俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「リトルランナー」 Saint Ralph

2006年04月02日 02時19分30秒 | 時系列でご覧ください
実際に観る前は、とてもピュアでしみじみとした感動作なのではといったイメージがあったけれど、煙草は吸うわ、女子更衣室を覗くわ、とにかく下ネタ満載の14歳の主人公ラルフの悪ガキぶりで始まる序盤に、微笑ましさを通り越してしまい、いささか唖然。

父親は戦死し、母親も病気で入院していながら、一人明るく振舞って健気に頑張っているラルフ少年のシチュエーションを知るにつれ、ようやく多少なりとも感情移入出来るようになり、昏睡状態となった母親を「 Wake up! 」と叫びながら身体を揺するシーンにはついホロリとさせられてしまう。

そして容態が改善されない母親の病気を快方に向かわせることは奇跡が起こらないと無理だという言葉を聞いて、奇跡を起こせば病気の母親も元気になるという根本的に間違った勘違いでマラソンをはじめるというのが可笑しい。
母親が目を覚ますという「奇跡」と、ボストンマラソンで中学生が優勝する「奇跡」はまったく別ものだということを誰の指摘しないところがこの映画の「みそ」かも知れない。

そして実はこの映画、原題にも“ Saint ”という言葉が含まれているように、舞台はカソリックの学校で、時間経緯を聖人歴で表したり、「神は死んだ」という言葉でも知られるニーチェの話が出てきたり、宗教色が所々に顔を出して、その方面に詳しい人にとってはより楽しめるかもしれない。



そんな中、奇跡を起こすと願い、かつそうした「奇跡」という言葉を軽々しく(というか軽やかに)口に出してしまうラルフが、最終的には自分の信じることに向かって(まさにマラソンという題材が故に)走り続けることで、思いを遂げようとする姿は、やはりそれなりに感動的であったりもする。

元天才ランナーでニーチェに傾倒している神父であるコーチ、何事においても厳格で事なかれ主義の校長、最後に見せ場を作ってくれる気の弱い親友、よき理解者である看護婦、淡い恋心を受け止めてくれる少女と、脇を固めるべく配役された役者陣もそれぞれに好演。

決して大きな感動までは行かないけれど、爽やかな感動を呼び起こす佳作ではあります。

ただこれは言わずもがなだけど、『リトルダンサー』ならぬ『リトルランナー』という邦題は、B級っぽいあざとさがあって、いやはやです。ウーム(苦笑)。

今日の1曲  “ Hallelujah ”  : Leonard Cohen 

実はこの映画はカナダ映画で、そういうこともあってか劇中流れていたのがカナダ人で詩人であり小説家でありシンガー・ソングライターであるレナード・コーエンのこの曲。
とにかくこれはこれで充分感動的な曲でしたが、彼にはジュディ・コリンズが取り上げられた注目されるきっかけとなった「Suzanne 」をはじめ「Chelsea Hotel No. 2 」や「Who by Fire 」などなど名曲が目白押し。
そうそうヴィム・ヴェンダースの「ランド・オブ・プレンティ」にも彼の曲「Land of the Plenty」が使われていましたっけ。
とにかくそんな彼の珠玉のヒット31曲を網羅した2枚組エッセンシャル・ベスト盤でその超低音の魅力的なヴォーカルを是非。
試聴はコチラ
そしてそんなレナード・コーエンのドキュメンタリーも実はあるそうで、詳しくはお馴染みのツボヤキさんのコチラのページまで




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3 コメント

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“ Saint ”な部分がよかったです。 (かえる)
2006-04-08 13:00:54
こんにちは。

でっきりただのマラソンものだと思っていたので、予想外に宗教ネタ(?)が楽しめたのがよかったですー。

(去年観た『ミリオンズ』を思い出しつつ)。

レナード・コーエンの曲だったんですね。情報多謝。





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TBありがとうございました (ミチ)
2006-06-01 19:16:11
こんにちは♪

私も予想した展開と違っていてびっくりでした。

ニーチェやカトリックのことをもっと知っていたらなぁと思いました。

聖人暦なども話とリンクしていて興味深かったです。
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私も (カオリ)
2006-06-12 20:45:20
「リトル・ランナー」ってちょっとベタでない?と思いました。しかし、「リトル・ダンサー」はもっと暗い感じの話しでしたが、こっちはすごく明るい!

彼の走りが爽快でした。
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