観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

初めての野外調査

2012-06-27 14:55:31 | 12.4

研究生 中村圭太

 先日、長野県の茶臼山動物園で環境教育を行う機会があった。毛皮や頭骨の展示をして、野生動物に興味を持ってもらい、外来種の問題についても考えてもらおうということで、「あーすわーむ」の福江さんに4年生の高田君と一緒に同行させて頂いたのだ。
私は琉球大学を卒業してこの4月から麻布大学で研究生になったが、生態学の野外経験がほとんどない。うまく話しをするどころか話す知識さえない私は、福江さんや高田君の話を必死で覚えて、そのまま来園者に伝えることしかできなかった。それでも多くの方が興味を持ってくれて、話しに耳を傾けてくれたのはうれしかった。帰り道に、もっと知識があれはいろいろな話しができたのにと思っていると、福江さんに電話が繋ってきた。イノシシの箱罠にハクビシンが入っていたらしく、これから取りに行くとのことだった。私は「チャンスだな」と思った。実際に生きたハクビシンを見たことがなく、観察できると思ったのだ。イノシシの箱罠からハクビシンをケージに移して、宿舎として使わせて頂いている事務所の庭に移動させた。私は懐中電灯を片手に観察を始めた。ハクビシン(白鼻芯)という名前の通り、確かに顔の中央に白いラインがはいっているな。尻尾がこんなに長いのはきっと木登りに使うんだろうなぁ。果実中心の雑食性らしいけど、どんな歯をしてるんだろう。観察を続けていると、「興奮しているからあまりプレッシャーを掛けないように」と福江さんに言われ、切り上げることとなった。
 次の日の朝、ハクビシンに餌をあげていると、鼻の辺りが赤く血が滲んでいることに気付いた。夜の間にケージの外に出ようと暴れたためだと思われた。そのときようやくハッとした。夜、私が観察しているときもずっと唸っていたのだ。人間に捕まってケージに閉じ込められただけでも相当のストレスを感じていただろうに、私はすっと傍にいてさらにプレシャーを与えていたのだ。ハクビシンのことをもっと知りたいと思って観察していたが目の前のこのハクビシンのことはまったく見えていなかったのだ。
 野生動物学研究室に入って1カ月が過ぎて、いくつかの野生動物を観察する機会があった。その生物が生態系の中で果たす役割や形態的な特徴、社会性、人間への影響など知っておかなければならないことはたくさんあると思う。さらにフィールドでは目の前の対象に対しての観察も重要であることを学んだ。3月に参加した金華山でのシカの調査では次の順番で調査をやるように言われていた。①自分たちの安全を確保する。②対象動物(生物)の安全を確保する。③学術的なデータを得る。これからフィールドに行く機会があると思うが、このことを頭に入れて、調査に取り組みたいと思った。



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