国際交流のススメ

舞台芸術・海外公演に関する情報をニューヨークから発信します。

アーティストビザって

2009年09月25日 | 海外公演
日本国籍を持たない人が日本で働こうとすると労働ビザが必要なように、米国で働こうとする非アメリカ人もなんらかのビザが必要です。そして、米国で演劇やダンス、古典芸能の公演をするのにもビザが必要です。まったくの無料公演で、どこからも謝礼を受け取らない公演であればビザは原則必要ありませんが、招聘であれ、自主であれチケット代や公演料を受け取る公演を米国内で行うにはビザが必ず必要です。ビザなしで有償の公演活動を行えばそれは不法滞在となります。(無償・有償の概念や、ビザの必要条件、種類にはかなり複雑な移民法が絡んでいますので、確実な情報が知りたい方は移民法専門の弁護士に相談してくださいね。東京にも米国の移民法を専門でやっている弁護士がいるみたいですし。このウェブはあくまで個人的な経験に基づく情報提供ですので、正確な情報が必要な方は専門家にご相談ください。)

目的に応じていくつかの種類のビザがありますが、通常、舞台公演を行うために必要なビザをPビザ、俗にアーティストビザといいます。Pビザには以下の3カテゴリーがあります。

P-1ビザ: 国際的に活動が評価されているアスリートやエンターテイナー、アーティスト
P-2ビザ: 交流プログラムに参加しているアスリートやアーティスト
P-3ビザ: 文化的にユニークな活動をしているエンターテイナーやアーティスト

上記は演者が申請すべきビザカテゴリーですが、演者をサポートをする人たち、つまり舞台の場合は照明や音響、舞台監督や制作がこれに入りますが、彼らにはPビザでもさらにS枠というのが必要です。P-3で申請したアーティストのサポートスタッフにはP-3-Sというビザが必要になります。さらにビザの申請は米国内での受入団体しか申請できませんので、必ず米国に身元を保証する団体が必要となります。

日本から来る劇団やダンスカンパニーなどの場合、国際的な活動実績を証明するのが大変なので、大概は文化的にユニークな活動をしているグループということで申請します。ただしコンテンポラリーダンスなどの場合、西欧のダンスと比してなにが文化的にユニークかを証明しなくてはならない場合もありますの注意が必要です。

ビザ取得までの過程はだいたい以下の通りです。

1、 米国内で申請に必要な個人情報を集める。
このとき、パスポートなどの個人情報以外に、そのグループの活動がいかに実績があり、文化的にユニークかを証明できるものができるだけ多く必要になります。一番良いのは、雑誌や新聞に英語で書かれた批評、次にウェブなどでの英語評、海外のフェスティバルなどに参加した場合はそのチラシやパンフレット、雑誌や新聞に日本語で書かれた批評や記事、公演のプログラムやパンフレットなどの印刷物、過去の公演のちらし、の順で有効です。当然、世間的な評価がある媒体に英語で書かれていて批評や記事が一番有効です。日本語のものでも、きちんとした印刷物で写真などが掲載されているものも有効です。

2、 関係ユニオンから手紙を貰う。
申請書類と添付資料を準備し、関係するユニオン、役者の場合はアクターズユニオン、ダンサーの場合はダンサーのためのユニオン、スタッフのためのユニオンなどに資料を提出し、この上演が米国内のアーティストや役者、ダンサーやスタッフの経済活動の妨げにならない、との手紙を貰わなくてはなりません。昔、こういった手紙は好意、というか彼らの権威付けの意味もあって無料でしたが、10年近く前から有料になりました。1件につき$250-$350ほど払います。

3、 米国移民局に申請書類、申請手数料、資料を提出する。
申請書類はI-129という書類ですが、現在は申請書類と手数料の支払いは米国移民局のウェブ上でできます。申請手数料は現在、1件$320で、スタッフがいる場合は役者用の申請と合わせて2件の申請になるので、$640必要です。必要事項を記入すると、支払い方法を尋ねてきますので、クレジットカードを選んで必要な情報を打ち込みます。すると、申請手続き完了のページに飛びますので、その手続き完了のページを印刷して、2の資料(ユニオンレター+活動実績を証明する資料)を添付して指定の移民局に郵送します。

そして待つこと3ヶ月程度で許可証が送られてきます。

4、 日本の米国大使館で申請書類を申請して面接を受ける。
米国の移民局から受入先にビザ申請許可の通知が届いたら、次は日本国内での手続きに入ります。
ビザ申請に必要なものは以下の通り:
• パスポート(米国での滞在期間+6ヶ月の有効期限のあるもの)
• DS-156と呼ばれる書類(ウェブ上で入力し印刷して面接に持参する)
• カラー写真(5cmx5cm)で背景は白、最近6ヶ月以内に撮影されたもの1枚
• 申請料金の支払い(これは事前に日本円で支払いを済ませて、そのオリジナルの領収書を持参しなくてはなりません。
• DS-157(16歳~45歳の男性全員)
• パスポート返信用にあて先を記入したエクスパック500(コンビニで購入可)
• 裁判記録または警察証明(犯罪や逮捕歴がなければ関係なし)
• 面接の予約確認書(ウェブ上で申請書記入後に予約が取れます)
• クリアファイル(上記書類を順番どおりに入れておく)

以下の3点は米国内の受入団体に準備してもらう必要がありますが、

• I-797申請書許可通知(これは先に書いた米国移民局から受入先に送られてくる許可証のこと。原本を米国から送ってもらう必要があります。
• I-129申請書のコピー(受入団体が提出した申請書のコピー)
• 雇用証明(受入団体と交わした契約書など)

日本国籍を持っていない場合はさらに準備物があります。

5、 米国大使館で面接を受ける
上記手続きを行い、書類を準備し、面接予約を行ったら東京、大阪、沖縄のどちらかで面接を受けます。ただし、米国内で申請を行う際にどの大使館で面接を受けるかを答える設問があり、基本的にはその場所の大使館に行く必要があります。ちなみに大使館と呼ばれるのは東京のみで、他は領事館といいます。大使はその国には基本的には1人しかおらず、他の在外公館には総領事と呼ばれるヘッドと領事と呼ばれるスタッフがいます。面接予約時に希望時間を選べますが、東京の場合、2~3時間ほど待たされると思っておいたほうが無難です。人数が多いときは建物の外で待たされることもあり、気温対策も必要です。

6、 2~3日でビザ査証の貼られたパスポートがエクスパック500で指定の住所に送付されてきます。

7、 米国入国
米国入国時に記入する出入国証ですが、ビザなし訪問(観光)の場合は緑ですが、ビザを所持していますので白色のものに記入します。ただし、入国審査の列は緑の観光の人たちと同じ列に並びます。このとき、I-797のコピーと公演のチラシぐらい持っておくと便利だと思います。入国審査官がいくつか質問をして来ます。「何日滞在するのか」「どんな公演なのか」「スポンサーは誰か」「あなたの役割はなにか」などなどです。正直に答える必要はありますが、聞かれていないことまで、べらべらと答える必要はありません。人間は緊張したり、不安になるとべらべら話してしまうようですが、薮蛇になりますから、聞かれたことを最小限で答えるようにしましょう。

大使館での面接が出発日ぎりぎりになるのは避けたいですから、2-3週間の余裕を持つとすると、米国での準備に1ヶ月、移民局の審査に3ヶ月、許可が下りてから出発までに1ヶ月と考えると、遅くとも5ヶ月前には作業を開始する必要があります。

というのが通常の流れです。しかし時には移民局から質問が返えってきたり、準備が間に合わなかったりする場合もありますが、この場合、特急申請というのもあります。これはまた別の機会にでも。ビザ及び移民法は頻繁に内容が変わります。また申請料や面接の予約方法なども頻繁に変更されますので、詳細は随時、米国大使館ウェブサイトの非移民ビザ取得の案内を確認してください。http://tokyo.usembassy.gov/j/visa/tvisaj-niv-walkin1.html

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