獣害を裏返せ!

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【080113】「秋田県民」の肩書に誇り

2008年01月13日 | 獣害-対策:シカ・イノシシ
 岩場の先に広がる壮大な日本海。のんびりと走らせるキャンピングカーの窓から入ってくる乾いた秋風が肌に心地いい。

 1998年9月のよく晴れた日。獣医師今井康仁さん(45)は、東京から車を走らせ、初めて訪れた八森町(現八峰町)がすっかり気に入った。

 88年から8年間、都内の動物病院に勤務。ペットの様子がおかしいとやって来ては、さんざん話をして帰っていく独り暮らしの人や高齢者らと接するうちに、「都会が孤独を生み出している。自分もそうなるんじゃないか」と思っていた。

 96年に乃里子さん(45)との結婚を機に動物病院を退職。「東京を離れ、別の場所で生活しよう」と、蓄えを元手に夫婦でキャンピングカーに乗って全国を旅しながら移住先を探した。

 2年後、八森町が農作物を食い荒らす猿を追い出すボランティアを募集しているのをテレビで知り、「自分もやってみよう」と八森を訪れたのだった。

◎  ◎

 八森で農家の人たちと一緒にロケット花火を放ち、大声を上げて猿を山に追いやった。それでも、猿による農産物の被害は拡大するばかりだった。

 ボランティアをしながら、素朴な暮らしに引き込まれていった。誰もが互いに顔と名前をわかっていて、魚や野菜を交換するのが当たり前のような生活。

 「古き良き日本がここにある」

 今井さんは2年かけて町内に貸家を探し、2000年5月に移り住み、動物診療所を開いた。だが、新天地に暮らし始めて、意外な厳しさに気付いた。「自分に価値がないと、誰も自分に見向きもしてくれない」。猿の被害を食い止める研究を本格的に始めた。

◎  ◎

 毎日のように山を歩き回り、徹底的に猿の生態を調査した。新品の長靴が2週間でぼろぼろになった。調査結果をどう猿害対策に生かすかを考えた。

 そんな今井さんのもとに、町内で農業をしている石岡隆士さん(64)がとれたての野菜を持って訪ねてきた。

 「これ食べてくれ。猿をなんとかしてくれ」

 ほかにも、今井さんの話を聞きつけた漁師が魚を持ってきてくれた。今井さんは猿害対策に、八森に生きる自分の意味を見つけた。

 たどり着いた対策の一つが、猿のにおいをかぎつけ、田畑から追い返す「モンキードッグ」だった。犬なら鋭敏な嗅覚(きゅうかく)で猿を追跡して、追い払うことができる。

 06年、地域の人が、自分たちで猿害を防げるように、犬を飼っている人たちに「飼い犬をモンキードッグにして、田畑を見回ってください」と呼びかけた。

 通行人をかむ事故を防ぐため、犬が命令に必ず従うように、呼びかけに応じてくれた石岡さんら飼い主と犬たちの訓練を始めた。能代市で警察犬を育てている人の協力を得ながら約半年間かけて、6頭のモンキードッグの養成に成功した。

 石岡さんは毎日、犬と一緒に田畑をパトロールしている。「目に見えて被害が減った。モンキードッグなんて発想は、地元の人にはなかった。今井さんは地元にとってはなくてはならない人」と感謝する。

◎  ◎

 今井さんは今も、毎日のように雪が積もる山に足を運び、新たなアイデアを練っている。

 「秋田は、自分の生きる意味や人の温かさを、豊かな自然の中で優しく教えてくれた。今は『秋田県民』という肩書に誇りを持っている」と言葉に力を込めた。

読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/akita/news/20080112-OYT8T00617.htm

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