シンメトリックではない原石の姿を活かした可愛い石笛を作って欲しいとの注文。
可愛いといっても人それぞれで、以前、お客様から感謝のメールを頂いた際に、添付されたペットの白ヘビのアップ写真がスマホの画面いっぱいに広がって、「キャッ!」と叫んでスマホを放り出した事がある。
縄文人ならヘビが好きでしょ?と思われたらしいが、私は爬虫類は苦手だから縄文人(見習い)と自称しているのだ(笑)
クリみたいな形だから「クリ坊」と銘を付けた。縄文のクリの精霊という感じ。
ヒスイ原石ストックの中で可愛くなりそうなヒスイは、手ごろな大きさのグレー系の原石だった。
うまく成形すればクリっぽくなりそう、という事で石笛に仕立ててみたが、物足りなかったので二重螺旋模様を線刻してみた。
私なりに可愛いと思うのだが、注文主が可愛いと思うかは別なので、写メでお伺いを立ててみた。
結果オーライで気に入って貰えた。
革紐を付けてオシャレにドレスアップ。
多くのヒスイ職人さんは1~2種類くらいの革紐しか持っていないが、これは「無料のサービスだから」という事らしい。
ぬなかわヒスイ工房では革紐に仕立てた状態で完成と考えているので、一つ一つの作品に似合う革紐をセットアップするために、色や形状、寸法など何種類もの革紐を用意している。
お金はかかるし、時間もかかるが、これは嫁入り前に花嫁衣裳や嫁入り道具を誂える親の心境なのだ。
紐孔の縁取りに当たる光に注目して欲しい。高価なヒスイ商品でも同心円状に研磨されている商品ってなかなかないのだと、お得意様から褒められる部分。
最近は鏡面仕上げの石笛本体とのコントラストが付くので、線刻の内部を研磨せずに完成させている。線刻が下手な時には研磨していたが、今では自信を持って未研磨でお引渡しできるようになった・・・エライぞ俺(笑)
グレー系のヒスイはラベンダーヒスイの成りぞこないに多いのだが、一般的には地味なので商品価値はないとされる可哀相なヒスイ。
商品に作られる事の無い鬼っこヒスイなのだ。
しかしどんなモノにも長所や適材適所はある。
地味だからこそ線刻が映えるし、アイデア次第でオンリーワンの商品が生まれる可能性があるので、私は重宝している。
ぬなかわヒスイ工房は、ヒスイ業界における野村再生工場ですな。
ヘブライ語では「クリ」とは器のことだそうです。
神の音の器たるクリ坊、最高の名前ですね!
ヘブライ語と日本語の同音同意語が300もあるとかないとか言われたことがあり、調べたらほとんどが明治以後に作られた漢語で、意味もこじつけが多かった(笑)
でも神の器、それこそ楽器ですから納得できますね!