福島原発の事故が起こってから、飛来する放射性物質に敏感になっている人が多いです。
放射性物質は量によっては身体に害のあるものですから敏感になるのは当然です。
ですが、やはり知識がないために過剰に恐怖心を持っている方も見受けられます。
毎日放射線を扱っている人間として具体的な数字を挙げて説明します。
私は毎日のようにレントゲン撮影をしています。
歯科のレントゲンの放射線量は0,02ミリSv(シーベルト)です。
これは20マイクロSvに換算されます。
(この数字を覚えておいて下さい。)
私は歯科のレントゲンを年間40枚以内と決めています。
これは1年間に人が受けた放射線が健康に影響が出る量の1/100です。
具体的に説明しますと
0,02ミリSv×40×100=80ミリSv
一年間に4000枚歯科のレントゲンを撮ると健康被害が起こる可能性が出てくるわけです。
年間100ミリSv以下の放射線量では健康に被害が出ません。
ただ、胎児には100ミリSvで影響が出る可能性が出てくるので妊婦さんは気をつける必要があります。
そして東京で最近測定された放射線量をみてみましょう。
http://ftp.jaist.ac.jp/pub/emergency/monitoring.tokyo-eiken.go.jp/monitoring/past_data.html
通常東京で測定される値は0,04マイクロSvです。単位はマイクロです。
東京でもっとも値が高かった時が0,8マイクロSvです。
最近雨の影響で濃度が高まっているといわれていますが、それでも0,16マイクロSvです。
歯科のレントゲンが20マイクロSvですから、私たちにとっては微々たる数字に思えるのです。
ただ、この説明には多くの穴があります。
まず、X線撮影は放射線を一時的に外から浴びるものです。
一方、放射性物質はそれを体内に取り込んで中に蓄積するものです。
ですから、現在問題になっている放射線物質をレントゲンに換算しても適正な比較にはなりません。
また、東京都やその他の自治体が発表する数値は時間当たりの測定量です。
ですから年間量に換算するには8760倍しなければなりません。
ただし、発表されている時間当たりの放射線量がすべて人間の体内に入り込むことはありませんので、それを単純に年間量に換算してもどういう影響がでるかの値としては不確かです。
このように曖昧な比較をしているのが現状ですが、それでも東京の放射線量は健康に影響がないといえるものです。
問題は風評被害です。
福島県とその近隣の県の農産物に基準値を超える放射線が検出され、政府が出荷を制限しました。
今後この地域の農産物、魚や牛乳などが売れなくなってしまう恐れがあります。
放射線量が基準値以内になっても買い控えが続く心配があります。
東京に電力を供給するために造られた福島原発の事故による風評被害は、東京の人間が冷静に判断して長引かせないようにしなければならないと思っております。
院長