俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「ゾディアック」 ZODIAC

2007年06月18日 21時32分25秒 | 時系列でご覧ください
Thrown like a star in my vast sleep
I'm opening my eyes to take a peep
To find that I was by the sea
Gazing with tranquility

'Twas then when the hurdy gurdy man
Came singing songs of love
Then when the hurdy gurdy man
Came singing songs of love


先日観た「ボビー」でも使われていたドノヴァンの68年のヒット曲「ハーディ・ガーディ・マン」が流れる中、小さく出てくるタイトルクレジット。そして起こる第1の殺人。
そしてこれまた意味深なタイトルであるサンタナの「ソウル・サクリファイス」の音楽とともに行われる第2の殺人。

と、ここまでは60年代末から70年代にかけて全米を震撼させた劇場型の連続殺人事件の犯人像に迫っていく物語だと思っていたのだけど、さにあらず。
“ゾディアック”と名乗る犯人の謎に魅入られ、追い続けることによってボロボロな人生を送ることとなる男たちの実像に迫って物語は年代記(クロニクル)的に展開していく。



そしてそうした思わぬ展開こそが、この映画の面白さだったりするのだ。
ゾディアック=ゲイ説まで書き、やがては殺人予告を受け酒とドラッグで身を滅ぼす“ゲーム”の舞台となった新聞社(サンフランシスコ・クロニクル!)の敏腕記者ポール・エイブリー(ロバート・ダウニーJr.)。
せっかく新しい家庭を築きながら、何かに魅せられたかのように暗号の解読を、そして事件の真相を追い求め、妻から愛想をつかされてしまうカトゥーニスト(漫画家)のバート・グレイスミス(ジェイク・ギレンホール)。
そして事件の最前線で捜査に当たり、全米から注目を集めることとなる二人の刑事。
片やウィリアム・アームストロング刑事(アンソニー・エドワーズ )は途中で日本料理すら食べられない(というか、家族との時間を犠牲する)生活に嫌気をさして挫折しリタイアするのに対し、引き続き一人で捜査するもののゾディアックからの手紙を捏造したのではと疑われるデイブ・トースキー刑事(マーク・ラファロ)。



そうした4人が犯人に近づこうとする気持ちと引き換えに失われていくさまざまなものを描くと同時に、決して姿を見せない犯人の輪郭をおぼろげながら徐々に見せていくサスペンス的面白さも充分生かされていて、見応え充分。

Histories of ages past
Unenlightened shadows cast
Down through all eternity
The crying of humanity

'Tis then when the hurdy gurdy man
Comes singing songs of love
Then when the hurdy gurdy man
Comes singing songs of love


ただ実際に起こった未解決の事件を元としているため、何ともカタルシスを感じない結末にならざるを得なかったため、事件そのものの真相を知ろうとするとかなり肩透かしなることは必至。
そしてデビッド・フィンチャーならではの外連味たっぷりの演出も鳴りを潜めているので、そのあたりを期待すると少々物足りなさを感じてしまうかもしれない。



それにしても60年代後半から70年代前半というフラワームーヴメント真っ只中のカリフォルニアらしさが随所に見受けられ、服装やクルマはもちろん、特に音楽へのこだわりはただならぬものがあって、エリック・バードン&アニマルズ、スライ&ファミリーストーン、スリー・ドッグナイトをはじめ、サントラ盤には収録されていないボズ・スギャッグスの「ロウ・ダウン」に至るまで、あの頃のサウンドがさりげなく流れていて、そういった意味でも大いに楽しめた作品だった。

Hurdy gurdy, hurdy gurdy, hurdy gurdy gurdy he sang
Here comes the roly-poly man
He's singing songs of love
Roly poly, roly poly, roly poly poly he sang
Hurdy gurdy, hurdy gurdy, hurdy gurdy gurdy he sang
Hurdy gurdy, hurdy gurdy, hurdy gurdy gurdy he sang
Roly poly, roly poly, roly poly poly he sang




今日の1曲 “ Hurdy Gurdy Man ” : Donovan

“スコットランドの吟遊詩人”だとか、“グラスゴーのディラン”とか呼ばれていたドノヴァン( ← アイオン・スカイのおとんだったりもします)。
ちなみに加藤和彦の愛称“トノバン”は彼から来ていることを知っている人はそんなにもう多くないかも(汗)。
それはさておき、エンドクレジットでも再度この曲が流れたとき(あの当時の曲らしく、詩の解釈は何とでもとれるのですが)、デビッド・フィンチャーのやりたかったことが明らかになった気がしましたが、実はこの曲、もともとはジミ・ヘンドリックスのために書かれた曲なんだとか。
アルバムにはツェッペリンのメンバーも参加していますが、ヴィブラートのかかったヴォーカルとまさにサイケデリックな演奏が何とも時代を感じさせつつ、結構暗示的な歌だったんだなと、映画を見て再認識してしまいました。
(※Hurdy Gurdyとはこんな楽器です)
そんなドノヴァンの動画はこちらから


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1 コメント

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こんばんは。 (ジョー)
2007-06-18 22:49:42
TBありがとうございます。
犯人探しやデビッド・フィンチャーらしい映像探しにばかり気をとられると半分しか楽しめない映画かもしれませんね。あとの半分にこの映画の本当の魅力があるような気がしました。

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