「東京は安全!財政安心!」とオリンピックの東京開催が決定。
東京オリンピックの時節とは違い、地殻大変動が騒がれ、原発事故は終息できず、インフラは老朽し、経済は赤字国債体質に陥っており、開催して良いのか疑問ですね。
老化体質に陥った日本社会は、オリンピック開催で経済再興の起爆剤になりえるが、福島原発事故の放射能汚染は深刻な問題を内在しており、福島原発事故の被災者がオリンピック喧噪の犠牲になるのは勘弁してもらいたいです。
当方は、放射能については無知であり、汚染については当事者意識が希薄の傍観者で、環境汚染に放射能汚染が付加された複合汚染には危惧し本ブログを書いてきました。
先の本ブログで、ブログ「暗黒夜考~崩壊しつつある日本を考える~」様のエントリー『シリーズ『THE 隠蔽』 ~福島で増え続ける子供の「甲状腺がん」の実態~』で福島での子供の「甲状腺がん」を取り上げ、福島県・福島県立医大の隠蔽言動を糾弾している内容には同じ印象を持っていると書きました。
当方が甲状腺異常について触発された契機は、2013年1月12日放送のNHKスペシャルの『シリーズ東日本大震災 空白の初期被ばく~消えたヨウ素131を追う~』を視聴し放射能被爆による子供の甲状腺異常は今後増えてゆくだろう思ったことと現場は精一杯努力してなあーと思ったことです。
番組紹介を転載すると、
”「福島第一原発事故の後、政府や東京電力は各種調査に基づき、一般住民に対する放射能の健康影響はほとんど無いと説明してきた。
しかし見過ごされている被ばくがある。事故直後に大量放出された放射性物質・ヨウ素131の影響だ。この放射性物質はチェルノブイリ事故後に急増した子どもの甲状腺ガンとの因果関係が科学的に立証されている。
ただし半減期8日と短時間で消滅するため、放出直後の被ばく回避措置、そしてヨウ素が消える前の正確な被ばく調査が重要となる。
ところが今回はいずれも行われなかった。その結果として、被災地では事故から1年半を過ぎて乳幼児を抱えた親たちの間で不安が膨らみ続けている。
被災者にとってヨウ素被ばくの目安を知っておくことは、今後のガン検診や予防対策に決定的な意味を持つ。住民の切実な要望にこたえようと、研究者がヨウ素被ばく量の実態に迫ろうとしている。
また一方では、放射能測定や気象の専門家チームがセシウムではなくヨウ素の放射能汚染地図を作成に挑んでいる。
様々なアプローチによってヨウ素被ばくの空白が明らかになる中、汚染にさらされた福島県の自治体は独自の健康対策に乗り出し始めた。
番組では最新の科学技術によって失われた時をさかのぼる研究者たちの実証的な知見を総合し、初期被ばくの実態を解き明かす。」”
で、福島県が福島第一原発事故による放射能被曝による甲状腺ガンを否定してる状況下で、専門家チームが甲状腺ガンと因果関係のある放射性物質・ヨウ素131の初期被曝量を推定作業内容と浪江町の町民の健康不安軽減の取り組みです。
当方には、中身の濃い内容で、原発事故の初動の重要性と現場が仕事していると実感しました。
番組は、甲状腺異常と因果関係にあるヨウ素131の被曝量の推定が主題で、【冒頭部】原発事故で放出された半減期8日のヨウ素131は初期被曝調査が行われず健康不安を抱えた現状の問題提起で、【1】ヨウ素131被曝量推定の必要性の背景、【2】浪江町の問題意識、【3】空白のヨウ素被曝量を推定する有志の科学者の活動、【4】浪江町の健康不安への取り組みで構成されていました。
【冒頭部】は、原発事故直後の3月23日にSPEEDI試算による「ヨウ素被曝量の分布図」を公表したが、半減期8日のヨウ素131の実態調査(初期被曝調査)が行われず、国や福島県は”「ヨウ素による健康への影響は考えにくい」”と説明してきたが、正確なヨウ素被曝量が判らない状態で住民は不安を抱え今日に至っていると問題提起です。
【1】では、ヨウ素131被曝量を推定の必要性の背景です。
被曝量がわかない住民は将来への健康不安が高まり、福島県は甲状腺検査を実施し検査を受けた約3割に甲状腺にしこりや嚢胞が見つかったが、ヨウ素131の被曝の影響は考えにくいと説明したが、正確な被曝量が判らず住民に不安が広がる。
国は、一部地区の1000人の甲状腺スクリーニング検査し、その結果を国(枝野官房長官)は、
”「甲状腺への影響した子供はいなかった。
危険な水準に達しているお子さんはいらっしゃらないというデータになっている。」”
と記者会見で述べたが、この検査ではヨウ素の被曝量を正確に把握することはできず、追加調査を検討したが見送りになり、半減期8日のヨウ素131は消滅し住民は被曝量が判らない不安に、福島県は18歳未満住民に、2年1回、甲状腺検査を実施することになる。
【2】では、浪江町は、ヨウ素被曝量の不明に危機感があり、ヨウ素被曝量の把握を模索し、文科省の依頼で原発事故直後3月15日に避難者の検査と除染を実施した床次眞司・弘前大学 被曝医療総合研究所教授の存在を知ることになる。
また、床次眞司教授は検査・除染作業時に、浪江町の避難住民から「自分達がどのくらい被曝したのか教えてほしい」と依頼を受けていた。
床次眞司教授の検査機(ガンマ線スペクトロサーベイメーター)は、国の検査機と異なり避難住民が甲状腺に取り込んだヨウ素131の特定できた。
床次眞司教授が浪江町津島地区に避難してた住民62人の甲状腺測定では7割の46人がヨウ素131を検出しており、46人測定データから甲状腺等価線量を各算出すると成人最大値33mSvを算出され、乳幼児に置き換えると63mSv推計値になり、乳幼児の甲状腺異常の許容値50mSv超える可能性があることが判明する。
床次眞司教授は浪江町の住民の健康管理に引き続き協力することになる。
【3】では、ヨウ素被曝量分布を解明しようとする有志の科学者の1年以上前から活動記録です。
ツールは、光化学スモックの拡散・分布を解析の為に開発された大気シミュレーションで、天候、風向き、地形らのデータが入っていると。
有志の科学者は、
・海洋研究開発機構 滝川雅之さん(大気中の物質移動を研究)
・東京大学大気海洋研究所 鶴田治雄さん(大気汚染の専門家)
・元理化学研所員 岡野眞治さん(環境放射線測定の第一者)
で、ヨウ素拡散をシミュレーションすると原発の南部、北部に拡散していることが判明するが、拡散した量の解明には多くの観測データを必要とした。
観測データは、解明作業当初は茨城、千葉、東京の4ヶ所だけで、実態解明には原発周辺の観測データが不可欠で、データ提供を希望した。
観測は、観測モニターリングポストで行うが、福島原発周辺には23ヶ所のモニターリングポスト全部が地震・津波による停電・倒壊・流失の被害を受けていた。
そこで、福島県は職員による観測車での観測作業を切り替えた。
その任にあたった福島県原子力センターの阿部幸雄さんらは、ヨウ素量を測れるダストサンプラー(空気を吸引装置)を用意し、3月12日 ・13日に原発周辺の15ヶ所で測定し、ヨウ素131の最も高い観測値は浪江町川添地区の165ベクレル/㎥(法定値の33倍)と。
原発水素爆発もあり測定員の安全面から国から測定中止が命じられ、ダストサンプラー測定再開は18日の9ヶ所となり、空白4日間の観測データの欠落がヨウ素被曝実態の解明の壁となる。
事故から半年後、壊れた観測所修復作業で原発25km離れたモニタリングポスト大野局(バッテリ作動)でヨウ素131想定データ、風向き 気象変化など10分毎の観測データを発見し、その後、原発周辺5ヶ所モニタリングポスト、福島第一原発、茨城の3ヶ所の観測データを入手し、有志の科学者は測定データを解析しヨウ素131の拡散の実態(大野局の場合、1号機ベント前(12日午前8時)からヨウ素流失が始まり、急激な増加は14日午後10時以降で15日には前日の10倍が流失)が浮かび上がってきた。
有志の科学者は、放出されたヨウ素総量算出に、
・元日本原子力研究所 研究員 田辺文也さん(原子力事故解析の専門家)に協力を仰ぎ、田辺文也氏はヨウ素131の放出総量をチェルノブイリ事故の1/10に相当の20.6京ベクレルと推定する。
有志の科学者は、事故直後の風向きなどの詳細な気象データ、ヨウ素131の測定データをシミュレーション・システムに入力し、ヨウ素拡散の様子を3次元表示させました。
そして、人がどの程度被曝したのかの甲状腺等価線量を
・茨城県立医療大学 佐藤斉教授(放射線安全管理学専門)
に作成を要請し、佐藤斉教授は、甲状腺等価線量を試算し、5歳児が、12日~31日まで24時間、外気を吸収する最悪の想定モデルでの甲状腺等価線量分布図を作成する。
分布図によれば、沿岸部は50mSvを超える可能性があり吸入したこと可能性は事実であり、住民が何時・何処で何をしてたかが判ればヨウ素被曝の目安となると。
番組では、手弁当での有志の科学者が甲状腺等価線量分布図まで推定作成しており、国が初期被曝調査すればより精度の高い推定が出来た証であり、今後の教訓とともに住民に丁寧な説明し不安を和らげることを望むと・・・同感ですね。
【4】では、浪江町の健康不安への取り組みです。
浪江町は、津島区に避難住民62名のヨウ素被曝量を知ることができたが、大半の住民は不明のままで、将来の健康不安の対策に「健康手帳」を作成するとともに、床次眞司・弘前大学教授にヨウ素被曝検査できなかった多くの住民にも調べてほしいと要請し、浪江町が事故から1年後から独自に始めた町民5489人のホールボディカウンター検査データ(既にヨウ素は消滅)を開示提供する。
床次眞司教授は、事故直後の62名被曝検査のヨウ素、セシウム134の実測データに着目し、ヨウ素:セシウムの平均比率0.23:1を算出し、ホールボディカウンター検査データに半減期2年のセシウム134が残存していれば平均比率0.23:1によるヨウ素131の被曝量を推計。
床次眞司教授は、ホールボディカウンター検査データにセシウム検出は125人で、125人データから甲状腺等価線量を算出しした結果は、最大値は70歳の女性の33mSv、18歳の青年は4mSvで、全体として事故直後の実測地と同じ傾向となる。
床次眞司教授は、”「わからないままでいいの? 目安の数字を出すことに意味にある」”と。
浪江町は、早期発見できる狙いに、年一度の無料の甲状腺のエコー検査を独自に実施。
当方は、当該番組を視聴し、浪江町の町民への健康管理の問題意識の高さに関心しました。
【4】で記述した広島・長崎の被爆者健康管理の仕組みを参考に、直後の行動記録、検査記録を記入する「健康手帳」について、細野則夫・健康保険課長は、
”「私はこういう避難をしました。それから検査をしました。検査の結果がこうでした。
そういう結果が大事なのです。
結果がなければ東電に対するいわゆる自分の健康にたいする賠償であったり、それから国に対して法の整備を求めてゆくのはなかなか難しいと思う。
今後の自分達の生きてゆく糧だと思っていますから、履歴書であり、自分が生きてゆくため糧が、この健康手帳にあるんだというふうに考えています。」”
の言に、現場は仕事しているなーと思いましたね。
原発事故による甲状腺問題については、先のブログで、
”「ブログ「暗黒夜考~崩壊しつつある日本を考える~」様のエントリー『シリーズ『THE 隠蔽』 ~福島で増え続ける子供の「甲状腺がん」の実態~』で、福島で子供の「甲状腺がん」を取り上げ、福島県・福島県立医大の隠蔽言動を糾弾しています。
当方も佐藤雄平知事、福島県立医大については、ブログ「暗黒夜考~崩壊しつつある日本を考える~」様と同じ印象を持っています。」”と書きました。
本ブログ「南相馬市が放射能検査を無視した官僚体質?・・・巨悪は福島県と県立医大!(追記)」(2011-12-29)で書きましたが、佐藤雄平・現知事の言動は好感できず、福島県立医大は福島県の威光を看板に勢力増大させている印象を持っています。
当方は、福島県立医大は、山下俊一氏の名前を上手に使い、原発事故の放射能に関する医療情報の独占化を目指し福島県立医大の権威付けを狙っていると推察しています。
本ブログ「福島原発:「そもそも総研」の避難指示と放射線量について・・・「生殺し」の先導は有識者!」(2013-09-06)で、テレビ朝日の8月29日放送のテレビ朝日の番組【そもそも総研たまペディア】で取り上げたテーマ『そもそも今、国が進めている福島の避難・除染政策は甘いのではないか?』を紹介しました。
番組【そもそも総研たまペディア】では、放射線専門医(北海道がんセンター 西尾正道・名誉院長)の見解を問う場面があり、西尾正道・名誉院長は、”「ICRP(国債放射線防護委員会)の今の放射線防護学というのは広島、長崎(原爆)のデータを基に作って、それ以来ちゃんとした調査もしないでそれだけを押し付けてるわけです。彼らは手持ちで反論するデータがないんです。」”と語っています。
また、政府の有識者による検討の場「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」では、ワーキンググループ共同主査の長瀧重信・長崎大学名誉教授の名前が出てきます。
福島県立医大の副学長の山下俊一氏は、長崎大学理事・副学長、日本甲状腺学会理事長、福島県放射線健康リスク管理アドバイザー等を務めた人物で、長瀧重信・長崎大学名誉教授は恩師になります。
要は、福島県立医大は、長崎大学の山下俊一氏人脈(威光?)を使い、福島原発事故の放射線医療情報の独占化を目指し長崎・福島における原爆・原発の放射能分野での発言力を強固にし権威付けを目論見していると邪推できますね。
マアー、世の中、パワーゲームであり、ドラマ「半沢直樹」の世界だけでなく、科学者・学者も政治的パワーゲームの当事者ですから、政官業の強固な関係つくりに注力するのは当然といえば当然です。
その犠牲に強いられるのが浪江町であり、先鋭的な若手研究者ですね。
老化体質に陥り福島原発事故で苦闘・苦悩している多数の被災者・避難者が存在する現下の日本社会を脚下照顧すればオリンピックで浮かれ騒いでいられないと思いますね。
「追記」
山下俊一氏の発言で物議を醸すことは当方も記憶があるが、当方にはコメントする知識がありません。
ただ、福島県立医科大学がH23.07.01 医学部附属医療制度研究センター 、H23.09.01 放射線医学県民健康管理センターの新設し、「放射線生命科学講座」 「放射線健康管理学講座」の開講し、山下俊一氏がH23.07.15 福島県立医科大学特命教授・副学長(業務担当)(常勤)兼放射線医学県民健康管理センター長に就任し、日本甲状腺学会理事長の要職にあり、師弟関係にある政府の「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」の共同主査の長瀧重信・長崎大学名誉教授の発言に接すると、山下俊一氏が長崎大学、福島県立医科大学のキーマンになっているのは現実と推察できますね。
山下俊一氏は、H23.04.01付けで、研究休職期間満了により長崎大学へ復職し、同大学副学長(福島復興担当)及び国立大学法人長崎大学理事(国際・附置研究所担当)国際連携研究戦略本部長兼産学官連携戦略本部長就任、同時に福島県立医科大学副学長は非常勤となっていますが、福島原発事故の放射線による健康対策のキーマンですね。
当方は、社会のエゴの部分を見聞きしており、ブログ「暗黒夜考~崩壊しつつある日本を考える~」様のエントリー『シリーズ『THE 隠蔽』 ~福島で増え続ける子供の「甲状腺がん」の実態~』で福島での子供の「甲状腺がん」を取り上げ、福島県・福島県立医大の隠蔽言動を糾弾している内容には、社会のエゴに見えるのです。
政治・行政が「専門家の科学的知見」の確証で事を策定することには異論はないが、専門家の科学的知見は、過去の出来事(広島・長崎の被爆、原爆汚染)、実績(チェルノブイリ原発事故)に過ぎず、新しい事象には否定的になるのが世の常であり、放射線被曝の将来の健康不安を過去の知見だけで事を進めることに不安を覚えますね。
本ブログ「環境汚染による複合汚染を軽減させることが人類の平和(所感)」(2013-06-10)で、新たな放射性物質の環境汚染による複合汚染を軽減させることが人類の平和と書きましたが、東京でオリンピック開催が決定した以上、福島復活・復興はもとより、日本は複合汚染軽減で金メダルを目指すことを願いますね。