菅政府がTPP(環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定)へ参画の意思表示しているが、拙速な開国論は疑問ですね。
輸出企業には競争力UPすることは事実であるが、拙速な開国論は、国の基幹である第一次産業の崩壊につながり、第一次産業の海外移転も加速され、地方の疲弊が加速する危険性もあり、アンバランスな産業構造変革を促し、日本社会の崩壊に繋がる危険性がありますね。
TPPは時代の潮流であるが、安直な開国論は日本社会の崩壊を加速化するでしょうね。
戦後の資本主義が歪み、アメリカの新たな商圏確保の模索の象徴的なものがTPPでしょうね。
輸出企業が苦境にたたされているのは、円高、法人税、関税が要因であることは事実で、TPPに参画することで、輸出企業のハンディは軽減され、活況になることは明白で、輸出産業の振興にはTPPの参画は一つの解でしょうね。
一方、TPP参画で、第一次産業、特に農業には深刻な影響を与える事は明白でしょうね。
TPP参画は、農業改革の好機という意見があることは認識しており、TPPに参画の是非に関わらず、農業改革は不可避であることは事実です。
当方は、第一次産業は、国の基幹という考えであり、農業を産業として画一的にとらえることは賛同できず、農業の多様性を活かすべきであるという考えです。
日本農業の現状については、農林水産省大臣官房政策課長の大澤 誠氏が日経ビジネスに『日本農業に未来はあるか 貿易自由化が叫ばれる中で農政のこれからを考える』を寄稿していますが、日本農業はTPPに参画の是非に関わらず、農業改革は不可避です。
一方、10月19日 前原誠司外務大臣が米国戦略国際問題研究所(CSIS)と日本経済新聞の第7回日経・CISCシンポジウムで、講演で”『国内総生産(GDP)の1.5%しか占めていない1次産業の農業を守る為に、残り98.5%のかなりの部分が犠牲になっている』”の主旨の第一次産業軽視のTPP参画は反対ですね。
当方は、日本の農業の危機感をもっており、また、農業の矛盾の問題意識をもっておりますが、農業を犠牲したTPP参画は、地方崩壊につながり、日本社会は混乱するでしょうね。
農業を完全自由化になっても戦える産業に改革すべきという農業を産業論としての論評を散見するが、農業は産業部分と地域の共同体の原点であり、日本の社会文化の基盤と思っています。
財部誠一氏が『守るべき日本の農業とは何か』で、TPPは日本農業滅亡ではなく、滅亡寸前の日本農業の腐った既得権構造に大ナタを振るう最高の動機になると論じています。
現行の既得権構造で硬直化した農業体制を「破壊と創造」すべきと主張には理解できます。
また、専業農家だけを支援し、競争力UPせよの論調への疑問を、有坪民雄氏が「JB-PRESS」に『「兼業農家」と戦って勝てるわけがないドラッカーで読み解く農業イノベーション(4)』で、農水省が打ち出した「兼業農家」追放政策は正論とするが、現実的には疑問視していますね。
有坪民雄氏は、兼業農家を”「将来の土地の値上がりを期待し、低コストで農地を維持して、売却益を得るために農業を続けているのが「偽装農家」だという主張」”を容認した上で、兼業農家は、何故に、赤字であろうが米作を拘っているのは、農家と特有の意識が存在と社会環境を論じています。
兼業農家は、土地を守るのが自分たちの務めだとする思想を親から叩き込まれており、
”『「土地を守れ、手放すな」という教えを守るために、兼業農家はやめた方が経済的にも労働的にもラクなのに農業を続けているのです。そのため、いくら米価が下がっても彼らは退場しません。体が動かなくなるまで、いつまでもコメに執着したままです。』”
と米作に拘りをもっているとし、更に、労働時間の効率面から米作が最適とし、専業農家のみを支援しても、経済性無視の兼業農家には勝てないだろうと論じています。
当方は、専業農家のみを支援し、競争力UPを図れという論調には、違和感をもっています。
植草一秀氏がブログ『GDP比で農業を切り捨てる前原誠司氏の浅薄さ』で、前原誠司外相の日本のGDPに占める農業の比率が1.5%だとしたうえで、「1.5%を守るために98.5%を犠牲にするのか」との農業軽視の発言を批判し、農業の重要性は経済的安全保障上の理由だけに基づかないとし、最も重要な視点は「国土の保全」であるとする意見は同感の思いです。
植草一秀氏は、小沢一郎民主党元代表が9月14日の民主党代表選最終演説での、
”「私には夢があります。役所が企画した、まるで金太郎あめのような町ではなく、地域の特色にあった町作りの中で、お年寄りも小さな子供たちも近所の人も、お互いがきずなで結ばれて助け合う社会。青空や広い海、野山に囲まれた田園と大勢の人たちが集う都市が調和を保ち、どこでも一家だんらんの姿が見られる日本。その一方で個人個人が自らの意見を持ち、諸外国とも堂々と渡り合う自立した国家日本。そのような日本に作り直したいというのが、私の夢であります。」”
を紹介し、
”「小沢一郎氏が強調した、「お年寄りも小さな子供たちも近所の人も、お互いがきずなで結ばれて助け合う社会。青空や広い海、野山に囲まれた田園と大勢の人たちが集う都市が調和を保ち、どこでも一家だんらんの姿が見られる日本の価値を私達は軽視するべきでない。」”
と、小沢一郎氏が述べる青空や広い海、野山に囲まれた田園は、農業が存在することによって、美しく保たれているのであるの意見に同感しますね。
当方は、専業農家のみを支援し、競争力UPを図れという論調には、違和感をもっています。
確かに、埼玉県と同じ面積の休耕田が放置されているのは、異常であり、何らかの農地法改革し、休耕田の有効活用すべきと思っています。
田中康夫氏が『一将功成りて万骨枯る・・・のTPP』で、農業者戸別所得補償制度が第2種兼業農家の不労所得へ変容例として、
”「一例を挙げれば、夫が県庁職員、妻が学校教諭の第2種兼業農家は、給与所得のみでも2人合算で、県民所得の4倍近い年収。米、野菜等の耕作物の殆どは自家消費。申し訳程度に出荷するだけ。週末に小一時間、ガートラ、ガーデントラクターを動かすだけの彼らは、豈図(あにはか)らんや、所得補償金の対象。販売価格よりも生産コストが高いからです。”片手間農家”の公務員世帯が”ヤミ手当”を得る本末転倒です。」”
と、第2種兼業農家への補償制度の問題点を指摘していますね。
当方は、農業改革し、専業農家を支援し、大規模化、ブランド化で、競争力UPは理解できるが、短絡的な産業論での農業改革論には懐疑的です。
第一次産業は国の根幹であり、農業の競争力UPも重要であるが、食料の安全保障の側面からの考察も、日本の「国土の保全」という側面からの考察は不可欠と思っています。
畜産分野では、畜産物1kgの生産に必要な飼料穀物量が【鶏卵:3kg 鶏肉:4kg 豚肉:7kg 牛肉:11kg】と言われ、途上国では穀物の70%は食用であるが、先進国では30%で、70%は家畜の餌になっている現下で、発展途上国が経済成長すれば、穀物の飼料化が加速化され、穀物の確保競争の激化も予想され、日本の食糧の自給自足は国家の最優先課題ですね。
TPP参画を時代の潮流とし、安直な第一次産業軽視のTPP参画には疑問視していますね。
農業の破壊は、地域の共同体社会を破壊につながり、日本社会の崩壊の危険性をはらんでいるという思いですね。
「追記」
① 昨年8月に、本ブログ「農業は営利追求産業なのか?、個人営農は許されないのか?・・・・多面性・多様性が肝要では」で、
”「民主党の農業政策を、FTA締結は日本の農業は壊滅すると騒がれ、戸別保障制度をばら撒きと批判されているが、農業を世界と競争する営利産業と位置づけし、個人営農は社会のお荷物とみるのか?
当方には、そんな2者択一の問題でなく、個人営農が日本の国土保全、食料安定、地産地消、地域文化の継承など日本の原風景を残すことに寄与しており、農業の多面性・多様化に注視すべきと思いますね。」”
と書き、農業の営利産業論は疑問視していました。