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投資に重要な指標を紹介したい

2004年米国金利引上げ以降の市場推移を復習

2015-12-29 23:17:42 | 日記
2000年以降にITバブルが崩壊したことによって、米国政策金利は1%の水準にまで引下げられた。しかし経済の改善に沿って、米国連邦公開市場委員会(FOMC)は、2004年6月30日に政策金利となるフェデラルファンド誘導金利を1%から1.25%へと引上げることになる。その後、0.25%ずつ17回の金利引き上げで、2006年6月29日に5.25%まで政策金利は上昇した。この期間における、為替・株価等の推移について振り返ってみよう。
米国政策金利は、金利引上げ開始6か月後の2004年12月31日には2.25%、1年後の2005年6月30日に3.25%、1年半後の2005年12月31日に4.25%、2年後の2005年6月29日に5.25%と6か月毎に1%上昇した計算だ。この期間の日本においては、政策金利となる無担保コール・オーバーナイト物(翌日物)の誘導金利水準が0.15%となっており、量的緩和政策が継続していたことから、実質金利は0%近くとなっていた。まず為替に関して、金利引上げに対する米ドルの動きはどうだったのだろう? 2004年6月30日の三菱東京UFJ銀行公表対顧客外国為替相場の米ドル仲値(TTM)は108.43円、半年後の2014年12月30日は少し値下がり104.21円(約4%下落)、1年後の2005年6月30日に110.62円、1年半後の2005年12月30日は118.07円、2年後の金利引上げ終了となった2006年6月29日は116.60円だった。金利引上げがスタートすると、それ以前に金利引上げを要因として買われていた米ドルの利食い売りから、やや米ドル安の推移、1年後からは金利差から米ドル高傾向となり、2年後には約7.5%の上昇となっている。不思議なことに、米国金利引上げで警戒されていた、ユーロや資源国・新興国の通貨は、2年間を通して大きく上昇する展開だったのは興味深い。2004年6月30日に、ユーロは131.06円、豪ドルは74.86ドル、ブラジルレアルは約35.0円だったが、半年後の2004年12月30日には、ユーロ141.6円(約8%上昇)、豪ドル80.68円(約8%上昇)、レアル約38.6円(約10%上昇)。1年後の2005年6月30日には、ユーロ133.63円(2004年6月30日比で約2%上昇)、豪ドル84.44円(約13%上昇)、レアル約47.0円(約34%上昇)。2年後の2005年6月29日には、ユーロ146.22円(2004年6月30日比で約11.5%上昇)、豪ドル84.84円(約13%上昇)、レアル約52.5円(約50%上昇)となっている。この結果は、米国金利上昇があったことで、米ドル高・他通貨安という予想に反している。2004年から2006年にかけて、米国政策金利は4.25%引上げられたが、欧州政策金利は2004年6月30日の2.00%から、2006年6月29日には2.75%へと0.75%上昇、オーストラリア政策金利は2004年6月30日の5.25%から2006年6月29日に5.75%と0.50%上昇、ブラジル政策金利は2004年6月30日の16.0%から一時19.75%まで上昇したものの、2006年6月29日には15.25%へと0.75%低下したという結果だった。米国金利引上げで、新興国通貨が下落するという仮説には問題がありそうだ。むしろ、米国金利引上げという心理的不安により、金利引上げ以前に資源国・新興国通貨に調整売りが起こり、実際の金利引上げにより、不安心理という材料が出尽くし、資源国・新興国通貨が買い戻されたということではないだろうか。
次に、米国金利引上げ後の株価推移を確認してみよう。2004年6月30日のニューヨークダウ工業株30種平均は10435.48、半年後の2004年12月30日には10800.30(約3.5%上昇)、1年後の2005年6月30日に10274.97(2004年6月30日比で約1.5%下落)、2年後の2005年6月29日に11190.80(2004年6月30日比で約7%上昇)。堅調な経済回復を背景とした金利引上げだが、既に景気回復を織り込んで株価が上昇したことから、金利引上げ後1年程度の期待収益率は低かったようだ。もちろん、経済の改善から、2年後の株価は順調な展開となっている。ちなみにS&P500種株価指数は、2004年6月30日に1140.84、半年後の2004年12月30日が1213.55(約6%上昇)、2005年6月30日は1191.33(2014年6月30日比で約4.5%上昇)、2年後の2006年6月29日に1272.87(約11.5%上昇)と上昇しているが、過大な期待の収益結果とはならなかったようだ。この時期に日本株は、どうだったのだろう。2004年6月30日の日経平均株価は11858.87、2004年12月30日11489.76(約3%の下落)、2005年6月30日11584.01(約2.5%下落)、2006年6月29日15121.15(約27.5%上昇)となっており、金利引上げ後1年以内は低迷していたが、米国景気回復が確認された1年以降には充分な上昇だった。興味深いのは東証REIT指数で、この時期にしっかりした動きを記録している。2004年6月30日に1320.35だったが、2004年12月30日には1479.54と約12%の上昇、2005年6月30日に1635.90と約24%上昇、2006年6月29日には1633.54と1年前からは横這いだったが、金利引上げ後1年間の堅調な推移には要注目だ。
金利引上げとは、金融緩和と低金利による景気回復へ道程が確認されたときに実施される。したがって、個人消費の改善がエンジンとなるが、それをもっとも牽引するのが住宅市場の回復だ。景気の改善により不動産市場が安定し、賃料の上昇も期待される。消費の立ち直りから商業用施設の収益性も伸び、ネット販売の拡大による物流も加速する。低金利が継続すると不動産投資は緩慢となるが、いざ金利が上昇し始めると、現在金利水準での長期資金借り入れマインドが拡大し、住宅購入のモチベーションを高める。つまり、金利引上げが触媒になって、個人消費拡大の促進剤となる場合が多い。このような市場変化に気づけば、どのような投資が魅力的なのか理解できることになるだろう。S&P米国REITインデックスは、2004年6月30日から半年後2004年12月30日までで約21%の上昇、1年後の2005年6月30日までに約25%、2年後の2006年6月29日までが約42%の上昇となっていた。マーケットは、金融政策変更等を先取りして変化し、実際の政策変更があった後には、行き過ぎた売りポジションの買い戻しが発生している。また、実体経済は、金融政策変更というイベントを確認した後に、徐々に動き始めることは念頭に置くべきだろう。米国金利引上げを懸念して、既に割安な水準まで売られている新興国通貨・資産のリバウンドと、実体経済改善で影響を受ける不動産関連証券への資金流入に注目した投資に、成果が期待できるかもしれない。

クリスマス休暇に考える米国株の方向性

2015-12-25 06:46:47 | 日記
米国のダウ工業株30種平均は、リーマンショック以降の2009年から2014年まで6年間上昇が継続している。2009年が18.8%、2010年11.0%、2011年5.5%、2012年7.3%、2013年26.5%、2014年7.5%と金融緩和を背景とした資金余剰が支えたことになる。しかしながら、2014年末が17823.07ポイントであったことから、今年2015年はマイナスとなる可能性が高まってきた。長期資金の運用は、過去の実績収益から、資産の期待収益を予測して資産配分を決定するビルディング・ブロック方式を利用するケースがある。この場合、2009年から2014年までは年間平均の米国株価上昇率は9.3%だったが、2015年がマイナスになると、2009年以降の平均は8.0%を割り込むことになる。つまり株式の期待収益低下によって、リスク資産である株式への配分比率を低下させる可能性が高まり、運用資産はポートフォリオ全体のリスクを低減させる行動をとりそうだ。当面は、高収益を期待するのではなく、高金利資産からのインカム収益を中心としたコツコツ型の運用が重要になり、高金利債やREITなどが注目されるだろう。ちなみに1950年以降で、米国株の上昇が最も続いたのは1991年からの1999年の9年間だったが、その後ITバブルが弾けて、2000年から2002年に3年連続で市場は下落した。過去のデータからは9年間連続での株価上昇もあるわけだが、金融緩和が終了している米国において、その可能性は低下しているようだ。

原油価格推移とREIT市場

2015-12-22 07:01:57 | 日記
12月21日月曜日は、WTI原油先物1月限月価格が1バレル当り34.66ドルで終了した。1月限月は12月21日が最終取引日となるため、22日からは2月限月が期近取引となり、22日日本時間午前7時時点で35.81ドル。1月5日までに国際原子力機関(IAEA)の査察が完了し、イラン原油の市場への供給動向が明らかになれば、原油先物市場に落ち着きが戻る可能性は高まる。ただし、年末ということもあり、来年1月までは、不透明感から原油先物をショートする動きは続くだろう。米国シェールオイル生産企業は、1バレル当り40ドル台では、生産を維持しつつ、価格下落に対応して先物市場でショートすることが続き、生産量の低下とはならなかった。年度後半には原油価格が回復するとの観測からヘッジしながら生産継続する戦略となった。しかしながら、35ドルを割り込めば、コスト割れにより生産調整せざるを得ないだろう。リーマンショック以降のWTI原油先物価格安値が33ドル台であったことからも、この水準以下でショートすることのリスクも高まる。当面、イラン制裁解除の影響が明らかになる来年2月頃までは不安定な動きが予想されるが、その後は、世界全体での石油需要の拡大とともに、原油先物価格も上昇に転ずるのではないだろうか。月曜日のWTI原油先物価格は、期先の8月限月が40.25ドル、12月限月が42.30ドル、2017年12月限月が46.57ドルとなっている。原油価格の低迷により、エネルギー生産国やエネルギー関連企業の資金需要による保有資産現金化リスクという不安心理によって、株式や債券を中心とする投資商品の価格下落は目先続きそうだ。しかし、全ての投資家が資産売却を考えているわけではないことにも留意すべきだ。当然、割安な水準となれば、新たな投資資金が購入を開始する。また、原油価格下落は、明らかにエネルギー輸入国の消費拡大に寄与することになり、米国、欧州、日本や、中国、インドにとっても、経済押し上げ要因だ。消費拡大の中核となるのは住宅市場だが、不動産価格の安定、賃料収入の拡大は、原油価格下落の恩恵を受ける。更に、資源価格下落は、住宅資材価格の安定に繋がり、ガソリン価格の下落で、ショッピングセンターやモールなど商業用不動産施設も回復感が見込める。ネット販売の拡大は物流を加速させ、倉庫などロジスティック関連の不動産にプラスとなるだろう。このような観点からは、相対的に利回り水準が高い、先進国の不動産投信(REIT)の投資妙味に気づくことになるであろう。通貨については、米ドルが121円前後と円高になっている。12月1日時点で7万4901コントラクトの円ショートだった、CME通貨先物投機的ポジションが、12月15日に2万6580コントラクトにまで円ショートの買戻しが進んだことが影響している。円ショートがすべて買戻されたとしても119円台と想定され、120円前後の水準は魅力的なドル建て資産への投資タイミングとなりそうだ。


米国金利正常化を終えた投資運用資金の反応

2015-12-17 22:18:14 | 日記
投資資金については、長期的な投資資金と、短期的な投機資金に分別して考える必要がある。
まず、長期的な投資資金だが、以前から0.25%程度の利上げはほぼ織り込み済みであったことから、実際に利上げが決まっても大きな動きはなく静観の姿勢といえる。米国は金融緩和終了したものの、金利引上げは異常だったゼロ金利の正常化であり、FRBのバランスシートを縮小する量的引締めではないことは想定通りだった。既に、日本・欧州・中国は金融緩和を続けており、リスク資産のロング(買い)ポジションを維持したままでの運用となるだろう。ただし、金利引上げは今回1回きりではなく、来年も少なくとも2回以上の利上げが予測されており、リスク資産価格の期待収益率が低下してくれば、徐々にリスク資産を減少させ、金利上昇による金利キャリー収益が高まる米ドル建ての現金資金での運用比率が高まってくることになるだろう。つまり、リスク資産をどんどん買い増す投資行動は考えづらいことになる。長期投資資金の中でも、エネルギー生産国の投資資金や、エネルギー関連企業の運用資金は、本業悪化の影響から、現金を用意する必要に迫られ、保有しているリスク資産売却を進めることになる。したがって、米国金利正常化へのハンドルの切り替えは、長期投資資金にとって、今まで積み増してきたリスク資産を徐々に売却して減少させていくサインとなった可能性が高い。ただ、金利差が拡大することによって、米ドルが緩やかな上昇を継続する期待感から、円安・ドル高の推移は継続する可能性が高いだろう。
次に、短期的投機資金の動きだが、非常に単純だ。米国FOMCの前には、原油価格下落を懸念してリスク資産売却を進め、FOMC終了後はリスク・イベントの終了から、買戻しを進めるという動きが見られた。しかしながら、このような投機資金の需給動向も、FOMCの金利正常化で、ほぼ一段落しそうだ。冷静に考えてみれば、この2日間で日経平均株価やドルが上昇したように見えるが、ECBの金融緩和が発表された直後12月4日の、約19500円という水準に戻ったにしか過ぎない。また、ドル円も122円~123円という水準で変化がない。今後は年末に差し掛かることから、短期的投機資金も休憩ということになるだろう。では、当面マーケットは落ち着いた値動きを続けるのであろうか? 実は、原油価格のみが1バレル当り35ドル程度で低迷しており、この推移が長引けば、当然エネルギー生産国やエネルギー生産企業のリスク資産売り・現金化の動きが促進される。米国の金利正常化は既に織り込み済み材料で、市場の下落には繋がらず、逆にリスクイベントがなくなったことで、リスク資産価格の上昇期待は高まっている。しかし、長期的な投資資金が徐々に保有ポートフォリオのリスク低減を進める可能性が高まれば、リスク資産価格の上昇期待感は低下していることに気付くだろう。今後は高収益を狙うのではなく、高金利資産での金利収益や、緩やかな米ドル高期待を背景にした、コツコツ型の運用の成果に注目が集まるだろう。

原油価格下落による長期的投資資金のリスクオフ懸念

2015-12-12 07:29:39 | 日記
12月8日の記事で説明させていただいたように、原油価格の低迷が続いていることによって、エネルギー生産国の長期的運用資金やエネルギー関連企業のリスク資産売却懸念で、リスクオフ(現金化)が起こり始めたようだ。投資ポジションのリスクを低減する動きとなることから、原油価格下落時には、逆相関で上昇する筈の米ドルも下落している。既に、米国FOMCで米国の政策金利が正常化(引上げ)されることを先読みして実施されていた、米ドル買い(ロング)・円売り(ショート)といったポジションが積み上がり過ぎており、その投資リスクを低減するために、米ドル売り(ロングの解消)と円買い(ショートの買戻し)が進んでいる。昨日発表された、12月8日におけるシカゴマーカンタイル取引所(CME)での、日本円通貨先物ショートポジションは6万8050コントラクト(1コントラクトは1250万円)となっており、この買戻しが進んだことで円高となっている。米国FOMCでの金利正常化が、慎重かつ緩やかなペースと想定した投資家は、先読みをして株価先物をロングしていたが、こちらも過剰となった株式の買いポジションの調整売りが発生している。また、市場の不確定リスク要因により上昇するVIX指数も、昨日20という水準を超えて24.39まで跳ね上がった。当然、市場リスクの上昇と捉えられ、株式売却が進むことになる。VIX指数が25を超えると、更に長期的投資資金もリスク資産のポジション低減をする動きが加速されるので要注意だろう。短期的な投機的資金のトレードが市場攪乱要因だったが、世界レベルでの金融緩和を背景とした、リスク資産投資による高収益相場は終焉し始めている可能性が高い。今後は、高金利資産や割安資産への投資で、コツコツと着実な収益を積み重ねる運用が重要となってくるであろう。特に、短期的な通貨先物市場での買戻しで、米ドル・円が120円を割り込むような水準では、海外の高金利債券やREITへの投資が魅力的となる。また株価下落の影響で、上乗せ金利(スプレッド)が拡大している低格付け社債やハイブリッド証券なども、高金利のメリットを充分に発揮できる投資水準となっているであろう。株式市場は当面、一定の範囲内(ボックスレンジ)での動きが予想されるが、割安な水準での投資を心掛ける必要を迫られるであろう。逆に、米国FOMCでの金利正常化を嫌気して、売られ過ぎとなっている新興国の資産等には、リバウンドのチャンスがあるかもしれない。

年末にかけて短期・長期資金ともにポジション調整の可能性

2015-12-10 10:49:53 | 日記
短期的な投機資金が、12月に狙ったイベントは、12月3日の欧州中央銀行(ECB)金融緩和と、12月15日~16日の米国連邦公開市場委員会(FOMC)金利正常化だった。ECB金融緩和シナリオに基づくトレードは、通貨ユーロのショート、通貨米ドルのロング、株価先物のロングだ。また、FOMCの金利正常化に沿ったトレードは、通貨米ドルのロング、株価先物のロング、通貨ユーロのショート、通貨円のショート、などだ。過去のデータから、反対の動き(逆相関)となりやすい資産のトレードとしては、通貨米ドルのロングに対応して、原油など商品先物のショートが想定される。いつも説明させていただいているが、残念な事に全てのトレードが成功するわけではない。従って、勢い(モメンタム)の衰えてきた資産については順次、買い戻し、もしくは、売り戻しというポジション解消のトレードが発生する。
フランスでテロが発生したことで、テロに屈しない強い経済対策が実施されることへ期待感が高まり、テロの後には、株価が上昇する展開となった。つまり、ECB金融緩和で株価先物ロングを上乗せする動きが続いた。また、ECB金融緩和に加えたFOMC金利正常化は、通貨ユーロのショートポジションを大きく積み上げる結果となった。しかしながら、ECBの金融緩和策が発表されたことで、イベント終了の観点から、ポジション解消が起こっている。別にECBの金融緩和策自体が期待外れではないが、イベント終了という区切りによる、短期資金の需給が、マーケットを動かしたことになる。12月1日時点でのシカゴマーカンタイル取引所(CME)におけるユーロ通貨先物の投機的ポジションは18万2845コントラクト(1コントラクトは12万5000ユーロなので約3兆円強)のショートとなっており、ギリシャ破綻懸念でユーロ・ショートされた3月31日の22万6560コントラクトに迫る勢いとなっていた。ECB理事会終了によって、ショートの買戻しが発生しているが、10万コントラクトを下回る水準まではユーロ買い・米ドル売りの動きが続きそうだ。米国FOMCでの金利正常化も、ほぼ織り込み済みとなってきていることから、ユーロのみならず、米ドルに対してショートが積み上がった円の買戻しも進み始めた。12月1日時点でのCME円通貨先物ポジションは7万4901コントラクトのショート。今年に入り、円ショートが8万コントラクト~10万コントラクトになると、米ドルが124円を超えて上値が重くなり、その後円高に反転する動きとなっているが、今回も早めに円ショートの買戻しが始まったようだ。8月のショートポジションの買戻しの例では、8月11日に11万5226コントラクトのショートとなり、その翌日8月12日の三菱東京UFJ銀行公表の米ドル仲値が125.12円。9月8日には6662コントラクトまで買戻しが進み、同日の米ドル仲値は119.42円であったことから逆算すると、通貨先物市場で円の買戻しが進めば、米ドルが120円程度まで調整する可能性があるものと推測される。逆に考えれば、米ドルが120円を割り込むと魅力的な投資チャンスと想定することができるだろう。
一方、株式市場では少し様子が異なることになるであろう。FOMCで金利正常化が発表されれば、当面の材料出尽くしということから、株価上昇期待が高まっているが、期待感が高い分だけ株式のロングが過剰になっているといえる。特に、WTI原油先物価格が1バレル当り40ドルを下回っている状況が長引けば、短期的な投機資金のみならず、エネルギー生産国の運用資金やエネルギー生産関連企業が、現金化のためにリスク資産ポジションを減少させるだろう。そうなれば、株式市場の需給関係が悪化し、株価上昇が抑えられる。結果として、原油先物価格が40ドルを割り込む状況が長引けば、株式市場については慎重な対応が求められることになるだろう。更に、投機資金の短期的なロング・ショートポジション解消の際に、通常10~20程度で推移するVIX指数が20~25を超えてくれば、長期的な投資家も、不確定要因が発生していると判断して、ポートフォリオ全体のリスク量を低減する可能性が高まる。VIX指数が25の水準を超えてくるようであれば、リスク資産全般に対する注意が必要になるであろう。反面、FOMCの金利正常化(短期金利の引上げ)を嫌気して、売られ過ぎになっている新興国資産には、割安感の修正があるかもしれない。既に経済データが悪化していることは、ほぼ織り込み済みとなっている。また、悪いニュースが出ても、その際に、割安な価格での投資が可能と考える資金が待ち構えているため、意外に通貨や資産価格が下げ止まりの状況となっている。FOMCでの金利正常化というテーマによって、割安になりすぎている資産を見つけることも投資チャンスとなる。

新たなリスク要因としての原油価格下落

2015-12-08 08:03:41 | 日記
日本・欧州の金融緩和に加えて、中国も金融緩和モードとなり、米国金利正常化も市場が織り込み始めた。しかしながら、原油先物価格が1バレル当り37ドル台まで大きく下落したことは、新たなリスク要因と捉えられそうだ。価格下落に備えて、先物でヘッジしながら生産するという構図が、原油市場変調の要因だが、想定外の価格下落は、投資市場での不確定要因と捉えられ、リスク資産売却の可能性を高める。また、エネルギー生産国やエネルギー生産企業の収益悪化により、保有資産の売却懸念が拡大することもリスク要因だ。原油価格下落が直接には影響しない米国MLP指数も、パイプラインを必要とするエネルギー関連企業の資産売却懸念により、安値を更新する結果となっている。加えて、エネルギー生産国の資産運用を担っているソブリン・ウェルスファンドが資産売却を始めると、株式などリスク資産価格の下落にも繋がりかねない。特に、本来は消費拡大要因となる筈の原油価格下落が、リスク資産価格下落を通した逆資産効果となれば、消費抑制要因ともなり得る。更に、原油価格下落によって、FOMCでの金利正常化が見送られるというようなことになれば、世界経済低迷という不安心理に包まれた投資家の、リスク資産売却を誘う可能性が高まる。とにかく、今週の原油先物価格の動向には目を離せないこととなるだろう。リーマンショック後の2008年12月19日に記録した1バレル当り33ドル台の安値に近づけば、割安感からの買い戻しが入るものと予想されるが、FOMC後のマーケットを強気にみていた投資家に対しては警鐘を鳴らすことになった。世界レベルでの金融緩和を背景にして、この数年間リスク資産価格は大幅な上昇を続けてきたが、そろそろ投資期待収益率が鈍化し始めていることに気付くべきだろう。徐々にリスクを低減しながら、着実な金利収益獲得や、割安となった資産価格のリバウンドを狙うといった、慎重な投資態度を心がけることが重要な時期に入ってきたようだ。アウトバウンドで世界のリスク資産投資を進めてきた中国マネーも、中国国内への投資に回帰すれば、先行して上昇した先進国のリスク資産価格に影響を与える。来年2016年3月に発表される第13次5か年計画では、中国企業の質の向上を目標に、産業構造の調整・最適化、イノベーション駆動型発展の推進などが注目されそうだが、中国ブランドの強化に沿って、中国マネーが中国国内へ回帰すれば、割安に放置されていた新興国資産の見直しが起こるのではないだろうか。当初、大きな影響がないと想定されたFOMCでの金利正常化は、先行して上昇し、割高感の出始めた先進国リスク資産と、その反面、割安感が増してきた新興国資産との、投資モメンタム変化の分水嶺となるかもしれない。

OPEC総会の結論と原油価格

2015-12-06 08:36:57 | 日記
WTI原油先物価格が1バレル当り40ドル近辺に迫り、再び原油価格下落が世界経済のリスク要因とする短期トレードが現れた。しかしながら、マーケットには様々な投機的資金が存在し、方向性のない展開となっている模様だ。原油価格下落をリスク要因と捉え、原油先物をショートし、逆にリスクオフ時に買われる金先物をロングする動きが12月4日金曜日には現れた。同時に、原油と株価が逆相関と想定する投機的資金は、堅調な米国経済指標発表を背景に、株価指数先物をロングし、原油先物をショートするという行動となった。結果として、リスクオン時でみられる株価指数先物上昇と、リスクオフ時に見られる金先物上昇が同時に発生するというアンバランスな状況となってしまっている。まさに、長期的な投資資金に動きがなく、短期的な投機的資金がマーケットで右往左往している局面といえるだろう。これには、特定のイベントに注目をした短期的投機が背景にあるが、今回はOPEC総会において、原油生産量の目標値が引き上げられ、更なる原油価格下落が発生するとの憶測に対応したものと考えられる。以下にOPEC総会の結論を紹介するが、マーケットを左右するほどの大きな決定が発表されたわけではないことを理解しておく必要があるだろう。
第168回のOPEC総会は、12月4日にウィーンで開催されOPECのホームページ・プレスリリースの欄に、結論が公表されている。今回の結論の要旨は、(1)現在加盟の12か国(サウジアラビア・イラン・イラク・アラブ首長国連邦・クウェート・カタール・リビア・アルジェリア・ナイジェリア・アンゴラ・エクアドル・ヴェネズエラ)に加えて、インドネシアがOPECに復帰し、13か国となる。(2)2015年の世界経済成長率は3.1%だったが、2016年には3.4%に拡大し、その結果、2016年の世界石油需要は日量約130万バレル増加する。一方で、非OPEC国の生産量は縮小すると予想される。というものだった。つまり、増産にも減産にも言及していないが、来年2016年には世界の石油需要は拡大するが、非OPEC国の生産は落ち込むため、その部分、OPEC参加国は自然体で対応するというものだ。結果的に、石油需要に対してOPECが増産することで需給バランスを均衡させると想定されるが、それが石油価格下落とはならないことに注意すべきだ。今回は、来年に制裁解除が期待されるイランが増産を望んだのに対し、価格下落が国家財政に影響するヴェネズエラやナイジェリアが減産を要望するという構図だったが、イラン制裁解除の影響が見極められるまでは、OPEC各国は自然体での対応をとるというものだろう。11月発表のOPECレポートによれば、世界の石油需要は2014年に日量9,135万バレル、2015年は日量9,286万バレルと約150万バレルの拡大。ただし、2015年第4四半期には9,396万バレルとなっており、それに対応してOPECの増産が実施されていたことになる。今回のOPEC総会の結論では、2016年には、更に日量125万バレルの需要が拡大し、年平均で9,411万バレルになると予想されている。これに対して供給面では、2014年に日量1,296万バレルの生産だった米国が、2015年には1,360万バレルと拡大し、非OPEC国で2014年に日量5,652万バレルだった生産が、2015年には5,724万バレルに増加した。しかし、2016年には米国の生産量拡大が伸び悩むことから、非OPECの生産が伸びず、OPECの生産拡大で対応せざるを得ないことになる。OPEC参加国では2014年生産が日量3,007万バレル、2015年10月が3,138万バレルと世界需要拡大に対応した増産となっている。報道では、「OPECが掲げる日量3,000万バレルの生産目標が3,150万バレルに引き上げられ、増産懸念で原油価格が下落」というものがあったが、すでに足下でOPECの生産量は日量約3,150万バレルになっていることがわかれば、そろそろ原油価格も落ち着き始めるのではないかということを推察することができるだろう。12月4日のWTI原油先物価格は、2016年1月限月で1バレル当り40.14ドルで引けた(安値は39.60ドル)。期近の先物価格は、イランの制裁解除動向を見極めるためのヘッジ売りから、安い水準で推移しているが、1年先となる2016年12月限月の価格は47.59ドル、2017年12月限月は51.10ドルとなっていることは頭に入れておくべきであろう。

ECB理事会終了で投機的資金はポジション解消

2015-12-04 06:56:59 | 日記
欧州中央銀行の金融緩和は、下限の預金金利をマイナス0.20%からマイナス0.30%に引き下げるにとどめ、中心となる主要リファイナンス金利(MRO)は0.05%に据え置くこととなった。また上限の貸出金利も0.30%が維持された。毎月600億ユーロの量的緩和拡大もなかったことから失望売りが出たとのメディアコメントが多いが、結局は、ECBの金融緩和を期待した短期的な投機的資金の、ロング・ショート解消が発生したことが市場に影響を与えた。米ドルと株式先物をロングし、ユーロ・円をショート、原油先物や金先物をショートしていたポジションの逆転が起こったにしか過ぎない。特に通貨ユーロのショートは、11月24日時点で18万コントラクトに迫るまでショートが積みあがっていたために、ECB理事会終了とともに買い戻しが起こるのは当然だ。このような短期的な投機資金の動きに惑わされることなく、長期的な視野での投資態度が重要になるだろう。7月~9月期の経済成長率がマイナス4.5%と大きく悪化し、心理的に不安定さの頂点となったブラジル市場では、既に不安感からの売りが先行していたために、悪いデータが発表されてもマイナスに反応する動きはなかった。逆に、昨日はブラジル株が大きく反発し、さらにレアルも上昇するという展開となっていることには要注目だ。米国金利正常化という理由で、売られすぎになっている新興国資産に買い戻しの動きがみられる。このところ、金融緩和や経済対策の影響で経済が底打ちしている中国にも、見直しが入る可能性が高いだろう。VIX指数も先進国株が下落したにも関わらず、18.11の水準で落ち着いている。

近づくECBの金融緩和策発表

2015-12-01 19:32:29 | 日記
欧州中央銀行(ECB)の理事会が12月3日に迫り、マーケットは再び金融緩和を期待する動きに変化している。中国でも既に金融緩和モードが継続しており、不動産や消費関連株が、このところ堅調な推移となっている。現在のECBの政策金利は、2014年9月10日に実施され、下限の預金金利がマイナス0.20%、上限の限界貸付金利が0.30%、中心値となる主要リファイナンス金利(MRO:Main Refinancing Operation)が0.05%となっている。2014年6月11日にMROが0.15%、2013年11月13日のMROが0.25%で、このところ0.10%ずつの引下げとなっていることから、今回も0.10%引下げられ、下限預金金利をマイナス0.30%、上限の貸付金利を0.20%とし、MROをマイナス0.05%にするという観測が多い。中心金利となるMROがマイナスになれば、金融緩和策としての効果は大きくなるだろう。ただし、金融緩和策には、単に金利引下げをするのではなく、資産買い入れの方法や量の拡大、さらに実施期間の延長など、様々な手段の可能性があり、少なくとも何らかの方法で金融緩和策が発表されることになるだろう。今回金利は0.05%の引下げに留め、MROを0%としてマイナスとはせず、量的な金融緩和を拡大することも想定される。現在は、ECBのバランスシートで月間600億ユーロの資産買入れによる緩和拡大策をとっており、2016年9月迄実施することになっているが、量の拡大や、実施時期の延長の可能性もないとは言えない。また、11月24日のECB保有資産は2兆6924億ユーロとなっており、ユーロ建て債券が1兆947億ユーロ、長期リファイナンスオペ(LTRO:Longer-term Refinancing Operation:MRO金利での貸付)が4627億ユーロなどとなっている。資産買入れの方法としては、第3回カバード債券購入プログラム(CBPP3:third covered bond purchase program)、資産担保証券購入プログラム(ABSPP:asset-backed securities purchase program)、公共債購入プログラム(PSPP:public sector purchase program:残存機関2年以上30年以内、BBB-以上の格付け債)などで、月間約600億ユーロの買入れを実施している。どのような方法であろうとも欧州の金融緩和は継続し、日本・欧州・中国の金融緩和による余剰資金がマーケットを下支えしそうな状況だ。