杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・父の認知届で国籍取得できる「国籍法改正案」はどうか

2008-11-21 02:35:07 | Weblog
「危機感」さんがコメントを下さったように、いま国籍法の改正の動きがあり、
結婚していない日本人男性と外国人女性の間に生まれた子について、父が「認知」すれば国籍を取得できるようにする国籍法改正案が、今国会に提出され、その成立がはかられているということです。

私自身は、このことの結果についてはまだきちんと分析できていませんが、この法律によってどのような場合に日本国籍が取得できるようになるかを考えてみます。

父は認知することができます(民法779条)
認知は、役所に書式があって、それに父が書き込んで提出すれば完了します。
認知届の届出先は、「①認知する父の本籍地、②認知される子の本籍地、②届出人(父)の所在地、のいずれかの市区町村役場」

認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しない(780条)
 → つまり、認知するのは成人でなくても、能力が低くても、ひとりで(誰かの許可は不要)することができます。認知をするについて人に利用されることも考えられます。

認知は、遺言によっても、することができる(781条)
→ 余命の短い方が遺言で認知をすれば、そのあと父子のDNA鑑定がむずかしくなるので、偽装の認知届けかどうかはわかりにくくなるのではないでしょうか。

これ以外に、お金をもらっての認知もあり得るでしょう。

認知する年齢に制限がないので、子どものことに限らず、たとえば、これまで難民を日本は入れてこなかったのですが、認知で国籍を取得する方法もあり得るのではないでしょうか。

もちろん、虚偽の認知には罰則がありますが、認知の届け出のときに特にDNA鑑定結果を添える必要性もないとすれば、役所の窓口でこれをチェックすることはできなくなります。認知届に必要な事項が書かれていればクリアさせざるを得ない訳です。怪しいと思われる父・子については警察が捜査することになりますが、通常は誰かが告発をすることになるのでしょう。


そもそも、外国人に日本国籍の取得を広く認める法制度はどうか。(国民が増えていい、ともいえるかも知れませんが!?)
※追記~外国人が日本国籍を取りやすくなることの是非について特に意見をいうものではありません。

今回問題の認知による国籍取得は、国籍取得の脱法として使われる可能性は否定できない訳で、もう少し慎重に検討すべき問題のように感じます。

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4 コメント

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反対無き法律 (スパイラルドラゴン)
2008-11-21 11:15:27
 多くの国民が、今国会で成立されそうな国籍法改正案に疑念を抱いているので、この場面で社民党が法律案の早期成立に反対の立場を表明し、慎重審議の態度をマスコミに表明すれば、社民党が村山政権樹立で失った党の信頼の多くを取り戻せると思います。

 杉浦瞳さんは、既に国籍法改正案の致命的な欠陥について気付かれているのですから、福島瑞穂代表に直談判されてみてはいかがですか?

 今まで国会で可決されてきた様々な地球温暖化対策法案は、野党が法律の素案を審査する段階から賛成する態度で臨んでいたので、未だに温暖化問題を直轄する環境省でさえも、地球温暖化のメカニズムを検証する実証実験を行っていません(地球シミュレーターによる検証などは、物理的な検証作業と呼びません)。
 何が言いたいかというと、野党全体が賛成して成立した法律は、後に取り返しが付かない禍根を生み出し、血税をドブに捨てる事態を招くと言うことです。

 また、今こそ野党の立場の政治家は、今まで温暖化対策に支出した税金が、医療や老人福祉分野に投入していれば、多くの生命が救われていたことに思いを馳せるべきです。
 せっかくお天道様が、昨年来地球全体の気候を寒冷化サイクルへと変更されたのですから。
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国籍法改正について (fem-yoko)
2008-11-27 02:49:53
杉浦さんは弁護士でいらっしゃるので、もう少し国籍法改正の経緯や最高裁判決をご理解いただいた上でコメントされるべきではないでしょうか。
まず、現行国籍法でも認知による国籍取得は可能です。胎児認知の場合は両親の婚姻を国籍取得の要件にしていません。同じ事実婚カップルの父親の認知でも、出生後認知のみが両親の婚姻(準正)を国籍取得の要件としています。認知の時期が出生前か出生後か、つまり、認知の時期で差を設けることについて問題であると判断したのです。胎児認知を国籍取得の要件にしていることは子どもの権利委員会からも勧告を受けております。採択から今年60周年を迎える世界人権宣言第15条には「すべて人は、国籍を持つ権利を有する」と謳っています。子どもの権利条約第7条でも「児童は出生後直ちに登録され、氏名を有し、国籍を持つ権利を保障される」と定めています。今回の判決は、国際人権基準に則して判断された点で画期的でした。法務省が裁判で国籍を認めない理由に偽装認知の防止を挙げた際にも、「真実の認知についてまで排除するのは本末転倒」と厳しく断じておりますし、今回の改正内容と偽装認知の防止とは直接が関係ないとしています。最高裁大法廷が慎重に審議し、違憲立法審査権を行使したことについて、判決文を読むことすらしなくて慎重審議と主張されることについては、大変驚いておりますし、憤りを感じます
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Unknown (慎重)
2008-11-28 06:32:22
 人権は大事だし、親の愚行により国籍が取れない子供は、かわいそうな気がする反面、やはり悪いことを考え、実行する人もいるわけです。

 幼児性愛主義者や児童売買など考えたくもない話も、世界ではあるようです。
 本当に困っている人を助けるべきだ、人権をなんと心得る!と批判する人がいると思いますが、やはり
悪影響のことも考えないといけないと思う。悪人がはびこってはいけません。その点で
慎重に検討することは必要だと思う。


 ただ「人権」派社民党らしからぬ今回の貴方のコメント「もう少し慎重に検討すべき問題」は批判を浴びるでしょう。
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改正に賛成 (ルビイ)
2008-12-07 14:45:22
国籍法改正案は、12月5日国会で可決、成立しました。
日本は、外国人の国籍取得にあまりにも厳しい条件を課しすぎです。また国籍取得にあたっての法務省の審査に不透明な部分が多々あります。
中には、例外的にスポーツ選手のように比較的簡単に国籍を取得出来るケースもありますが。
日本に帰化したい人がいれば、可能な限り帰化させてあげればいいではないですか。
アイヌ民族のように先住民族もおりますが、多くの日本人のルーツは、中国大陸や朝鮮半島から帰化した人なのですし、まして今はグローバリズムの時代、もう少し開放的になってもらいたいと思います。
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