、時効直前に起訴された元運転手(45)の無罪が確定した「北方事件」と呼ばれる事件で、当初の「見込み捜査」とつじつまを合わせるため県警捜査本部が証拠となる鑑定に「細工」をしたと、検察側が判断していたことが分かり、再鑑定をしようとしたが、裁判所から証拠として扱うことはできないいわれて、再鑑定はあきらめた、というものです。

 このようなえん罪事件が戦後いくつも現れました。でも、その後、人権意識の高まりもありそのような事件が減ってきたと思われていていたのですが、“犯人を挙げる”ことが至上命令になっていることには、変わりはないことの現れでしょうか。

 ただ、救われるのは、このような警察の細工に検事が気づき、再鑑定を考えたこと、裁判所がこの証拠を採用しなかったことです。だからこそ、有罪率が99%を越えるなかで無罪判決が出たのです。
でも、法曹関係者である私(ブログ管理人)が、この検事、裁判官の当たり前の行動を「救われる」と紹介すること自体が、大きな問題であり、大きな恥だと思わなければならないと思います。


次に、4日朝のスーパーモーニングという番組で取り上げていたのが
「警察が証拠ねつ造!?検証!!高知白バイ事故」でした。
(全て、番組の放送をもとにしていることはお断りしておきます)
これは、バスの運転手が右折しようと道路中央で留まっていたところへ、高速の白バイがその左前部側面に衝突して、白バイの警察官が死亡したという事件だったようです。
バスの中の乗客や、バスの後方で留まっていた後続の車運転手が、「バスは止まっていた」という証言をしていること、止まっていたので車内で写真を撮った旅行中の学生がおり、その写真があることなどが事実を裏付けると思われるのです、地裁、高裁ともそれらの証拠は採用せず、対向車線をすれ違って通り過ぎた別の白バイ運転の警察官の「バスは時速10キロで動いており、走ってきた白バイを巻き込んだ」という証言を採用したというのです。
そして、高裁裁判長は「第三者の証言というだけで信用性があるとはいえない」と判示したということなのです。
 さらに、事故から8ヶ月経って、警察は路面にバスの急ブレーキ痕があったことを被告人に確認させたというのです。ところが、このスリップ痕、両タイヤのスリップ痕に溝がなく(タイヤのスリップ痕にはタイヤの溝の痕が残る)、また痕が平行についておらず、さらには、この放送局が実験をしてみて、時速10キロという判決通りの速度を前提に急ブレーキをかけても、その痕長はせいぜい10数センチにしかならないのに、裁判に検察側が提出した写真には1メートルほどの長さになっている、というのです。

 このような証拠であるにもかかわらず、この事件のバス運転手は業務上過失致死罪で、禁固1年6月(確かそうだったと)の実刑と判断されたのです。裁判官がこのような判断をすることが大きな問題だと思われるのですが、現在上告中ということです。

 このように、刑事司法に対して不安を与えてどうするのか、と思われそうですが、つまりは、自分のことは自分で守らなければならないということが、最低限の砦であり、加えて、逮捕や捜索といった強制権限を持つ警察・検察については、盲信をしないこと。そして、裁判は人を死刑にも懲役にもできる判断権限を持っていることを忘れずに、常に厳しい目を向けていることが大切だということをいいたいのです。
ただ、誠実で良心的な警察官、検事、裁判官もたくさんいることは付け加えておきます。

<毎日新聞>
佐賀・旧北方町の女性連続殺人:県警、鑑定細工か 付着体液、上申書通り「前日」
 佐賀県旧北方(きたがた)町(現武雄市)で89年に3女性の遺体が見つかり、時効直前に起訴された元運転手(45)の無罪が確定した「北方事件」で、当初の「見込み捜査」とつじつまを合わせるため県警捜査本部が証拠となる鑑定に「細工」をしたと、検察側が判断していたことが分かった。被害者の一人に付着した体液が当初、元運転手と別人のものとみられたため、付着の時期を事件当日からずらしたという。検察側は公判段階で一時、鑑定のやり直しを検討していた。

 関係者によると、県警科学捜査研究室(科捜研)は事件発覚直後、被害者の一人で縫製会社勤務の女性工員(当時37歳)の胸部に付いた唾液(だえき)からA型の血液型を検出。下半身に付着した体液は当初、O型とされた。捜査本部は女性工員と交際中で、血液型がA型の元運転手を4日連続で事情聴取した。

 しかし、同年10月に元運転手が覚せい剤取締法違反で逮捕・起訴され、起訴後の「任意」(のちに裁判所が違法捜査と認定)の取り調べで3人殺害について追及したところ、計65通の「上申書」で「自供」。この直後、県警はO型とされた体液について外部の鑑定医に付着時期の鑑定を依頼し、事件当日ではなく約1日前に付着したとする鑑定結果を得た。

 こうしたことから検察側は、女性工員が事件当日にO型の男と接触していれば元運転手の「自供」と食い違いが生じるため、捜査本部がつじつまを合わせようと付着時期の鑑定に「細工」をしたと判断。控訴審の際、福岡高検を中心に鑑定のやり直しを検討したものの、裁判所から証拠として認められないとの意見が出て、実施は見送られたという。

 O型とされた体液は結局、02年の起訴後に結果が出た警察庁科学警察研究所のDNA型鑑定で元運転手のDNA型と一致。体液はO型と判定されやすい「非分泌型」だったとされた。裁判所は体液を元運転手のものと認定し、付着時期の鑑定に基づき「当日に接触した裏付けにならない」と判断した。【松下英志、石川淳一】

<スーパーモーニング公式サイトから>
1月4日「警察が証拠ねつ造!?検証!!高知白バイ事故」

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