ニュージーランド・ラグビー:オフ・ザ・ピッチ

ラグビー王国からのそのまんまレポート。子どもラグビーからオールブラックスまで、見たこと感じたことをお送りしています。

タナの未来

2006-01-11 | プレーヤー
昨日、オールブラックス引退を発表したばかりのタナ。
「昨日の今日でいきなり“タナの未来”なんて言われても~」
って言われそうですね(笑)

ところが、この引退、あれこれ考えれば考えるほど、
未来はバラ色♪
とっても楽しみになってきたんで、新たなエントリにしてみます。

「オールブラックであるために家族との時間を犠牲にしてきた。それは望んでしたことだったが、今は自分が何かを犠牲にして家族に報いる時だと思っている」
それはタナにとり、黒ジャージを脱ぐことでした。

誰もが認めるように、彼のフィットネスレベルであれば、2007年のワールドカップを花道に引退することも可能だったでしょう。しかし、彼はここで問題を2年先送りするよりも、
「家族のために」
という決心に素直に従うことにしたようです。

そしてもう一つ気になるのが、
「家族ともっと一緒の時間を過ごし、ウェリントン・ラグビー、ハリケーンズ、さらに広い社会に何かを返していくことを楽しみにしている」
と言っていることです。

何かを返していく(≒貢献していく)― putting something back
「このsomething―サムシングって、何だろう?」
そう考え始めた時、急に彼の行く手がバラ色に見えてきました。

そうか! 
彼はオールブラックスでいかんなく発揮され、誰もが認めるところとなったリーダーシップという天賦の才を活かして、
家族へのみならず、
NPCのウェリントンへ、
スーパー14のハリケーンズへ、
そしてもっと広い社会へ― それはつまり、彼自身が所属する、
サモア系を始めとするパシフィック・アイランダー社会へ貢献していくことを目指しているのでは?

ニュージーランドにおけるアイランダーが、スポーツ選手や芸能人など一部の有名人を除いて、社会的にはあまり上に見られていないのは事実でしょう。

なにか事件があった時、「容疑者はマオリかパシフィック・アイランダー」と報じられることもたびたびです。しかしながら、私は彼らが大好きで、素晴らしい人たちをたくさんたくさん知っています。

タナのように、オールブラックス初のアイランダー・キャプテンとして世界的に名を馳せた人が、自身のアイデンティティー確立のために立ち上がったら? 考えるだけでもワクワクしてきます。

現にタナは、アイランダー率が高く、荒っぽいパワープレーで鳴らしたウェリントンやハリケーンズのモラル改善のために尽くしてきたことで知られ、ニュージーランド人では唯一、世界的なスポーツ界のモラル向上に貢献した人に贈られる、
「ピエール・ド・クベルタン賞」も受賞しています。

家族のために、
チームのために、
社会のために、
キウイの、夢と希望と誇りと尊厳(dignity)のために 
彼がこれから何をしていくのか、ますます目が離せません。

今後のキャリアは、この時期でのオールブラックス引退が、体力の限界でも、引け時の演出でもなく、次のステップへ向かうための、かけがえのないタイミングであったことを証明していくことでしょう。

タナ、黒ジャージを着ていてもいなくても、
あなたは真のリーダー。
今後の展開を楽しみにしてるよ、もちろん、プレーもね♪

(←スーパー12での100試合出場記念式典にて)