菅首相は、年頭の記者会見で、目指す国のあり方について、平成23年度を「平成の開国元年」と位置づけ、「最小不幸社会」を実現し、「不条理を正す政治」を実行するという理念を表明。
菅首相は、TPP参画を視野に入れた貿易自由化の促進と農業の再生を目指すということなのでしょうね。
開国には、社会保障を充実する「最小不幸社会」が不可欠とし、税制改革が不可避とし、それらを推進には「政治とカネ」問題をクリアにし、国民の政治不信を払拭したいということなのでしょうね。
菅首相のいう「平成開国=TPP参画」には、「最小不幸社会=社会保障改革=税制改革」と「政治とカネ=信頼回復」ということでしょうが、目指す目標設定がTPP開国ですか?
日本の問題は、戦後の資本主義の歪で「失われた10年、20年」で、「老人性骨粗鬆症」の「老化体質」「自閉気質」に陥っている硬直化であり、日本の再生は、硬直化社会を破壊し、若い世代に、活動の場を提供し、新たな国家の造りを委ねることしかなく、人材育成・教育が最重点課題なのです。
アメリカの影響力は減退し、中国・インドは大国化になり、新興国は経済成長中で、資源の保護主義が台頭し、世界は多極化し、不透明の現下で、TPP開国が目指すことは、農業には刺激になるが、日本再生には直結するか疑問ですね。
韓国勢力の後塵を拝している産業界は、声高に、法人税の減額とTPP参画による貿易自由化で競争力のハンディの軽減を要求していますが、韓国は、1997年の通貨危機によるIMF管理下に入り、改革を余儀なくされ、
① 財閥解体(1財閥3事業まで)、
② IT産業奨励、
③ グローバル化(英語教育、新興国進出等)
を掲げ、構造改革を取り組むが、2008年の原油高騰、リーマンショックで、ウオン安で通貨不安になったが、EPA(経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)の貿易自由化を積極的に取り組み、農業改革し、「ものづくり立国」を目指し、経済成長が好調に推移中。
「文藝春秋」(2011.2)に、新日本製鐵会長の三村明夫氏が寄稿の『これが日本経済を復活させる起爆剤だ』(韓国を見習い「ものづくり立国」の再興を)で、韓国経済好調の背景を掲げ、日本の産業界に、競争条件を海外企業とそろえる「イコール・フッティング」だけの実現を切望しています。
三村明夫氏は、日本経済の復活は「ものづくり立国」しかないとし、
”「日本は、20数兆円の原油、原料、食料などを海外からの輸入に頼っています。どうしてもこの分の外貨は稼がなければなりません。それを支えてきたのが、自動車、電機、家電、産業用機械、鉄鋼などのものづくり産業です。そうして得た外貨で、食料とエネルギー資源を輸入し国民生活を支え、今度はその資源を加工して輸出する。その日本経済の構造は、今後も不変だと思います」”
と、世界で戦う上では、すくなくともライバルと競争条件が等しくないと戦えず、日本企業に特有の足かせが存在し、国際競争に不利に働き、企業は海外転出せざるを得ず、国内空洞化になるとし、韓国の貿易自由化を取り上げ、TPP参加が不可避と論じています。
三村明夫氏は、企業の海外転出の背景に、
”「① 市場の縮小する国内よりも、成長するマーケットで生産する方がいいから
② 法人税や関税、雇用ルールといった面で、もはや日本に生産拠点を置くメリットを感じられない」”
とし、競争条件を海外企業とそろえる「イコール・フッティング」が不可避を論じています。
一方、三村明夫氏は、TPP開国の推進派ですが、農業は地方経済のためにも絶対に不可欠とし、農業を関税で保護する時代でなく、農業の競争力を強化する方向に投資すべきと論じています。
当方は、三村明夫氏については、リーマンショック後、本ブログ「野口悠紀雄教授と三村明夫会長の景気観について」でも、取り上げました。
リーマンショック後、経済規模が縮小した世界的恐慌時に、三村明夫氏の”「「良い赤字決算」して好景気を迎えるまで捲土重来を期して、企業は体質改善に努めよ」”とは企業論理と書きました。
現実に、企業にとって「設備過剰」、「雇用過剰」+「債務過剰」を生産調整、在庫調整により経済規模の縮小による不況対策し、果たして、捲土重来を期しての体質改善をし、社会変革を促してきたか疑問ですね。
韓国は、日本と同様に資源もなく、産業立国が宿命ですね。
韓国は、通貨危機による国家経営が破綻に直面し、IMF管理下に入り、国家の構造変革せざるを得ず、農業を大規模化し、貿易自由化による産業立国を目指し、現在は成功裏に進行しているのです。
ただ、言えることは、グローバル化を目指した教育にも注力したことです。
三村明夫氏の言う競争条件の「イコール・フッティング」は、産業界とすれば当然の声でしょうが、政府が追随しなければ、海外転出せざるを得ず、空洞化も当然でしょうね。
問題は、「イコール・フッテイング」の環境整備されれば、空洞化が回避され、「日本の国民が安心・安全に暮らせる社会」が実現できるかどうかですね。
当方は、競争条件の「イコール・フッテイング」の環境が実現しても、グローバル化は、より進行し、空洞化は、より深耕すると想像します。
要は、競争条件の「イコール・フッテイング」の有無に関わらず、グローバル化とローカル化は同時進行すると思いますね。
問題は、グローバルとローカルのバランスが肝要と思いますね。
農業改革も、貿易自由化も、同時に取り組む問題であり、競争力のある農業も、自然保全・地産地消・自産自消の農業も大事であり、海外生産による競争力ある産業も、匠技の中小企業群も不可欠であり、要は、グローバルとローカルのバランスでしょうね。
言えることは、人材育成が最大の課題と思いますね。
本ブログ「日本は韓国に勝てない教育事情・・・日本の成熟か?、老化か?」で、福原正大氏が「JBpress」に寄稿の『韓国に絶対勝てない日本、理由は教育にあり』(株価が50倍になったサムスン電子の採用はここが違う!)を紹介し、韓国の教育は異常とも言えるほど過熱しており、
”「韓国をキャッチアップするのは至難の技であるが、グローバルで通用する人材育成「教育」が急務ですね。
ただ、競争激化は避けられないが、韓国なみの教育熱は遠慮したいですね。」”
と書きましたが、日本再生は、人材育成「教育」しかないのが事実です。
ただ、昨日、TV朝日の「スーパー・モーニング」番組で、「K-POP」を取り上げていましたが、日本の影響を受け「K-POP」が醸成され、それを韓国流のグローバル志向の産業への発展を紹介していましたが、ソフト産業が「産業貿易立国」の露払いする効用があると認識しましたね。
日本の従来思考の「ものづくり立国」論だけでなく、日本の文化が海外で親和性を醸成することで、日本製品への露払いできる効用があるという観点も大事と思いましたね。
韓国は、日本以上に、産業貿易立国の宿命があり、経済成長をし続けてゆくことは、辛いですね。
小沢一郎氏の唱える「自立と共生」の国家ビジョンに、親近感を感じる昨今ですね。