Niyatsukuのあなろぐゲーム探検隊

ドイツ発信、電源不要な傑作ゲームの数々。
遊びやすくて抜群の面白さ、その謎を追え!

ヘックメック

2005年09月30日 | ボードゲーム
巷では、虫の燻製が大ブレーク!
「この店の虫は最高にうまいぞ」と今日もお店は大繁盛。
さあ、売り切れる前に買い込め、買い込め。

う~ん、謎な設定。
そういえば、以前、虫入りキャンディーがブレークしたような・・・。

『ヘックメック』は、8個のダイスを遣り繰りして合計値をできるだけ大きくし、虫の燻製を誰よりもいっぱい買い込むダイスゲーム。小さな箱の中には、ルールブックのほかには、16枚の虫タイルと8個のダイスだけというシンプルさ。でも、面白さは満載ですから。

ゲームの構造は次のようなバースト系。
・手番では「続行」か「終了」のいずれか好きに選択。
・「続行」すればするほど、利益の増加が見込める。
・「終了」を選択してはじめて利益は自分のものとなる。
・「続行」するには、一定の条件をクリアする必要がある。
・もしクリアできなければ、利益は何も得られず、手番終了。

バースト系なもんですから、手番を続行すればするほど利益の増加も見込める代わりに、リスクも高まるわけでして。『ヘックメック』では、既に選んだダイス目はもはや選べないというルールと、手番続行のたびに振り直すダイスの数が減っていくこと、これでリスクの高まりを表現しております。

加えて、もうひとひねり。
『ヘックメック』で使うダイスには1~5の目と、6の代わりにムシの描かれた目が。虫タイルを獲得するには、最低1個以上はムシの目が出ていること。これが必須条件でして。そして、ムシの目は5点として換算。これがどういうジレンマを引き起こすか。「ムシの目がたった1個かぁ。でも、これを取り分けても5点にしかなれへんしなぁ。うん、別の目を取り分けることにしよう。振り直して、ムシの目が3個くらい出たらラッキーやし・・・」と手番を続行するが、振れども振れどもその後にムシの目は出てこず、結局バーストする羽目に。という具合。つまり、バースト系システムの中に、もう1つ別のジレンマが内在している、というのがこのゲームのアイデア。クニツィーア、さすが。

工夫はこれだけにとどまらず、虫タイルにも。
虫タイルは16枚あって、21~36までの数字が書かれている。ダイスの合計がその数字に達していたらタイルをもらえる。20代前半くらいの数字は容易に達成できるので、そのあたりのタイルから売れ始め、難易度の高いタイルが売れ残る。つまり、ゲームが進むにつれて、徐々に大きい数字にチャレンジしていくように導かれ、盛り上がり曲線は右肩上がりに。この演出がニクイ。

さらに、盛り上がりを演出する要素として忘れてはならないことが。
それは謎のテーマ『虫の燻製』。
なんで虫の燻製やねん? と思うけど、ゲーム中は「頼む、ムシ出てくれっ!」「っしゃあ、ムシ出たー!」「ウォッホー、ムシ4つゲットォー!!」などと、虫はいつでも大人気。この盛り上がりは、やはり『虫の燻製』だからと言ってよいだろう。(ナンチュウ、エエカゲンナ分析ヤネン!)

簡単かつお手軽に盛り上がれる、全体的によくまとまった優等生的な好ゲームといえるのではないでしょうか。他人のタイルを奪えるルールについて、5人以上くらいで遊ぶとゲームがぐだぐだと終わらない点がよく指摘されてますが、それについてはまた改めて。

[data:Heckmeck 2~7人用、Reiner Knizia作]

砂漠を越えて

2005年09月27日 | ボードゲーム
オアシスは 砂漠の民の 生命線
水を求めて 砂漠を越えて

さあ着いた うわあラクダで いっぱいだ
なんでこんなに うじゃうじゃいるの

という陣取りゲーム。

おとつい紹介した『ブロクス』同様、完全情報型のゲームながら、長考にならずテンポよく進み、もちろん考えどころはしっかりとある。ルールもシンプルで遊びやすい。個人的には『ブロクス』よりもこっちが好み、というお薦めゲーム。

このゲームの特徴は得点方法が数種あること。刻々と変化する盤面を見据えながら、最適な得点方法はどれか見極めるのがこのゲームの醍醐味。あっちにもこっちにもそっちにもラクダ駒を置きたいんだけど、1回の手番で置けるのはラクダ2個だけというのが悩ましいネエ。

まず「井戸」について。
1~3点の井戸チップが、ボード上にわんさか散りばめられていて、ラクダ駒をそこに配置すれば、その井戸チップがもらえる。早い者勝ち。

続いては「オアシス」。
ボード上に5箇所あるオアシス。そのマスに接するようにラクダ駒を置けば5点。マス目は6角形なので、1つのオアシスで複数プレイヤーが得点できる。邪魔されることも多々あるが。

そして「囲い込み」。
囲碁のように土地をラクダ駒で囲ってしまえば、囲ったマス目の数だけ得点。その中にオアシスや井戸が含まれていれば、それも得点になるのでかなり効率的。安田均氏の『ボードゲーム大好き!』の中で、「プレイ人数も2人から5人で、ゲームの感触ががらりと変わる」と紹介されているのは、おそらくこの部分。2人ならば囲い込み作戦が主流だけど、5人ともなると相対的に土地が狭くなるので、それは難しい。ゆえに、井戸やオアシスを直接狙う作戦が主流となる。

最後に「各色ボーナス」。
得点源が「井戸」「オアシス」「囲い込み」だけなら平面上を争うゼロサムゲームに過ぎない。ところが、このゲームではもう1つ、別の軸のゼロサム要素が用意されている。それがゲーム終了時に加算される各色ボーナス。ラクダ駒には5色あるが、それぞれにつき、その色のラクダを一番多く配置したプレイヤーに10点のボーナス。この得点方式がゲームに奥行きの深さを与えている。ファンタぁスティック!

つぎに、このゲームが長考にならず、テンポよく進む工夫について。

①シンプルな手番アクション
5色あるラクダの群れをそれぞれに率いる5人の族長。ゲームはまず、この5人の族長を順番に配置していくフェイズから始まる。その後の得点方法を頭の中でイメージしながら配置。全員がすべての族長を配置し終えたら、このフェイズは終了。その後は、自分の手番になったら、好きな色のラクダ駒を2個選んで配置していくだけ、というシンプルさ。また、この「2個ずつ配置」というのがテンポのよさを生み出している。

②配置制限
ラクダ駒は、既に配置済みの同色ラクダの列につなげるように置くこと、というのがしきたり。配置箇所が制限されているので、何色のラクダをどこに置くか、さほど長考することもない。

③散りばめられた得点源
このゲーム、深く先を読んで打ち筋を考えるというよりは、「この3点の井戸はとりあえずゲットしとかないと」という感じで、ゲーム開始当座の打ち筋の指針がはっきりしているので、ゲームはテンポよく進みだす。随所に散りばめられた井戸やオアシスが、プレイヤーの意思決定を支援してくれる、といった具合。

さらに、このゲームの素晴らしい点を2つほど。

まずは、終了条件について。
ある色のラクダ駒がすべて使われた時点でゲーム終了。各色ボーナスのルールがあるので、「この色は譲れぬ!」「いやいや、この色はオレがもらった!」と競争が激化するほど、ゲームは加速度的に終了に向かう。他のプレイヤーは思惑を崩されて「ああ、まだ遣り残したことが・・・」と焦りだすことに。ワンダホぅー!

そして、ゲーム過程における思考の変化について。
ゲーム開始時は、井戸・オアシス狙いか囲い込み狙いか、このあたりを念頭に手を考えるが、ゲーム中盤から終盤にかけては各色ボーナス狙いが重要になってくる。このように思考の流れがシフトしていくところが、なんとも素晴らしい。エクセレンっ!

[data:砂漠を越えて(Durch die Wuste) 2~5人用、Reiner Knizia作]

ブロクス・デュオ

2005年09月26日 | ボードゲーム
最近『ブロクス』の2人専用版、『ブロクス・デュオ』が発売された模様。

遊んではいないが、多人数による乱数効果がない分、『ブロクス』よりも重めの感触になっているのではないだろうかと推察。もちろん、経験者同士が遊んだ場合の話ですが。

どないでっしゃろ?

ブロクス

2005年09月25日 | ボードゲーム
このうえなくシンプルなルールながら、
しっかりと考えどころがあり、
それでいて30分程度で決着がつき、
何度も繰り返し遊べる工夫もある。
加えて、見た目もカラフルでスタイリッシュ。
これは、アブストラクトゲームとしての出来の良さは相当なものでは?

アブストラクトというと、将棋やら囲碁やらチェスやらと、やたら頭を使うゲームが多い。そして一手々々が重たく、重大局面に至るや、もう恐るべき長考っぷり。これは互いの情報が完全にさらされているので、「・・・こう打てばああ打たれ、ほんならこうで相手はああで、こうでああで・・・」とぶつくさ延々と何手先も読もうとしてしまうから。

『ブロクス』も完全情報型で運の要素は一切ないのに、さほど長考することもなく、ゲーム自体も30分ほどで終わる。その工夫やいかに?

①21個のピース
手駒として21個のピース。形は色々とあって21個すべて異なる。このことが毎回違ったゲーム展開を生み、繰り返し遊ばせる工夫になっている。よく考えてみれば、これってスゴイ。例えば、将棋でも歩やら飛車やら桂馬やらがあって、それぞれ異なる能力があり、それらが毎回違ったゲーム展開を生んでいる。将棋を初めて遊ぶ人は、駒ごとの能力を覚えるのは結構大変だけど、『ブロクス』のピースは21個もあるのに、誰もがひと目で能力の違いを理解できてしまうんだから、スゴイ。(感心してるのって、私だけ? もしかして・・・。 スゴイよね? ね!)

②配置ルール
配置済みのピースと、これから置こうとするピースの角っこと角っこが接するように置くしきたり。変な置き方やなぁ、というのが最初の感想。でも、この配置ルールのおかげで、相手のピースを擦り抜けて新天地開拓っ!というような新食感の陣取りゲームに仕上げられている。 それだけではない。この配置ルールは、いわばピースの置き場所を制限するもので、選択肢を絞る役目を担っていると言える。だから、あんまり長考することにもならない。

③多人数ゲーム
将棋と違って4人まで遊べる。というか、このゲームはまず4人専用と言っていい。将棋ならば、ある程度相手の考えを読めるけど、自分以外に3人もいれば、まず読みきれるものではない。

結論。
多人数プレイと、ピースの形が全部違うこと。これがプレイヤーに先読み長考を諦めさせる。そして、ピースの配置ルールが置き場の選択肢を狭めて、長考にならないようにしている。

もう一言。
運の要素がないので、初心者は経験者に勝てません。同じレベルの人たちで遊ぶほうが楽しいでしょう。

さらに一言。
遊んでいるうちに、相手をブロックしつつ自分の活路を開く、というのが基本戦術だと分かって来ます。当然相手もそう考えるわけでありまして。あっちにもこっちにもそっちにも置きたい、というのに1回の手番では1箇所しか置けないジレンマ。断腸の思いで置いたそのピースが、無常にも相手から押さえ込まれる羽目になるや・・・断末魔のうめき。この手の苦しさは個人的には苦手。初心者どうしで遊んでいるうちは楽しかったな・・・。


[data:Blokus 2~4人用、Bernard Tavitian作]

コヨーテ

2005年09月24日 | ボードゲーム
大のオトナが頭に鉢巻きまいて、
額と鉢巻きの間にカードを差して、
そのおバカなシチュエーションだけでかなり笑える、
イタリア発の爆笑パーティーゲーム『コヨーテ』。

このゲームも『ブラフ』と似ている。
・手番で、数字を言うときにはったりをかましてよい。
・手番では、前の人より大きな数字を言うか、前の人にダウトをかけるか。
・バーストに向かって高まる緊張、その後、答え合わせで一喜一憂。といった緩急の波。
といったあたりは『ブラフ』と同じ。

『ブラフ』で、手持ちのダイスを1個ずつにしてみる。それから、自分のダイスは自分では見れなくて、逆に自分以外のみんなのダイスを見れるようにすれば、それが『コヨーテ』。

でも、もし『ブラフ』を上記のようなルールで遊んでみれば、ぜんぜん面白くないことがすぐに分かる。だって、自分以外のダイスはすべて見えているわけで、自分のダイス自体は見えないにしても1から5のどれかしかないわけだから、おおよそ察しがついてしまう。それではゲームにならない。

というわけで、『コヨーテ』では、数字カードは1・2・3・4・5・10・15・20とダイナミックに差が付けられている。加えて、-5や-10、最大数をゼロにしてしまうもの、合計値を2倍にするもの、ラウンドの最後にデッキから引いた1枚も数に加えるもの、などの特殊カードもある。このなんともド派手なカードたちが、爆笑を生み出す。

とんでもない数字が宣言されるたびに、「えぇエッー!? あり得ねぇー」と困惑顔。でも、特殊カードのおかげであり得ないとは言い切れない。例えば「50人!」てな大人数を宣言されても、合計値を2倍にする特殊カードが自分の額に張り付いていれば正しいのかもしれないし。もちろん、単なるはったりの可能性も。

さあ、あなたもおバカなノリで楽しもう! このゲームも『ブラフ』同様に負け抜け方式だけど、ゲームから早々に脱落しても、傍から見ているだけで充分楽しいよ。

[data:COYOTE 2~6人、Spartaco Albertarelli作]

ファブ・フィブ

2005年09月23日 | ボードゲーム
嘘つき妖精たちが集い、嘘つきナンバーワン決定戦をおこなうカードゲーム。カードの絵柄が独特でちょっとだけ不気味だが、私は好き。

このゲーム、『ブラフ』とすごく似ている。
・手番で、数字を言うときにはったりをかましてよい。
・手番では、前の人より大きな数字を言うか、前の人にダウトをかけるか。
・手番で、前の人より大きな数字を言う前に、カードを何枚か捨ててデッキから補充してもよく、これは『ブラフ』における第3の選択肢「振り直し」に相当。
・バーストに向かって高まる緊張、その後、答え合わせで一喜一憂。といった緩急の波。

もちろん、このゲームならではの工夫も。『ブラフ』ではダイスを使ったけど、このゲームではカードを使う。最初のプレイヤーは、0から9までの数字が書かれたカードを3枚取って、3桁の数字を作る。このとき、数字の大きい順に数字を作るのがしきたり。例えば「3」「8」「5」の3枚なら「853」という具合。で、「999」が最高値なわけだから、前の人より大きな数字を宣言し続けると、いずれ限界に。

というように両者は似ているけど、違う点もいくつかありまして。

①嘘は嘘でも・・・
『ブラフ』では、自分のダイス目は分かるけど、他人のものは分からない。つまり、プレイヤー各々が一部の情報は知っているけど、全ての情報は誰も知らない。だから、はったりの数字を宣言する場合、まず正解をなんとなく推理して、その根拠のない正解に基づいて嘘をつくと言う、砂上の楼閣のごとき思考プロセスを踏む。全部のダイスも明けてみると、はったりと思っていたら案外正解に近いなんてことも。

他方『ファブ・フィブ』では、自分の手番では、自分だけが全ての情報を知っている。だから、はったりの数字を宣言する場合、それが100%嘘だと分かっている。それを見破る側からすれば、『ブラフ』における自分のダイスのような自己情報源が少なく、宣言された数、交換したカード枚数、その人の言動や性格、といった他人が与えてくれる情報にもっぱら依存。ゆえに『ファブ・フィブ』のほうが、嘘をつく時に演技力が問われる。

②カードの交換
『ブラフ』における第3の選択肢「振り直し」。これは「ブラフ!」とも言いたくないし、かといって数字を吊り上げるのもどうか、というときに行う。数字を吊り上げた上で、自分のダイスをエイヤッと振り直す。うまく行くかどうかはギャンブル。

この「振り直し」は『ファブ・フィブ』ではカードの交換に当たる。ただし、手番のたびにカード交換することになるので、『ファブ・フィブ』のほうがギャンブル度は高いと言えるかな。

③ゲーム性の変化
『ブラフ』では終盤に向かってダイスの全体個数が減っていくほどに、心理戦の様相が深まっていくという、ゲーム性の変化が隠し味となっている。他方、『ファブ・フィブ』では毎回リセットされて、同じ状態でゲームを再開するのでゲーム性は一定。ゲームを何回も繰り返して遊ぶのなら『ブラフ』のほうがいいかな。

比較はこれにて終了。
どちらが優れているかということを言いたかったのではなくて、ゲーム性の違いはどこから生まれるのかを考えてみたかったのです。どちらもシンプルながらエキサイティングで、心理的な駆け引きが抜群に楽しいゲームです。


[data:FAB FIB 3~10人、Spartaco Albertarelli作]

ブラフ

2005年09月22日 | ボードゲーム
31個のダイス。
6個のカップ。
ゲームボードが1枚。
それにルールが書かれた数ページの紙。
箱の中身はたったこれだけ。
でも、遊んでみれば楽しいんだな、これが。

ドイツのボードゲームには、こういったシンプルなのに面白いゲームが山ほどある。遊び出すやいなや、いつの間にか楽しい空間がそこに出来上がる。特殊な装置が内蔵されているわけでもないのにね。簡単なルールにしたがって遊ぶだけで、誰でも面白さを満喫できるのはほんとに素晴らしい。そうなるようにデザーナーが意図しているわけだけれど、その仕掛けとはいかなるものか? それを考えてみるのが、このブログ全体を通じてのテーマ。

さて、まずはごく簡単にゲームの概要から。
全員が振ったダイスカップの中に隠されたダイスの目の数を推理するゲーム。自分の手番になったら、(1)直前のプレイヤーが宣言したダイスの目の数が間違っていると思うなら「ブラフ!」と言って全員のカップの中身を確認するか、あるいは、(2)正しいと思うなら前の人の宣言よりも大きい数を宣言しなければならない。前の人より大きな数を宣言し続けるといずれ限界が来るので、そのうち誰かが「ブラフ!」と宣言する。そしたら全員のカップの中身を調べて、間違っていた方が手持ちのダイスをいくつか失う。手持ちのダイスすべてを失った人から脱落していき、最後に残った人が勝ち。(ほんとはダイスの振り直しという第3の選択肢があるんだけど、ここでは省略。)

かように遊び方は至極簡単。でもって抜群の楽しさ。その仕掛けやいかに?

①推理のための材料
ダイスは各自のカップの中に納まっているので、何の目がいくつ出ているのかは分からない。でも、まったく想像がつかないわけではない。推理のための材料はいくつかある。

まず、カップの中に潜むダイスの数は全部でいくつあるか。これは分かるようになっている。それから、ダイスの目。1から5の目と、6の目がなくて代わりに☆印。この☆印はどの目でも代用可能。したがって、1の目が出る確率は☆印の分も入れて1/3。これらの手掛かりから、ダイスが全部で30個あるなら、1の目は確率的には10個前後あっても不思議ではない。そのはずだよね? というのが情報その一。

つぎに。
自分のカップの中はこっそり見ても良い。例えば自分のダイス5個のうち4個が3の目だったら、全体でも3の目はそこそこ多いに違いない。だよね? というのが情報その二。

さらに。
他の人が宣言した数。直前の人が「2の目が10個!」と力強く言い放ったなら、その人はおそらく2の目のダイスをいくつか持っているに違いない。でしょう? というのが情報その三。

最後に。
今、他の人が宣言した数も情報源のひとつ、と言ったばかりなんだけど。事実はカップの中に隠されてるし、信用していいものかねぇ。だって、ゲームの名は『ブラフ』。『はったり』の意。嘘をつくのは許されるのよ。これが、このゲームのポイント。だから、相手の声のトーンの微妙な違い、ちょっとした仕草、性格なども嘘を見抜くための重要な情報源。

②数字の吊り上げ
直前の人の宣言が正しいと思うなら、今度は自分が前の人の宣言よりも“大きい数”を宣言しなければならない、というルール。この数字を吊り上げていく行為は、まるでロシアンルーレットのよう。銃弾が込められたピストルをこめかみに当て、カチッと音をさせながら、一人ずつ順番に回していく感じ。自分に回ってくるまでの「間」が生むスリル。

ロシアンルーレットの恐怖は、「カチッ」「カチッ」と順番が近づいてくる「間」だけではない。死ぬのは誰か一人だけであって、自分が生き延びる確率はゼロではないという「可能性」。この可能性が生き延びたいという欲求を高めて、その裏腹として「オレは死にたくない!」と強烈な恐怖心を生む。

この点でも『ブラフ』は似ている。間違っても自分の番で「ドキューン!」と音がするのを聞きたくない。例えば6人プレイの場合なら、自分以外のプレイヤーが「ドキューン!」となる可能性のほうが高い。といっても、『ブラフ』は負け抜け方式なので、ゲームの勝者以外はみんなそのうち「ドキューン!」である。その点では、一人しか死なないロシアンルーレットよりもっと恐ろしいと言えよう。(いやいや、間違いなくロシアンルーレットのほうが恐ろしいて!)

③カップを開いて一喜一憂
誰かが「ブラフ!」と宣言すれば、全員のカップの中身を調べて答え合わせ。間違えた人は、宣言した数と実際の数の“差分だけ”ダイスを失うというルールにより、その結果に一喜一憂。手持ちのダイスに余裕があると思っていても、一撃ですべて失うことすらあるダイナミックさ。

③ダイスの減少とともに
序盤にはたくさんあったダイスはだんだんと減っていき、終盤に向かうほどに心理戦がものを言う。このゲーム性の変化。これが面白さのスパイスとして密かに効いている。また、ダイスが少なくなるにつれてテンポもアップしていく。これもちょっとしたスパイス。

④緩急の波
バーストに向かって高まる緊張、その後、答え合わせで一喜一憂。この緩急の繰り返し、緊張感のリズミックな波、これがまた面白さの基本構造。


[data:BLUFF 2~6人用、Richard Borg作]

ミシシッピー・クイーンのバリアント2

2005年09月21日 | バリアント・ルール
バリアントその2『女スパイ』

【メモ】
オリジナル・ルールでは、令嬢をなかなか乗船させることができないプレイヤーには勝ち目がないので、その救済を目的としたバリアントルールを考えてみました。

【事前の準備】
・令嬢駒のうち4個を黒色に、1個を赤色に油性マジックなどで塗る。
・巾着袋を用意し、令嬢駒すべてを袋の中に入れる。

【バリアント・ルール】
・新たに置かれた河川ボードに船着場があれば、オリジナル・ルールどおりの数だけ令嬢駒を配置する。令嬢駒は袋からランダムに取り出す。
・令嬢駒には次の3種類があり、黒と赤の令嬢は「女スパイ」を表し、破壊工作によりペナルティを受ける。
(a)赤の駒:乗船させた時、石炭を2個失う。
(b)黒の駒:乗船させた時、石炭を1個失う。
(c)白の駒:特にペナルティはない。
・船着場に“黒と白”の令嬢がいる場合、“黒を優先”して乗船させなければならない。
・船着場に“赤と白”の令嬢がいる場合、“赤を優先”して乗船させなければならない。
・船着場に“赤と黒”の令嬢がいる場合、“赤を優先”して乗船させなければならない。
・上記以外はオリジナル・ルールと同様。

以上、バリアントその1と合わせてのご利用をお薦めします。
『ミシシッピー・クイーン』に日の光を!

ミシシッピー・クイーンのバリアント1

2005年09月20日 | バリアント・ルール
川の蛇行するアイデアが、私のお気に入り。
でも、面白さはイマイチ。
何とかならんものか、とバリアントルールを一考。
押入れの奥に隠しておくにはもったいないゲームです。
ぜひ、皆さんの『ミシシッピー・クイーン』にも日の光を!

というわけで、バリアントその1『ハプニング・リバー』。

【メモ】
オリジナル・ルールでは河川ボードの配置しか運の要素がないのですが、もう少し運の要素をまぶしてみました。だって、大自然には時として人智を越える力が働きますからね。また、令嬢をなかなか乗船させることができないプレイヤーにも、できるだけ最後まで勝利のチャンスがあるように計らってみました。

【事前の準備】
・以下の22枚のカードを事前に作成する。(このバリアントでは河川ダイスは使用せず、代わりにこのカードを使用。)
《矢印カード:まっすぐ》(5枚)
《矢印カード:右折》(5枚)
《矢印カード:左折》(5枚)
《ハプニングカード:「船首を1、右に回転」 》(2枚)
《ハプニングカード:「船首を1、左に回転」 》(2枚)
《ハプニングカード:「スピードを2、アップ」 》(1枚)
※最高速度に達すれば、それ以上速度は上がらないものとする。
《ハプニングカード:「スピードを2、ダウン」 》(1枚)
※速度に1になれば、それ以上速度は下がらないものとする。
《ハプニングカード:「スピード 1⇔2、3⇔4、5⇔6」 》(1枚)
※速度が1の船は2に、2の船は1に変更する。以下同様。
・22枚のカードをよくシャッフルして、場の中央に裏向きに置く。

【バリアント・ルール】
・オリジナル・ルールでは、先頭の船が先端の河川ボードに進行した時に、次の河川ボードを配置するのに河川ダイスを振るが、その代わりにカードを1枚めくる。
・《矢印カード》が出た場合、その矢印の向きにしたがって河川ボードを配置。
・《ハプニングカード》が出た場合、以下の船に対してのみ、その効果を適用。
①令嬢を2人乗せた船があれば、それらの船に対して適用。なければ②へ。
②令嬢を1人乗せた船があれば、それらの船に対して適用。なければ③へ。
③令嬢を乗せていない全ての船に対して適用。
・《ハプニングカード》の効果は、めくられた直後に“ただちに適用”される。後続のプレイヤーがまだ手番を始めていないとしても、ただちに適用される。
・《矢印カード》が出るまで、カードをめくり続ける。
・もし《ハプニングカード》が連続してめくられれば、効果も連続して適用される。

以上、ちょっと準備が面倒ですが、『ミシシッピー・クイーン』に日の光を!を合言葉にぜひ。

ミシシッピー・クイーン

2005年09月19日 | ボードゲーム
ミシシッピー川最速の蒸気船に贈られる“ミシシッピーの女王”の称号。その栄誉を賭けて行われるレースゲーム。このゲーム、97年ドイツ年間ゲーム大賞を受賞しているんだけど、その割に巷の評価がすこぶる宜しくない。中には「2回目を遊ぶことはないだろう」「買って損した」などの声も。まあ、理由は分からなくもないけど、それほど悪いゲームでもないと思うねんけどなあ。蛇行する川を表現したボードはアイデア抜群やし、ビジュアルも綺麗で、ほんまに川をレースしている気分に浸れるし。

プレイヤーが操縦する蒸気船には、石炭の量とスピードを表す2つのメーターがあって、これはプレイヤーが完全にコントロール可能なので、船の操縦に運の要素は一切なし。また、これらの情報はオープンされているので、他人の船の状況もひと目でわかる。つまり、このゲームは運の要素を最小限にとどめて(河川ボードの配置をダイスで決めることが唯一の運要素)、「実力で真っ向勝負だっ!」という大変硬派なレースとして仕上げられている。

でも、このことがねぇ・・・。以下、問題点を分析。

①実力の差が出やすい
操船技術に運の要素が絡まないので、初心者は経験者にまず勝てない。だから初心者と経験者がいっしょに遊びにくい。でも、これはハンディキャップを付けることで調整可能。石炭の量を経験者は1つか2つほど減らした状態でゲームを開始すればOK。

②テンポが重ため
相手の船の状況が公開されているので、相手の動きを読むことが勝つための基本。時として詰め将棋のような局面になり、「これをこうすると、あれがああなって、それがそうなって・・・」と考え込むことも。レースゲームとしてはちょっとテンポが悪い気もするけど、長考するほどでもないので、まあ許容範囲かな。これは決して欠点ではなく、そもそもこういうゲームなんやからしょうがない。相性の悪い人は他のゲームをすべし。

③アンチ・クライマックス
このゲーム、2人目の令嬢を乗せた辺りで勝負が見えてしまうことが多い。なんせ相手の船の状態が全部分かるもんやから、「あかん。あと石炭2しか残ってへん。絶対追いつくのは無理や・・・」となると、途端にやる気が萎えてしまう。これが、このゲームの問題箇所。

もったいないなぁ、ほんま。
最初に書いたけど、小さな河川ボードをつなげて蛇行するコースを表現しているあたりは何より素晴らしい。この先、川がどっちに曲がるのかなとワクワクする。先頭の蒸気船にしてみたら先行き不透明のためスピードをあまり出せないので、後続の船が追いつきやすいというゲームのバランス上の工夫にもなっている。そして、ビジュアル最高。雰囲気満点。

また、いつもアンチ・クライマックスな展開になるわけではなく、最後まで接戦にもつれ込むときもあって、その時は結構面白い。それゆえ、もったいない。


[data:Mississippi Queen 3~5人用、Werner Hodel作]