俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「カミュなんて知らない」 

2006年04月15日 01時40分01秒 | 時系列でご覧ください
都心にある大学キャンパス。“映像ワークショップ”を受講する学生たちは、高校生が犯した<不条理殺人>をテーマに、「タイクツな殺人者」と題された映画を製作することになった。クランクイン5日前、主演俳優が突然降板し、助監督の久田は代役探しに奔走する。一方、監督の松川は妄信的な恋人ユカリの存在に悩まされていた。やがて、主役の代役に演劇サークルの池田が抜擢され、こうして撮影リハーサルが始まるが、<殺人>をめぐるテーマの解釈について、松川は久田や池田たちと対立を深めてゆく。果たして、狂騒と白熱の映画製作の渦中に投げ出された学生たちは、無事、「タイクツな殺人者」をクランクインさせることができるのだろうか……。(公式HPより)
実は昔、京都で大学生をしていた頃、映研ではなく映画制作のサークルに入っていた。
そして16mmで映画を撮る!と言いつつ、在籍していた時期には結局のところ日の目をみた作品はなかったなぁ、とそんなあの頃のことを映画を観ながらつい思い出してしまった。

それにしてもオーソン・ウェルズの『黒い罠』や、ロバート・アルトマンの『ザ・プレヤー』というよりも今は亡き相米慎二監督!! を思い起こしてしまう、決して柳町監督らしくない冒頭のびっくりするほど長~いワンカットの長回しシーン。
これはこれで映画を制作する現場を描く(言うなればトリュフォーの「アメリカの夜」的)映画らしいオープニングで、かつ柳町監督の気持ちの入り方が伝わってきて思わずニヤついてしまった。

他にも「ベニスに死す」や「アデルの恋」の引用や、会話の中で溝口健二のカット数の少なさを語ったり、部屋には『アメリカの友人』のポスターがあったり、印象的なアクション映画としてタランティーノの「パルプ・フィクション」挙げるといった具合で、そうした積み重ねも好ましくも思えた。



そして映画は、まさに劇中劇ともいえる「異邦人」から60年の時を経て“人殺しを経験してみたかったから”といった理由(?)で老婆を殺した豊川の高校生の事件を題材とした映画の制作に奔走する大学生のさまざまな姿を描いていく。

ただここで描かれている大学生たちには、会話内容とか考え方はあの当時のほうがもう少し大人だったとも思えるけれど、とにかく1970年代の頃の学生、あるいは大学生活のテイストを(意図的なのかもしれないけれど)色濃く感じてしまった。

それはともかく映画そのものは、そうして現実に起きた事件を劇中内映画という虚構の世界に落とし込みつつ、同時進行的に起きている現実を描くことによって、観るものにとっては現実と虚構の境界線が徐々に曖昧となっていき、それはやがて衝撃的ともいえるエンディングに繋がっていった。

とにかくラスト15分に至るそれまでの全体を流れる自主映画っぽい撮り方から一変し、不条理な世界を突きつける骨っぽい結末は見事としか言いようが無い。

かつて学生が自主映画を撮ることを題材とした作品として大友克洋の『任侠シネマクラブ』(コミック)という愛すべき小品があったけれど、どちらが優れているというのではなくまさにそれとは対極のパワーを持った作品で、柳町監督の底力に大いに感心させられてしまった。

今日の1曲  “ Epitaph Including March For No Reason And Tomorrow And Tomorrow ”: King Crimson

ご存知、歴史的名盤と言われる孤高のプログレロックバンドだったキング・クリムゾンのデビューアルバム『 In The Court Of The King Crimson 』(邦題:クリムゾン・キングの宮殿 )。このほど奇跡的に見つかったオリジナルマスターを使ってのリマスター盤が出ました。
そこでその中からこの「エピタフ(墓碑銘):(a)理由なき行進~(b)明日又明日」を。
曲名こそ凄いけれど、今改めて聴いてみると、あんなに大きく感じた小学校のグランドが小さく見える的印象も無きにしも非ずではありますが、ツノダ・ヒロの名曲「メリー・ジェーン」を彷彿させるイントロから大層この上ない壮大な展開とアレンジは、やっぱ聴き応え充分で、一聴の値は大いにあり(のハズ)です。是非!
ちなみにこのアルバム、元祖“ ジャケ買い ”アルバムだったりもしますのだ(苦笑)。

試聴はコチラ


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (カオリ)
2006-04-18 15:36:27
色んなところで映画通には面白いシーンありましたね。

でも、やっぱりラストシーンは・・・怖いです。池田役の中泉の目、すごいなあと思いました。
返信する

コメントを投稿