(前回より続く)
さて、あらためて、PostScriptとは何なのか。
実は書いている私もPostScriptを完全に理解しているわけではありませんm(__)m
なのでここでは実務上差し支えない程度のレベルに必要な初歩的な理解を目標に書いています。
物を理解するにはまずその物の作成者自身が書いた解説を読むのが基本でしょうが、PostScripの開発元であるアドビシステムズから出ている公式リファレンスマニュアルの日本語版は総ページ数が約900ページあり、初心者にいきなり買って読めと言ってもあまり効果的ではないでしょう。(私もリファレンスマニュアルの分厚さに恐れをなして買うのをやめてしまいましたし、おそらく買っても本棚の肥やしと化していたでしょう)
システム開発に携わろうという方にはこのリファレンスマニュアルは必携だと思いますが、ここではそれは置いておいて、まず感覚的にどう捉えておくのがよいかという視点で書きたいと思います。
あらためてWikipediaでPostScriptを参照してみると、EPSはファイル・フォーマットと説明されているのに対して、PostScriptはページ記述言語と書かれています。ページ記述言語とはプリンタなどで文字や画像を描画していくためのプログラミング言語のことです。
PostScriptは本来は特定のアプリケーションで編集過程で使われることを目的に開発されているわけではない、ということをまず覚えておきましょう。PostScriptとはファイル・フォーマットではなくページ記述言語であるという認識が「PostScriptという言葉が持つ意味を正確に掴む」第一歩だと私は思っています。
その認識であらためてDTPで使われるアプリケーションやファイル・フォーマットの役割を考察してみると、それらが持つ本来の意味がわかりやすく見えてくると思います。
EPSは本来はEncapsulated PostScript、つまりPostScriptにプレビュー画像等の情報を補ったものであり、本来は別のアプリケーションやメディアにデータを渡すためのファイル・フォーマットです。編集のためのネイティブ・フォーマットとしてはIllustratorならAI形式、PhotoshopであればPSD形式があります。EPSは別のアプリケーションで再編集されることは意図されていない、そのまま貼り込んで利用するのが前提、というのが重要なポイントです。
QuarkXPressやInDesignのようなレイアウト・ソフトではIllustratorやPhotoshopから書き出されたEPSを配置できますが、配置したEPSを直接編集するようにはできていません。これは先ほど述べたEPSファイルの特性を考えれば理解できると思います。IllustratorとPhotoshopだけでDTPの仕事をしているとレイアウト・ソフトの役割を忘れてしまいますが、IllustratorとPhotoshopでは部品を作りQuarkXPressやInDesignのようなレイアウト・ソフトで最終的にまとめる、というのが本来の役割でしょう。
「面付け」をレイアウトの一種と考えると、レイアウト・ソフトを面付け作業に使うというアイディアも浮かんでくるでしょう。事実QuarkXPressは多くの印刷業者、製版業者が面付けソフトとして使っていましたし、現在でも現役で使われていることが少なくありません。そこでなぜIllustratorが使われないかというと、Illustratorは編集するためのソフトであるためにEPSの扱い方がレイアウト・ソフトよりも出力作業に向いていないのです。(MM岩手さんから面白いサンプルを教えていただきましたので続きで紹介します)
繰り返しますが、EPSファイルは別のアプリケーションやメディアにデータを渡すためのファイル・フォーマットですから、それを利用する側のアプリケーションでは手を加えないのが基本です。
では次回にEPSをIllustratorのネイティブ・ファイルのように錯覚する弊害について書こうと思います。
(次回に続く)