今日書く話は、非常に危うい内容で、書くべきかどうか悩み続けて来ましたが、やはり情報公開の意味、大義の元、患者さん達に何処の医院で治療受けるのか?と判断する時にお役に立つ話だろう、と思い書くことにしました。
申し訳ないですが、少し難しい話です。
インプラント治療している医院の経営、経済学的側面からの解説で、お金の動きとか、売上と利益、その事業をその医院は継続し続けられるのか、と言う側面からのお話です。
実際に事業をされたり、経営、運営をされた方には、理解していただけるお話だと思いますが、お勤めだけしか経験がないビジネスマンの方、今は少なくなっているでしょうが専業主婦の方、扶養されている子供さんとかの方々には分かり難いお話かも知れません。
でも、何事でもお金の動きを見て行くと、その事業の本質、将来性とか継続できるのか否かの安定性とかを判定するのにお役に立つ知識だと思いますので、どうかお付き合い下さって読んで欲しいです。
決して、損にはならない、後で後悔する羽目になるなんてことのないようお役に立つ情報だと思います。
では、結論から先に申し上げますが、インプラント治療は大量に集中して大きくて手を広げて沢山行うような事業ではないので、そう言う雰囲気のある医院は避けるべきだ、特に市場平均から見た時にやけに低額で提供している医院には行くべきではない、と申し上げます。
理由を、出来る限り分かり易く、経済的側面からお話します。
まず、何事でも事業を行う時には、仕入れ、販売、利益を得る、そして又仕入、販売、利益、と言う循環で経済活動は行われるものです。
インプラント治療でも全く同じで、専門的な知識は最近では大学の授業でも多少取り上げられ、基礎的な話はされるようになって来ていますが、基本的にはその先生が専門的教育を受ける所に、休みの日とかに出掛けて学ぶしかありません。
この、専門的教育が仕入です。
中には、専門的教育なしでは販売してくれない、と言う非常に良心的インプラントメーカーもありますが、今はどのメーカーも事業が厳しいので、そこまでハードル高くしないで、1日だけの講習会受けてインプラントを20本買って貰うとか、そのに付属して専用機器売るとかして売上、利益を確保します。
当然、1日だけの講習会では失礼ですが、たかが知れています。
なので、良心的な先生は、もっと深くしっかりと学ぶ為に、患者さんにちゃんとした医療を行える為に、1年コースとか100時間コースとかに通います。
1年とか100時間とかのコースは1日のコースの10倍ではきかない費用、つまり仕入れのコストが掛かります。
それでも、足りない、もっと世界レベルで治療チャンとしたい、と思う先生は、海外の学会とかにまで出掛け、新しい情報、材料、機器を自己責任で仕入れて来ます。
こう言う事全部、その先生のお考え、気持ち一つの問題で、インプラント治療を世界水準で行いたいと言うレベルから、そこそこに出来れば良い、骨に付かなかったらやり直せば良い、と言うレベルまで色々な差があり、そこの所で仕入れに差が出て来るのです。
そして、仕入れが違えば、当然販売価格も違って来ます。
患者さん側から見たら、同じようなモノを売っているようにしか見えなくても、その治療をその先生が行えるのに当たって、先ず仕入部分でピンからキリまでで差がある、と言うことなのです。
良心的先生は、分かり易い例で言えば、歯科用CTとかマイクロの専用の機器とかの高価なモノまで導入して仕事を為されていることでしょう。
そう言うのも全て仕入です。
ここで、さり気無く書いてしまっていますが、先生が勉強に使っている時間と費用のことにも着目して損はないでしょう。
チャンとした世界標準、世界レベルの治療を行っている先生方は、皆さん必ず勉強に時間を割いています。
診療時間を削って勉強に行く先生を快く思われない患者さんもおられることでしょう。
でも、世界のインプラント治療は日進月歩で進んでいます。
下手すると半年前の治療、3か月前の治療が否定され、書き換えしないといけない、と言うことすらあるんです。
そう言う中で、自分の医院だけに籠り、ただ沢山施術することだけに専念している先生は、お客さんの為に良いモノを仕入れる、と言う商業的観点から考えてもするべきことに対して消極的であり、良くないと分かると思います。
古い、時代遅れの商材しか仕入れない、売ってくれないお店をどう思いますか?
それと全く同じことなんです。
世界最先端で凄いモノ、とかを常に売る必要はないかも知れませんが、せめて平均以上、水準以上のモノは扱っていて欲しい、と思われませんか。
以上、仕入れと言う観点からの基本のお話をしました。
次に、販売、利益を得る、と言う観点からお話します。
販売するとは、つまりはインプラント治療費の設定になります。
何でもそうなんですが、メーカー側は沢山買ってくれる所には値引きをします。
あくまで噂ですが、大量に仕入れると半額にしてくれる、と言う話も聞いたことがあります。
同じものを扱って、仕入れが半額なら、当然その分医院側の負担は減りますので、患者さん側への治療費もその分下げることが可能になります。
そこに大量に売る、治療する医院の秘密があるのです。
でも、この計算には大きな見落としがあります。
それは、インプラント治療は、ただ手術して歯が入ったら終わり、と言うモノではない、と言うことです。
そうです。
インプラント治療は、その後長期に渡るメインテナンス、インプラント支持療法を続けなければならないモノで、そこに掛かるコストはそう軽いモノではない、と言うことなんです。
この観点が決定的に医療経済学的側面から欠けているのが、大量にインプラント埋めることしか考えていない医院の問題点なんです。
低額での大量販売するシステムの医院では、次々と埋める手術するのは良いのですが、その後のメインテナンス、治療期間、更には治療後上部構造の歯が入った後のメインテナンスの負担が重く圧し掛かって来て、やればやるだけ収入を上げる為に手術数も増やさなけれなならない、それに比例して上記のメインテナンスもどんどん増えて行きそのコスト負担も増える、と言う負のスパイラルを構造上抱える事業形態であり、非常に問題の大きいシステムなんです。
更に言えば、先生は段々年を取られます。
そうなれば、そうそう手術数をこなすことは難しくなって行きます。
となると、若い先生入れて代わりに手術させる、手術レベルの維持が難しくなる、勿論総合的治療レベルの維持も難しくなる、と言う問題も抱えることになるんです。
これらは全部、販売する、一定の利益を得る、と言う商業として成り立たせることを考える時に、非常に解決の難しい問題です。
大学のように次々と若い血が入り、優秀な者を残す、と言うやり方、そして医局員の人件費は殆ど0、と言うシステムなら出来るでしょうが、一般的な開業医では、どんなに大きな医療法人だろうと、かなり難しいもんだろう、と言えます。
長期的メインテナンスは大きなコストである、と見切って大量のインプラント施術を誇る医院では、メインテナンスは近くの他の医院でどうぞ、と言う説明を堂々としている、と言う話も聞いたことがありますが、こんなことは言語道断であることは言うまでもないことです。
そして、一番大きな問題が、時間と供に一定の割合で生じるインプラントトラブルのリカバリー問題です。
どんな名医が治療しようとも一定の割り合いで、インプラントにはトラブルが生じます。
これは、40年の歴史、実態からも把握されています。
インプラントは口腔内と言う熱いモノ、冷たいモノ、堅いモノ、柔らかいモノ、芯があって歯ごたえのあるモノ、繊維質で噛み切り難いモノと色々な過酷な環境に晒されています。
天然歯と全く同様です。
そして、患者さんはどういう使い方をされるのか全く予測が付きません。
なので、必然的に、一定の割合でトラブルは生じるのです。
勿論、名医ではない(私とかでもそうだと思いますが)普通より良い程度の先生では、その分トラブル率は増えます。
このトラブル面でのお話は、殆どの先生が明確にお話してくれません。
でも、これは大きなコストになって圧し掛かって来るんです。
やり直し、は患者さんも嫌でしょうし、医療側も嫌なモノです。
一定の割合で生じる、と言うことは、相対的に施術量が増えるなら増える、と言うことです。
それに責任を負わない、と言うのが、一般的大量施術医院の現状なのです。
それは、大きなコストが掛かることが分かっているから、です。
一昨年だったと思いますが、九州の大きなインプラント大量施術医院が事実上倒産し問題が表面化しました。
そして、トラブルが沢山起きていることも表に出ました。
それと同じことが今後全国の似た業態の医院で起こる危険性が高まっている、と私は思います。
健全な医院運営をしていくには、それなりの売り上げ、利益の確保が為されなければなりません。
しかし、そこに掛かるコストとして、ただインプラントの材料の仕入れだけしか考えていない、その後のメインテナンスとか支持療法のことまで考えていない、更には新しい正しい知識の仕入れに時間、費用を割くことを考えていないやり方は非常に拙いのです。
どんどん施術して、お金が入るうちは良いですが、メインテナンスとかのコストが負担になってくる場面に時間掛けて変わって行った場合、それに耐え得るシステムで医院経営、運営をしているのかどうか?が安心出来る医院を見抜くコツ、ポイントになるんです。
その場面で、うちではメインテナンスはしていませんとか、リカバリーは大学に行って下さい、とか自分で自分の尻拭いをする気がない先生、医院は論外ゲスの極みです。
患者さんから見れば、安い治療費で治してくれるのは良い医院、に見えるのかも知れませんが、治したら終わりではないのが医療と言う商業的観点から見た時の仕事の問題点なんです。
患者さんの口腔内の健康、健口を引き受け、ひいてはその患者さんの人生の全ての場面で、良き人生だったありがとう、と言っていただけることを目指す、そう言う先生、医院を探されるべきです。
それには、常に新しいチャンとした知識、技術を仕入れ、時に海外の学会にまで出掛け、長期的予後、支持療法をしっかりとしてくれる、その分のコストと患者さんからいただく費用のバランスを考えて下さる先生、医院を探されるのが良いでしょう。
お金の流れから考えると、本当のことが見えてくる、と言うのは常に真実です。
有名なギャング、アルカポネも財務調査員特別チーム、そのリーダーエリオットネスに逮捕されたのは、お金の流れから不正を確定させられたからです。
ただ、自分がその時に負担するのが安ければ良い、と言う考え方が如何に危険なモノかは、悲しい事故、、残念な事件等で次々と明らかになって来ています。
安全、安心にはそれなりのコストは掛かる、のです。
目先の利益だけで、長期的な大きな問題を抱えないで下さい。
長期的、客観的視点から、考える、と言う癖は、決して損のない姿勢だと私はお勧めします。
本日は、非常に長いブログになってしまい、又難しい話になってしまいましたが、本当のお話です。
是非参考にして下さい。