2000年以降にITバブルが崩壊したことによって、米国政策金利は1%の水準にまで引下げられた。しかし経済の改善に沿って、米国連邦公開市場委員会(FOMC)は、2004年6月30日に政策金利となるフェデラルファンド誘導金利を1%から1.25%へと引上げることになる。その後、0.25%ずつ17回の金利引き上げで、2006年6月29日に5.25%まで政策金利は上昇した。この期間における、為替・株価等の推移について振り返ってみよう。
米国政策金利は、金利引上げ開始6か月後の2004年12月31日には2.25%、1年後の2005年6月30日に3.25%、1年半後の2005年12月31日に4.25%、2年後の2005年6月29日に5.25%と6か月毎に1%上昇した計算だ。この期間の日本においては、政策金利となる無担保コール・オーバーナイト物(翌日物)の誘導金利水準が0.15%となっており、量的緩和政策が継続していたことから、実質金利は0%近くとなっていた。まず為替に関して、金利引上げに対する米ドルの動きはどうだったのだろう? 2004年6月30日の三菱東京UFJ銀行公表対顧客外国為替相場の米ドル仲値(TTM)は108.43円、半年後の2014年12月30日は少し値下がり104.21円(約4%下落)、1年後の2005年6月30日に110.62円、1年半後の2005年12月30日は118.07円、2年後の金利引上げ終了となった2006年6月29日は116.60円だった。金利引上げがスタートすると、それ以前に金利引上げを要因として買われていた米ドルの利食い売りから、やや米ドル安の推移、1年後からは金利差から米ドル高傾向となり、2年後には約7.5%の上昇となっている。不思議なことに、米国金利引上げで警戒されていた、ユーロや資源国・新興国の通貨は、2年間を通して大きく上昇する展開だったのは興味深い。2004年6月30日に、ユーロは131.06円、豪ドルは74.86ドル、ブラジルレアルは約35.0円だったが、半年後の2004年12月30日には、ユーロ141.6円(約8%上昇)、豪ドル80.68円(約8%上昇)、レアル約38.6円(約10%上昇)。1年後の2005年6月30日には、ユーロ133.63円(2004年6月30日比で約2%上昇)、豪ドル84.44円(約13%上昇)、レアル約47.0円(約34%上昇)。2年後の2005年6月29日には、ユーロ146.22円(2004年6月30日比で約11.5%上昇)、豪ドル84.84円(約13%上昇)、レアル約52.5円(約50%上昇)となっている。この結果は、米国金利上昇があったことで、米ドル高・他通貨安という予想に反している。2004年から2006年にかけて、米国政策金利は4.25%引上げられたが、欧州政策金利は2004年6月30日の2.00%から、2006年6月29日には2.75%へと0.75%上昇、オーストラリア政策金利は2004年6月30日の5.25%から2006年6月29日に5.75%と0.50%上昇、ブラジル政策金利は2004年6月30日の16.0%から一時19.75%まで上昇したものの、2006年6月29日には15.25%へと0.75%低下したという結果だった。米国金利引上げで、新興国通貨が下落するという仮説には問題がありそうだ。むしろ、米国金利引上げという心理的不安により、金利引上げ以前に資源国・新興国通貨に調整売りが起こり、実際の金利引上げにより、不安心理という材料が出尽くし、資源国・新興国通貨が買い戻されたということではないだろうか。
次に、米国金利引上げ後の株価推移を確認してみよう。2004年6月30日のニューヨークダウ工業株30種平均は10435.48、半年後の2004年12月30日には10800.30(約3.5%上昇)、1年後の2005年6月30日に10274.97(2004年6月30日比で約1.5%下落)、2年後の2005年6月29日に11190.80(2004年6月30日比で約7%上昇)。堅調な経済回復を背景とした金利引上げだが、既に景気回復を織り込んで株価が上昇したことから、金利引上げ後1年程度の期待収益率は低かったようだ。もちろん、経済の改善から、2年後の株価は順調な展開となっている。ちなみにS&P500種株価指数は、2004年6月30日に1140.84、半年後の2004年12月30日が1213.55(約6%上昇)、2005年6月30日は1191.33(2014年6月30日比で約4.5%上昇)、2年後の2006年6月29日に1272.87(約11.5%上昇)と上昇しているが、過大な期待の収益結果とはならなかったようだ。この時期に日本株は、どうだったのだろう。2004年6月30日の日経平均株価は11858.87、2004年12月30日11489.76(約3%の下落)、2005年6月30日11584.01(約2.5%下落)、2006年6月29日15121.15(約27.5%上昇)となっており、金利引上げ後1年以内は低迷していたが、米国景気回復が確認された1年以降には充分な上昇だった。興味深いのは東証REIT指数で、この時期にしっかりした動きを記録している。2004年6月30日に1320.35だったが、2004年12月30日には1479.54と約12%の上昇、2005年6月30日に1635.90と約24%上昇、2006年6月29日には1633.54と1年前からは横這いだったが、金利引上げ後1年間の堅調な推移には要注目だ。
金利引上げとは、金融緩和と低金利による景気回復へ道程が確認されたときに実施される。したがって、個人消費の改善がエンジンとなるが、それをもっとも牽引するのが住宅市場の回復だ。景気の改善により不動産市場が安定し、賃料の上昇も期待される。消費の立ち直りから商業用施設の収益性も伸び、ネット販売の拡大による物流も加速する。低金利が継続すると不動産投資は緩慢となるが、いざ金利が上昇し始めると、現在金利水準での長期資金借り入れマインドが拡大し、住宅購入のモチベーションを高める。つまり、金利引上げが触媒になって、個人消費拡大の促進剤となる場合が多い。このような市場変化に気づけば、どのような投資が魅力的なのか理解できることになるだろう。S&P米国REITインデックスは、2004年6月30日から半年後2004年12月30日までで約21%の上昇、1年後の2005年6月30日までに約25%、2年後の2006年6月29日までが約42%の上昇となっていた。マーケットは、金融政策変更等を先取りして変化し、実際の政策変更があった後には、行き過ぎた売りポジションの買い戻しが発生している。また、実体経済は、金融政策変更というイベントを確認した後に、徐々に動き始めることは念頭に置くべきだろう。米国金利引上げを懸念して、既に割安な水準まで売られている新興国通貨・資産のリバウンドと、実体経済改善で影響を受ける不動産関連証券への資金流入に注目した投資に、成果が期待できるかもしれない。
米国政策金利は、金利引上げ開始6か月後の2004年12月31日には2.25%、1年後の2005年6月30日に3.25%、1年半後の2005年12月31日に4.25%、2年後の2005年6月29日に5.25%と6か月毎に1%上昇した計算だ。この期間の日本においては、政策金利となる無担保コール・オーバーナイト物(翌日物)の誘導金利水準が0.15%となっており、量的緩和政策が継続していたことから、実質金利は0%近くとなっていた。まず為替に関して、金利引上げに対する米ドルの動きはどうだったのだろう? 2004年6月30日の三菱東京UFJ銀行公表対顧客外国為替相場の米ドル仲値(TTM)は108.43円、半年後の2014年12月30日は少し値下がり104.21円(約4%下落)、1年後の2005年6月30日に110.62円、1年半後の2005年12月30日は118.07円、2年後の金利引上げ終了となった2006年6月29日は116.60円だった。金利引上げがスタートすると、それ以前に金利引上げを要因として買われていた米ドルの利食い売りから、やや米ドル安の推移、1年後からは金利差から米ドル高傾向となり、2年後には約7.5%の上昇となっている。不思議なことに、米国金利引上げで警戒されていた、ユーロや資源国・新興国の通貨は、2年間を通して大きく上昇する展開だったのは興味深い。2004年6月30日に、ユーロは131.06円、豪ドルは74.86ドル、ブラジルレアルは約35.0円だったが、半年後の2004年12月30日には、ユーロ141.6円(約8%上昇)、豪ドル80.68円(約8%上昇)、レアル約38.6円(約10%上昇)。1年後の2005年6月30日には、ユーロ133.63円(2004年6月30日比で約2%上昇)、豪ドル84.44円(約13%上昇)、レアル約47.0円(約34%上昇)。2年後の2005年6月29日には、ユーロ146.22円(2004年6月30日比で約11.5%上昇)、豪ドル84.84円(約13%上昇)、レアル約52.5円(約50%上昇)となっている。この結果は、米国金利上昇があったことで、米ドル高・他通貨安という予想に反している。2004年から2006年にかけて、米国政策金利は4.25%引上げられたが、欧州政策金利は2004年6月30日の2.00%から、2006年6月29日には2.75%へと0.75%上昇、オーストラリア政策金利は2004年6月30日の5.25%から2006年6月29日に5.75%と0.50%上昇、ブラジル政策金利は2004年6月30日の16.0%から一時19.75%まで上昇したものの、2006年6月29日には15.25%へと0.75%低下したという結果だった。米国金利引上げで、新興国通貨が下落するという仮説には問題がありそうだ。むしろ、米国金利引上げという心理的不安により、金利引上げ以前に資源国・新興国通貨に調整売りが起こり、実際の金利引上げにより、不安心理という材料が出尽くし、資源国・新興国通貨が買い戻されたということではないだろうか。
次に、米国金利引上げ後の株価推移を確認してみよう。2004年6月30日のニューヨークダウ工業株30種平均は10435.48、半年後の2004年12月30日には10800.30(約3.5%上昇)、1年後の2005年6月30日に10274.97(2004年6月30日比で約1.5%下落)、2年後の2005年6月29日に11190.80(2004年6月30日比で約7%上昇)。堅調な経済回復を背景とした金利引上げだが、既に景気回復を織り込んで株価が上昇したことから、金利引上げ後1年程度の期待収益率は低かったようだ。もちろん、経済の改善から、2年後の株価は順調な展開となっている。ちなみにS&P500種株価指数は、2004年6月30日に1140.84、半年後の2004年12月30日が1213.55(約6%上昇)、2005年6月30日は1191.33(2014年6月30日比で約4.5%上昇)、2年後の2006年6月29日に1272.87(約11.5%上昇)と上昇しているが、過大な期待の収益結果とはならなかったようだ。この時期に日本株は、どうだったのだろう。2004年6月30日の日経平均株価は11858.87、2004年12月30日11489.76(約3%の下落)、2005年6月30日11584.01(約2.5%下落)、2006年6月29日15121.15(約27.5%上昇)となっており、金利引上げ後1年以内は低迷していたが、米国景気回復が確認された1年以降には充分な上昇だった。興味深いのは東証REIT指数で、この時期にしっかりした動きを記録している。2004年6月30日に1320.35だったが、2004年12月30日には1479.54と約12%の上昇、2005年6月30日に1635.90と約24%上昇、2006年6月29日には1633.54と1年前からは横這いだったが、金利引上げ後1年間の堅調な推移には要注目だ。
金利引上げとは、金融緩和と低金利による景気回復へ道程が確認されたときに実施される。したがって、個人消費の改善がエンジンとなるが、それをもっとも牽引するのが住宅市場の回復だ。景気の改善により不動産市場が安定し、賃料の上昇も期待される。消費の立ち直りから商業用施設の収益性も伸び、ネット販売の拡大による物流も加速する。低金利が継続すると不動産投資は緩慢となるが、いざ金利が上昇し始めると、現在金利水準での長期資金借り入れマインドが拡大し、住宅購入のモチベーションを高める。つまり、金利引上げが触媒になって、個人消費拡大の促進剤となる場合が多い。このような市場変化に気づけば、どのような投資が魅力的なのか理解できることになるだろう。S&P米国REITインデックスは、2004年6月30日から半年後2004年12月30日までで約21%の上昇、1年後の2005年6月30日までに約25%、2年後の2006年6月29日までが約42%の上昇となっていた。マーケットは、金融政策変更等を先取りして変化し、実際の政策変更があった後には、行き過ぎた売りポジションの買い戻しが発生している。また、実体経済は、金融政策変更というイベントを確認した後に、徐々に動き始めることは念頭に置くべきだろう。米国金利引上げを懸念して、既に割安な水準まで売られている新興国通貨・資産のリバウンドと、実体経済改善で影響を受ける不動産関連証券への資金流入に注目した投資に、成果が期待できるかもしれない。